自給自足を目指すちょっと変わった老人ホーム

長崎県新上五島町に去年できた「ちょっと変わった老人ホーム」。
自給自足を目指しているということで、どんな生活が営まれているのか取材した。

五島列島・新上五島町。 有川港から車で15分、森の中を進むと、去年11月にオープンした有料老人ホーム「ひろんた村」がある。

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現在高齢者と障害者計3人が入所している他、デイサービスも提供している。

ひろんた村を経営する歌野さん夫婦の1日のはじまりは、掃除に加えて大事な「収穫作業」がある。

ーー収穫は好きですか?

歌野啓子さん:
面白い。一番好き。畑に出る時が一番幸せ

所有する5つの田畑では、野菜やコメ、小麦など様々な作物を育てている。「とれたて」をおいしく食べてもらうために、どんな料理をつくろうか。献立を毎日考えるのが楽しいという。

歌野啓子さん:
きょうは高菜のいため煮!あっ、椿油でイモのてんぷら!

揚げ物用の椿油はもちろん、味噌や醤油も自家製。ほぼ自給自足のランチが完成。
この日のメニューはぶりのおろし煮、椿油でいもの天ぷら、高菜のいため煮、ささげごはん、なめこ汁だ。

食事はスタッフも含め、みんなでいただく。
「家族じゃないけれど家族のように暮らす」 そんな空間を目指している。

入所者:
おいしかったです。

入所者:
いつでも完食!こんなにいい施設はない。私、86歳にして太っちゃった(笑)

歌野啓子さん:
ここで出来た野菜・食べ物を食べてもらうというのが本当にうれしいし、たのしい

一番気に入ったのが上五島だった

歌野さん夫婦は今から約30年前、3人の子供とともに大阪から上五島に移住してきた。

歌野敬さん:
(移住のきっかけは)一番最初は農業への関心ですね。めちゃくちゃおもしろかったんですよ。けし粒のような白菜の種をまくでしょ。それがある時期からぐんぐん大きくなって。そういう農の不思議さに感動したというか、のめりこんでしまって。衣食住からエネルギーまで可能な限り自給することをテーマに移住先を探して、一番気に入ったのが上五島だった

お風呂をわかすときは薪で。自給自足の生活が日常となった。
夫婦ともに高齢者となった今、新たに老人ホームを作ろうと考えたのには理由があった。

歌野敬さん:
地域の再生、雇用を生み出す場、自給技術を継承する場

歌野啓子さん:
ものを(自分で)作って暮らしていくということを、やっぱり私は若い人にやってもらいたい。そういう場になりたい

施設では歌野さんの長女・礼さんの他、地元の看護師や大学生などの20代のスタッフも多く働いている。

介護士の高橋亜也美さんは山形から移住してきた。

高橋亜也美さん:
歌野さんの考えとかこういうことをしたいという話を聞いて、いいなと思って。第二段階で回りを巻き込んできているじゃないですか。歌野さんがしてきたことを私世代に教えてもらって、続くようにしているのがかっこいい

暮らしそのものがリハビリ

ひろんた村で暮らす86歳の原節子さん。
作っているのは、自家製のしょうゆ。1日3回 かき混ぜるのが、原さんの担当だ。

原節子さん:
これのおかげで足が丈夫になってね、鍛えられてるんです。私は失業はしません!

スタッフだけでなく、入所者それぞれが自給自足生活を送るための「お仕事」を持っている。暮らしそのものがリハビリになる「生活リハビリ」と呼んでいて、その人が、その人らしく生きることにつながっている。

ちょっと変わった老人ホーム。「介護されるのではなく、共に支え合いながら暮らす。」
そんな生き方がそこにはあった。

(テレビ長崎)

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