イギリス型よりも、さらに強い感染力があるとされるインド型の変異ウイルス。
少しずつ脅威が迫る新たなウイルスについて、専門家に聞いた。
一方、「インド型」という言葉が、何の関係もない飲食店を苦しめている。
石川県内の感染状況、そして対策は…
1日に40万人以上の感染が確認されるなど、新型コロナウイルスが猛威を振るっているインド。国内では、3月28日に検疫で初めてインド型の変異ウイルスを検出した。
4月28日には、インドから帰国した30代の石川の男性が、検査で無症状ながら陽性となり、インド型だったとみられている。

金沢大学(ウイルス感染症)・市村宏特任教授:
(インド型変異株は)アジア人の免疫から逃れるために発現してきたウイルスではないかと言われています

金沢大学(ウイルス感染症)・市村宏特任教授:
もしかしたら、英国型よりも(人の細胞に)くっつきやすく、感染力が高いのではないかということもわかってきています
空港の検疫では、これまでに160人の感染を確認。
さらに東京や大阪では、海外への渡航歴がない感染者も報告され、国内でも市中感染が広がっている可能性が指摘されている。

石川県内では、どうなのだろうか?
金沢大学(ウイルス感染症)・市村宏特任教授:
まだしっかりと調べられていないので、よくわからない。ただ、現在県内で流行しているウイルスの8割以上が英国型の変異株ということになるので、少なくとも現在はインド株は県内では広がっていないと思います
とはいえ、インドの状況を見ると、感染拡大が心配されるインド型。
望みは、やはりワクチンだ。
金沢大学(ウイルス感染症)・市村宏特任教授:
幸いにも、現在日本で承認されているワクチンは、インド型の変異株にも有効であるので、なるべく早くワクチンの接種を行うというのがベストの対策であると思います

イギリス政府は、ファイザー社製の新型コロナワクチンを2回接種した場合、インド型でも発症を88%抑える効果が確認されたと発表した。

ワクチンを打つまでは、これまで同様の感染対策の徹底が必要だ。
“インド型”で…カレー店を苦しめる風評被害
一方、この「インド型」という言葉が、何の関係もない飲食店を苦しめている。
“本場以上に本格的なインドカレー”がうたい文句のインドカレー専門店「シャルマ」は、石川や富山で6店舗を構える人気店だ。

インド出身の料理人も働くこの店。インドで1日の感染者が40万人を超えたと報道されたゴールデンウィークごろから、ある電話がかかってくるようになったという。
シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
「コックさんはインドの人ですか」とか、「インドから帰ってきたコックさんはいるんですか」とか。それを聞かれても、僕らも1年以上は、コックさんはインドに帰っていないんですけど…

大友さんが、そう答えると…
シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
「でも家族とかはいるんでしょう」とか、「インド人のお客さんも来るんでしょう」というふうに声がかかってきます

こんな電話が、多い日には4~5件かかってくるようになったという。
シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
毎日、日本にいるだけのコックさんはインドの流行株に関係がないので、非常に心苦しいです
「まん延防止」の適用もあり、時短営業や酒の提供も自粛しているこの店。
耐え忍びながら、懸命においしいカレー作りに励んでいる。

シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
イメージとして、仕方ないのかなという部分はあります。お客さんのためにおいしいカレーを作っていれば、そういった風評被害も…そのうちなくなってくれるのかなと思って、毎日頑張るしかないなという思いです

「何かできることを」…病院に弁当を無料提供
こうした中、店では、石川県内でまん延防止が適用されてから、ある取り組みを始めた。
客足が減り、食材が余ってしまうことから、コロナ病棟がある病院の職員に週3回、あわせて90食分のカレー弁当を無料で届けることにした。

シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
食の提供しかできない僕たちなんですけど、食の提供で、少しでも力になれたらと思いまして…
病院職員:
ありがとうございます
シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
また頑張ってください

シャルマグループ・大友吉朗代表取締役:
飲食店も今、大変なんですけど、それ以上に大変なところが(病院の)皆さんだと思いますので、皆さんに頑張ってもうために(自分たちも)一緒に頑張りますので
新型コロナの感染拡大から、1年以上たってもなくならないコロナ差別。
それに屈することなく、「何かできることを」と行動する飲食店。

新型コロナとの戦いは、病気とは別の次元でも続いている。
この店では、新型コロナの感染拡大で医療崩壊が続くインドを少しでも支援しようと、県内にあるインド系のレストランに呼びかけて募金箱を設置している。
募金は、日本からインドに派遣される「国境なき医師団」の新型コロナウイルス感染症対策チームに寄付されるという。
(石川テレビ)