“温泉のルール”をかわいい動画で紹介
旅行客からの人気が高いスポットのひとつ、温泉。
熱い湯にじっくりと浸かる、あるいは露天の景色を楽しむ至福のひと時は、日本人に馴染みの深いものと言えるだろうが、外国人観光客からの人気もまた根強いものだ。
一方で、背中合わせで問題となっているのが、入浴時のマナー問題。
そのような中、北海道・札幌市にあるJRタワーホテル日航札幌が「HOT SPRING 5 RULES FOR JAPANESE ONSEN(温泉の5つのルール)」を公開した。
さっそく、その内容を見てみたい。
北海道らしく、ヒグマとキタキツネが主人公となり、温泉を楽しもうとするこの動画。
しかし、様々なルール違反をしてしまい、それを正していく、という流れだ。
まず最初のルールは「GET NAKED Remove all your clothes.(全ての衣服を脱いで、裸になって!)」。
まずヒグマがポイポイと服を脱いでいく…しかし、下着と靴は身に着けたまま。
ブザーが鳴り、「×マーク」が下着と靴につけられてしまう。
下着と靴を脱ぐと、「ピンポンピンポン!」の軽快なサウンドと共に「MANNER Good!いいですね!」と表示され、無事温泉に入れることに。
「温泉に入る時は服を脱ぐ」という、一見“当然”のルール。
しかし、海外では屋外の施設では下着をつけて入ることが多かったり、他人の前で裸になることに抵抗感がある人が多いことから、なかなか理解されにくい面があるようだ。
この動画は、そのような「温泉初体験の人にはわかりにくいこと」をまとめたものになっている。
動画で紹介されている5つの“温泉ルール”は
・GET NAKED(服を脱ぐ)
・NO PHOTOS(携帯やカメラの持ち込み禁止)
・WASH YOUR BODY FIRST(湯船に浸かる前に体を洗う)
・QUIETY&RELAX(温泉内では静かに)
・WIPE YOUR BODY(体を拭いてから脱衣所に戻る)
というもの。
どれも日本人にはお馴染みのルールだが、その分、施設内にはっきりと注意書きがない項目も多いのではないだろうか。
2020東京五輪のマラソン・競歩の開催地として、一層注目されている札幌。
観戦のため国内外からの観光客の増加が見込まれるが、同時に「せっかくだし、日本らしい体験も楽しんでから帰りたい!」という人も増えることだろう。
日本の文化に不慣れな外国人観光客の役に立ちそうなこの動画。
すでに外国人観光客のマナー違反が目立っている…ということなのだろうか。この動画を作った理由をJRタワーホテル日航札幌を運営する、JR北海道ホテルズ株式会社に聞いた。
日本人も「誰かに“温泉マナー”教えてもらう機会減」
――この動画を作ったきっかけを教えて?
訪日外国人、ご高齢のお客様などが増え、「スパ」という施設名称に馴染みのない方から「裸で入る温浴施設か、水着で入る施設」かという利用シーンに関するお問い合わせが増えてまいりました。
――動画を作る上でこだわった点は?
「北海道らしさ」と「わかりやすさ」です。
JRタワーホテル日航札幌には、22階に地上100mからの景色とともに天然温泉を楽しめる入浴施設・スカイリゾートスパ「プラウブラン」があるが、入浴マナーはいわゆる温泉と同じ。
外国人観光客だけでなく、「スパ」に馴染みのない高齢者からも問い合わせが増えているという。
しかし、マナー違反の理由はそれだけではなかった。
――観光客のマナー違反は多い?
JRタワーホテル日航札幌にお泊りになる外国からのお客様は富裕層であることが多く、既にいくつかの温泉をご経験されている方など、特に「マナー違反」はレアであるようにお見受けします。
国内からのお客様からも、「スパ」という言葉がお風呂なのかプールなのか、裸か水着かなど、高齢の方や「スパ」が初めての方からの持ち物・利用シーンに関するお問い合わせはあります。
今の時代、いわゆる「銭湯」を利用する日本人も減っており、公衆浴場のマナーを誰かに教えてもらえる機会は案外ないかもしれません。例えば浴室内を撮影されようとする場合もあり、その際はご説明をしているところです。国籍の別はないと考えております。
JR北海道ホテルズによると、宿泊客の32.2%は外国からの観光客。
北海道を訪れるのはアジア圏の観光客が多いというが、今年のラグビーワールドカップ・札幌ドーム開催の際などは欧米からの観光客も増えたという。
しかし、外国人観光客のマナー違反は、実は少数だった。
すでに“温泉慣れ”している客が多いことも理由だというが、日本人観光客からもルールに関する問い合わせがあり、国籍による差はないというのだ。
JR北海道ホテルズによると、動画で取り上げられていた「携帯やカメラの持ち込み禁止」に反して浴室の撮影をしてしまう人がいるということで、日本人だからといって“温泉マナー”が完璧、とは言えないのが現状。
その理由のひとつとして考えられるのが、銭湯の減少だというが、全国の公衆浴場の数は2014年に26,221施設あったのが、2016年は25,331施設、2018年には24,785施設と、確かにじわじわと減っている(出典:厚生労働省・平成30年度衛生行政報告例)。
日本人にとって温泉は身近なものだと思い込んでいたが、実はこのような公衆浴場に入った経験のない人も増えているに違いない。
――観光客にはどのように温泉を楽しんでほしい?
観光、お買い物、お食事に加えて、普通の日本人の暮らし方を知っていただくという一環で豊かな入浴文化に触れていただきたいと思います。
現在はウェブ上でしか見られないこの動画だが、JRタワーホテル日航札幌によると今後スパ施設内に設置する予定ということで、より多くの客の目にとまるはずだ。
東京五輪の開幕まであと8ヵ月。
世界中から訪日客が集まり、日本文化をアピールできる絶好のこの機会。私たち日本人がまず、実践する場を失いつつある“温泉マナー”を今一度見直して迎えたいところだ。