クマさんにお願い!

山に入ると気をつけなければならないのが野生の動物。

11月には、秋田県や富山県などでクマに襲われる被害が出ていて、最近では人里にまで出没するケースも増えてきた。

こうした中、山道で「クマに注意」という看板を目にすることがよくあると思うが、人ではなく、クマに向けられた看板が話題となっている。

それがこちら。



「熊さんにお願い。あなたの住んでいる地域に、人が音を出しながら立ち入りますのでどうか、襲わないようお願いします。」
と訴えるクマのイラストが描かれた看板だ。

これはTwitter投稿者の朴葉=ニャン(@obashuji)さんが16日、埼玉県横瀬町にある丸山の六番通り登山口に設置された看板を撮影したものだ。

「クマが住んでいる場所に人が立ち入りますよ」というクマに向けられたメッセージとなっていて、中々見かけることのない看板に、Twitter上では、「人間側がクマが住んでいる地域にお邪魔しているって意識を持つだけでもだいぶ変わってくるのだろう」「くまさん、漢字読めるのかな」、「埼玉にもクマが出るのか」などのコメントが寄せられ、1万5000超のいいねが付いている。(11月20日現在)

朴葉=ニャンさんは「内容はクマにわかるように音を出して歩くようにという普通のクマ看板と同じだけど、クマのほうにお願いするという表現はコンビニのトイレの『いつもきれいにお使い頂きありがとうございます』という表現に近いものを感じて面白かった」と話す。

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なぜこのようなクマに向けた看板にしようと思ったのか。そしてあまり埼玉県にクマの出るイメージはないがどうなのだろうか。
看板を設置した横瀬町役場の田端将伸さんにお話しを伺った。

年間を通して注意喚起がしたかった

ーーなぜこのような看板を作ったのか?

この地域はそれほどクマが出没するわけではありませんが、年に2、3度の目撃情報など、登山者から寄せられていました。そのため登山口に「熊出没注意」という一般的な看板を掲示していました。さらに出没するたびに「この付近で熊が目撃されました。〇年〇月〇日 横瀬町役場」と紙に打ち出したものを掲示していました。

登山者が増加傾向のなかで、「熊出没注意」の看板の老朽化などにともない、追加で作成する際に、
1.当町の地域は、奥深い山々にもつながっており、クマや動物が今後も出没することが想定されていること。
2.山は動物の住まいであり、そこに我々人間が立ち入っていること。
3.クマは通常の状態は臆病と言われており、人間に会いたいと思っていないこと。

などから、「この地域にはクマがいて、そこにお邪魔する人間が、音(クマよけの鈴、ラジオ、話声など)を出すことで熊が逃げてくれる。」という趣旨の看板を制作しようと思いました。

登山がそれほど好きでいたわけではない担当の自分が、出没するたび、クマが出たところまで「出没した旨の表示」を掲出するのが大変で、かつ、古くなるとボロボロになり、登山道としても見栄えが悪かったこともありました。年間を通して登山者に注意喚起がしたかったためです。

ーーいつ、どこに何カ所設置された?

確か当時私が観光担当で2年目くらいだったと思うので、今から8~9年前だったかと思います。目撃情報のあった登山口を中心に10か所設置しました。


ーー看板を作るにあたり、こだわった点は?

看板屋さんが販売している既存のイラストを使い、組み合わせることで、安く仕上げてもらった記憶があります。看板屋さんも本当にこれでいいんですか?と心配してもらったような…
また、役場が単独で表明するのではなく、登山者全員が同じ気持ちになってもらいたいと「登山者一同」と勝手に入れました。

ーー横瀬町にはクマは出没する?

どんぐりなどの木の実の量によっても異なりますが、年に2、3度目撃情報が寄せられます。

「クマが返事をしてくれた」

ーークマにこの看板のメッセージは届いていると思う?

はい。以前、山に登った際、山中で「この看板どうですか?」と大声で叫んだ時に、返事をしてくれたためです。おそらくクマ語で「そうだよ、俺たちの庭だからね。人間も人の庭に入るときは「こんにちはー」って、声出すでしょ。あれと一緒にしてほしいだけ。」と言ってくれた気がしています。

ーー看板を見た人から何か反応はあった?

今回もそうですが、設置した当初から「いい看板ですね。」「そうなんですよね。私たちがクマの生息地域に入るんですよね。」「クマ除けの鈴を買いました。」「友達とおしゃべりしながら行きます。」など、いい反応をもらっています。中には「こんな看板あったけど、クマがわかるわけもない。」と言ってSNSで発信してくれる人もいますが、それでもその投稿を見た多くの心ある方には、意図がちゃんと伝わっていて、感謝しています。


設置理由は年間を通して登山者に注意喚起するためであった。確かにこれならクマが住んでいる所にお邪魔するのだから気をつけようという気持ちになるだろう。クマからも返事があったということなので、看板の効果で人がクマに襲われる事例が起こらないことを祈るばかりだ。


プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。