自転車はペダルを漕いだ動力でタイヤを回し、前に進む。そこになくてはならないのが、橋渡し役となる「チェーン」だった。しかし、そんな常識を覆してしまう「チェーンレス自転車」が日本に上陸しているのをご存じだろうか。

それが「Honbike」(ホンバイク)という、電動アシスト自転車。ハイテク製品の提案事業などを展開する企業「Click Holdings」(東京・渋谷)が、中国の自転車メーカー「HONGJI」(洪記両輪)の協力を得て、国内展開するものだ。

国内展開されるHonbike
国内展開されるHonbike
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一般的な自転車との大きな違いは、駆動システムに“シャフトドライブ”という方式を採用していることで、これによってチェーンレスでの走行を実現しているという。

このほか、5段階パワーの電動アシストに加え、(上り坂・下り坂の自動検知などをする)AIによる乗車アシスト機能、防水対応(IP65)の液晶ディスプレイなど、ハイテク技術も多数搭載している。車体は重量が20kgで、サイズは長さ約155cm×幅約60cm×高さ約105cm。さらに折り畳めるなど、使い勝手の良さもポイントだ。

チェーンレスでの走行を実現している
チェーンレスでの走行を実現している

クラファンで人気…2900万円以上を集める

ホンバイクは2021年2月から、Click HoldingsのECサイト「CH-market」で予約販売をしていたが、4月12日にクラウドファンディングサイト「Makuake」で限定カラーの発売プロジェクトを始めたことがきっかけで、一気に注目を集めた。

Makuakeのプロジェクトページ(4月19日時点)
Makuakeのプロジェクトページ(4月19日時点)

Click Holdingsによると、発売プロジェクトの目標金額110万円は2時間で達成。4月19日現在、支援総額は2900万円以上にのぼり、すでに250台以上の予約が入っているという。

期待も大きいようだが、気になるのはチェーンレスの仕組み。そして運転するときにメリットはあるのだろうか。Click Holdingsの代表取締役社長・半沢龍之介さんに製品の特徴を聞いた。

「極限まで無駄をそぎ落した」自転車

ーーホンバイクの国内展開を決めたのはなぜ?

ママチャリのスタイルが多い、電動アシスト自転車において、デザイン性と機能性を持ち合わせたホンバイクと出会ったのがきっかけです。弊社とHONGJI社が協力し、2020年のグッドデザイン賞に出品したところ、ベスト100に選ばれたこともあり、日本で展開したいと思いました。


ーー製品の特徴やこだわりを教えて。

製品のコンセプトは「極限まで無駄をそぎ落とした」ことで、シャープなデザインと機能性を両立しているのが特徴です。具体的には、チェーンレスやアルミダイカスト(金型での部品製造)などの採用により、一般的な自転車よりも構造を極力シンプルにしています。

Honbikeの主な特徴
Honbikeの主な特徴

チェーンの代わりに「シャフト」にした理由

ーーチェーンレスの仕組みはどうなっている?

シングルアームシャフトドライブシステムという、シャフト駆動を採用しています。具体的にはバッテリーを搭載している「ペダル部分」と後輪の「タイヤ部分」を、両端に歯車状の溝が刻まれた棒状の金属パーツでつないでいます。

原理としては、ペダルを漕いだ力と搭載されたバッテリーの力が、シャフトを通じて後輪のタイヤに伝わることで進みます。シャフト駆動は自動車でも採用されています。

シャフトドライブの仕組み(※実際はフレームに覆われている)
シャフトドライブの仕組み(※実際はフレームに覆われている)

ーーチェーンレスにすることで、どんなメリットがある?

チェーン自体がないので、スカートや靴紐などを巻き込む心配がなく、チェーンが切れて故障する心配もないことがメリットです。漕ぐときの音も鳴らないので静音性もあります。

また、チェーンは錆などを防ぐため、油をさすなどのメンテナンスをする必要がありますが、ホンバイクはシャフト部分がクローズ式(覆われている状態)になっているため、一般的な使い方をしていれば、そのような手間も必要ありません。


ーーアシスト機能が停止することはあるの?

車体にはスマートジャイロセンサーを搭載していて、必要以上に傾くとアシスト機能を停止するものとなっております。自転車自体が急に止まるものではないので、安心して自分でブレーキをかけて止まることができます。

ディスプレイも防水仕様となっている
ディスプレイも防水仕様となっている

メンテナンスの体制も整えたい

ーー構造が独特だが、もしメンテナンスをしてほしい場合は?

現在は弊社の日本国内修理工場にお送りいただき、メンテナンスする体制となっております。送料は保証期間内(1年間)なら弊社が負担する方針です。メンテナンスを受けられる場所が増えるよう、店舗の提携を目指していければと考えております。


ーーサイクルショップで販売される可能性は?

おかげさまで多くの専門店、サイクルショップ、量販店よりお問い合わせをいただいておりますので、前向きに検討させていただいております。


ーー人気を集めているがどう受け止めた?この自転車をどう楽しんでほしい?

応援してくださる方が大勢いることに感謝しつつ、純粋に嬉しいです。毎日の通勤通学をはじめ、簡単に折り畳める特徴を生かし、旅先での移動などにも使えると思います。さまざまなシチュエーションでサイクリングを楽しんでいただきたいです。

 

ホンバイクは通常価格が28万8000円(税込)で、MakuakeとECサイトでは期間・台数限定で割引価格での販売もしている。デザイン性だけでなく、チェーンがないことで巻き込みの心配がないのは実用的だ。今後もClick HoldingsとHONGJIは新たな自転車を共同開発していく方針とのことだ。
 

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プライムオンライン編集部
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