人前での食事がストレスに...「会食恐怖症」とは?

私たちの生活にはなくてはならない、日々の食事。

一番の目的は栄養を摂ることだが、ときにはコミュニケーションの場所にもなる。誰かとランチを食べたり、家族と食卓を囲む時間がリラックスタイムということもあるだろう。

しかし、その環境を苦痛に感じてしまう人がいることをご存じだろうか。

それが「会食恐怖症」という、心理的な病気を抱える人たち。神経症の一つである社交不安障害に分類され、人前で食事すると強い恐怖や不安で、次のような症状が出てしまう
という。

会食で暗い表情を見せるのには理由があるかも(画像はイメージ)

・吐き気
・めまい
・胃痛
・動悸(どうき)
・嚥下障害(食べ物が飲み込めない)
・口の乾き
・発汗
・顔面蒼白
・体(主に首や手足)の震え
・呑気(空気を飲み込んでお腹が張る)
・緘黙(黙り込んでしまう)


誰と一緒の食事で現れるかや程度は個々で異なるというが、こんな状態では食事どころではないはずだ。

確かに慣れない場所、知らない人との食事では、ご飯の味が分からなくなることはあるが、そのような気まずさと会食恐怖症とは、何が違うのだろう。

日本では、2017年に会食恐怖症の支援協会「日本会食恐怖症克服支援協会」が設立されている。自らも会食恐怖症だったという、同協会の設立者・山口健太さんに話を伺った。

食事の強要が発症のきっかけに

――会食恐怖症とはどのようなもの?

会食恐怖症とは、誰かとご飯を食べること(会食行為)に対して強い不安を感じ、次第にその不安を避けようとすることで、友人関係、恋愛、仕事などで何らかの支障が出てしまい、「本来あるべき健全な社会生活が脅かされている」という状態が、半年以上続いている場合を指します。社交不安障害という精神疾患の症例の一つとされています。

会食恐怖症のパターンは、次のような種類に分けて考えることができます。
・「周りに合わせなきゃタイプ(“残さず食べなきゃいけない”などと思う)」
・「吐いたらどうしようタイプ(“食べて気持ち悪くなるのが怖い”などと思う)」
・「見られるのが嫌だタイプ(“症状を周りに見られたら嫌だな”などと思う)」



――発症は先天的な影響と後天的な影響、どちらによるもの?

社交不安障害自体には、遺伝子的になりやすい人がいるとされています。ですが、生まれた時点で会食恐怖症という人はいないはずです。後天的な影響によるものと思います。

山口健太さん

――後天的に発症するのであれば、その要因は?

当協会が、会食恐怖症の当事者に行ったアンケート調査では、以下のような結果が出ています。

Q1.会食恐怖症の1番のきっかけとなったことを教えてください(回答者642人)
・完食指導や周りからの強要 223人=34.7%
・その他、体調不良から 135人=21.0%
・明確には覚えていない 122人=19.0%
・自分や周りの嘔吐に関する体験 115人=17.9%
・周囲からの注目を浴びたことに関する体験 47人=7.3%


Q2.「完食指導や周りからの強要」と答えた方へお聞きします。
具体的にはどのようなシチュエーションで誰からでしたか?
・給食で先生から 161人=72.1%
・家族や親戚から 32人=14.3%
・クラブ活動の指導者から 21人=9.4%
・その他 7人=3.1%
・恋人や友人から 2人=0.8%

給食などでの完食強要が発症のきっかけになった人もいる(画像はイメージ)

――会食恐怖症になりやすいような、生活環境などはある?

アンケートの結果にも出ていますが、「食べることを強要される環境」が一番分かりやすいのではないでしょうか。具体的な例ですと、学校給食や家の食卓、クラブ活動での食事トレーニング(強い体を作るために大量に食べること)などで食事を強要されるケースがあります。


――会食恐怖症の可能性がある、動作・言動などはありますか?

会食恐怖症の可能性という段階では、「無い」と回答させていただきます。もしも、食事場面で多少気持ち悪くなった人がいたとして、それを「会食恐怖症なのでは?」と疑うことで気になってしまい、本当は違うのに会食恐怖症と思い込んでしまうリスクもあるためです。

治療に必要な3つのポイントとは

――会食恐怖症を発症してしまった場合、克服はできる?

克服することはできます。3つのポイントを心がけることが大切です。

1. 正しい手順で会食の練習をする
会食恐怖症を克服するには、実際に会食の場をこなす練習が必要となります。そのとき大切なのは会食に慣れることではなく、誤った前提(考え方)を改めるための行動です。例えば、「残してしまったらどうしよう」と考えてしまう人は、その考えがさらに自分にプレッシャーをかけてしまい、緊張して食べられなくなります。「残しても別にいいや」と思えるように、“人前で残す練習”をすることも必要になります。

2. 前向きな考えを身につける
さらに大切なのは、前向きな考えを身につけることです。同じことが起きても、どう解釈するかはその人次第です。苦手な会食に挑戦したとき、気持ち悪くなってしまったとします。その際に「気持ち悪くなったけど、苦手な会食の練習をできて良かった」とするのか。それとも「会食に行ったけど、気持ち悪くなって最悪だ」とするのか。考え方で心理状況も大きく変わります。

3. 日常生活を整える
簡単にお伝えすると、「(会食時以外の)日常生活をリラックスして、スッキリとした気分で過ごせているか」ということです。これができているかどうかで、会食恐怖症の症状の出やすさは変わってきます。普段の意識や習慣を改めることも重要です。


――実際の会食では、どう対処すれば良い? 予防対策などはある?

会食時に「どれくらい食べられるか?」などと考えるのではなく、最初から残すつもりで食事したり、会話を楽しむようにするべきではないでしょうか。会食への不安や食べられないことを受け入れ、別のことに注意を向けることが大切です。予防対策はしようとするほど、会食のことを考えてしまい、不安になりがちです。「不安でも良いや」などと、不安を感じていることを受け入れる気持ちを持つことが大切です。

自分を責めずにできることからはじめよう

――会食恐怖症を抱える人に、周囲ができることはある?

「無理して食べなくても大丈夫だよ」と声をかけてあげるなど、会食恐怖症を抱えている人を理解してあげること、受け入れてあげることが大切ではないでしょうか。


――「自分は会食恐怖症かも」と思う人に伝えたいことはある?

自分を責める必要はありません。周りと比較せずに、スモールステップでいきましょう。行けそうな機会から無理をせずに、少しずつ、食事に歩み始めることが大切だと思います。

食事を残しても自分を責めない心持ちも大切なようだ(画像はイメージ)

会食恐怖症にもさまざまなパターンがあるが、食事を強要されたり、体調不良がきっかけとなって生まれた、「食べなきゃいけない」「気持ち悪くなるのが怖い」といった恐怖心が、悪循環を招いてしまうこともあるようだ。

山口さんは、会食恐怖症に悩む人が症状と向き合い克服できるよう、グループセッション形式の相談会を開いたり、「LINE」アカウントでの相談も受け付けている。「自分は会食恐怖症かも?」と思い込むのも良くないとのことだが、人前の食事でどうしても気分が悪くなるという人は、日本会食恐怖症克服支援協会のウェブサイトをチェックしてみてはいかがだろう。