世界初「病気の進行に直接作用」

エーザイなどが開発した認知機能の低下を抑制するアルツハイマー病の新薬が、世界で初めてアメリカで承認された。

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アメリカのFDA(食品医薬品局)は、日本の製薬大手・エーザイとアメリカのバイオ医薬品大手・バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」を承認した。

「アデュカヌマブ」は、脳内に蓄積しアルツハイマー病を引き起こすとみられる物質を除去する効果があるとされている。

これまで、症状を一時的に和らげる薬はあったが、病気の進行に直接作用する治療薬が承認されるのは世界で初めて

FDAは、追加の治験で効果が得られなければ、承認取り消しもあり得るとしているが、認知症治療が大きく変わる可能性がある。

「ゲームチェンジャーになるとは考えにくい」

三田友梨佳キャスター:
アメリカの大学病院で高齢者の診療に当たっている内科医の山田悠史先生に聞きます。
認知機能の悪化を遅らせることを狙った薬が世界で初めて認可されましたが、私たちはこれをどう受け止めたら良いのでしょうか?

マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史医師:
アルツハイマー病は日本で500万人ほど居ると言われる認知症の最多の原因で、その治癒は多くの人が期待する人類の夢の一つだと思います。
しかし、これまでの研究結果を見ると、この新しい薬剤がゲームチェンジャーになるというのはちょっと考えにくいのではと受け止めています。

承認申請の根拠になった試験結果を見ると、試験で用いられたスコアの上では確かに薬の投与によって認知機能の低下を2割ほど遅くしていました。
しかし劇的な改善が見られたわけではありません

これを実社会に当てはめたときに患者さんのパフォーマンスですとか、介護する家族、スタッフの負担をどの程度減らせるかは試験結果からも定かではないと思います。

副作用に注意 「約3割が脳のむくみなど脳に変化」

三田キャスター:
患者さんとその家族にとっては少しでも有効性が認められるのであれば試してみたいというのも分かるのですが、こういったことについてはどう考えればいいのでしょうか?

山田悠史医師:
薬は常に有効性と安全性の天秤の中で使用されます。
このため有効性だけではなくて、副作用についても目を向けてそのバランスを考える必要があると思います。

この試験の中では約3割の方に脳のむくみだとか微少な出血といった脳の変化が生じていました。
それが中には混乱だとか転倒といった症状に繋がっていたケースも見られました。

また金額的に薬剤の投与を受ける際のコストも問題になりますし、副作用への対応などで行われる検査の費用負担もあわせて考える必要があります。

私自身も医師としてアルツハイマー病を克服したいという強い思いがありますし、目の前の患者さんを一人でも多く助けたいという気持ちがありますが、FDAもまだ条件付きの承認としていて、ここまで得られた結果が示す限定的な効果、副作用のリスク、経済的な負担を含めて冷静に受け止める必要があると思います。

三田キャスター:
あくまでも物事の両面をしっかりと理解する必要があるということですが、まずはアルツハイマー病克服に向けた第一歩として、今後研究が進む中で治療の選択肢がさらに増えていくことを期待したいと思います。

(「Live News α」6月8日放送分)