それぞれのカタチ

フランスでは「夫婦のカタチ」はそれぞれ・・その一言につきます。

”カタチ”ということでいえば、
1 結婚
2ユニオン・リーブル(事実婚)
3 PACS パックス(連帯市民協約)の3種類。

友人たちと集えば、結婚している人もいれば、事実婚の人もいますし、パックスの方もいます。そして、それぞれがそれぞれのカタチの家庭を築いています。”それぞれ”がキーワードになるのです。

日本の夫婦と違うのが、どのような”カタチ”であっても、夫婦は常に男と女であり、パートナーなのです。
分かりやすい例ですと、お互いを名前で呼ぶ。

この記事の画像(6枚)

日本では出産と同時にお互いを「パパ、ママ」と呼び始めるご夫婦も少なくありません。一度、冗談で夫に「パパ!!」と呼びかけたら、「僕はあなたのパパではない!!」と真面目に言われました。

大人と子供の寝室は一般的には別です。寝室が一部屋だった友人は、自分たちのベットと赤ちゃんのベットの間にカーテンを取り付けました。カーテン1枚で大人の空間と子供の空間を作ったのです。

子供がいても夫婦での外出の機会があります。基本的に夫婦で招かれます。どこに行ってもみんな夫婦やカップルで出席しています。あらためてカップル社会なのだなあと実感するのです。

仕事も結婚も出産も

パートナーと言う表現をしましたが、フランスでは25歳から49歳の女性の就業率はおよそ85%です。

つまり多くの結婚、子育てをしている女性たちも仕事をしているわけです。以前、フランス人の女性たちと話をしていた時に、日本女性の仕事への取り組み方についての話になりました。私も日本を離れておよそ20年ですので、知らないこと、見えていないことも多々あるかと思うのですが、それでもやはりまだ日本女性には選択を迫られることが多くあると感じています。

仕事か結婚か?仕事か出産か?
「え?なんで選択しなきゃいけないの?全部できるじゃない?」必ずフランス女性たちから言われます。
「そう、多分、あなたたちと同じように全部できるはず。でも、まだ社会がそうなっていないのだと思う」

フランスもかつては少子化が進み、対策を迫られました。経済的な不安により2人目を諦める方たちが多かったのです。そうなれば少子化は進みます。歯止めをかけるために、政府は家族手当の給付をはじめとする保育サービスの充実をはかりました。現在では3歳から6歳の子供たちが幼稚園や保育園に通園する割合はほぼ100%です。

0歳からの保育園は、私の住むパリ市内でも区によって違いがあります。ある区に住む友人は区役所に申し込みに行ったら、翌日から息子さんは保育園に入園になりました。同じ時期、私の住む区では保育園のあきがなく、ギャルドリーと呼ばれる一時保育に子どもを預けました。週に2回、午前中だけでしたが、それでもとっても助かりました。

フランスの出生率

子どもたちの立ち合いのもと行った、結婚10年目の「再結婚式」
子どもたちの立ち合いのもと行った、結婚10年目の「再結婚式」

出産直後に仕事に復帰する女性たちを多く見ています。子供たちは保育園だったり、またはギャルド パルタジェといって、何人かでシッターさんを雇って子供たちを見てもらったり。また実際にシッターさんの料金も日本に比べると安いのです。とはいえ勿論、経済的な負担にはなりますが、自分のキャリアを継続したい女性にとってはサポートは必要です。

法律で出産後の女性が仕事に復帰する場合、出産前の部署、ポジションに戻ることが保証されていて、給料も変わりません。本人の意思で部署や時短を希望するのでない限り、ブランクは関係なく、以前の職場に戻れるのであれば・・・安心して出産にのぞめると思いませんか?

2006年以降、フランスにおける出生率は2.00前後だったという数字をみると、少子化対策が功を奏し成果をあげていたことがお分かりいただけると思います。

フランス出生率の変化(Perspective monde HPより)
フランス出生率の変化(Perspective monde HPより)

ところが、2018年1月に、成果を上げていたはずの出生率が3年連続で低下してたことが話題となりました。2006年以降、出生率2.00をキープしていましたが、2017年には1.88となってしまいます。理由は様々ですが、そこには家族手当の一部が支給されなくなったことや、当然女性の社会進出により出産年齢があがったことも含まれます。

そう考えると、国が少子化に歯止めをかけるには、経済的な支援や保育サービスを徹底させることは必須であり、早急に進めるべき対策なのでは?と思うのです。

パートナーのサポートも必須

互いの在り方を尊重することが大切・・・
互いの在り方を尊重することが大切・・・

パートナーの話に戻ります。安心して出産をし、仕事も続けるとなればサポートが必要です。
朝の登校シーンでは、父親たちの姿を多く見ます。友人宅にディナーに行くと、ご主人がキッチンにたって準備をしていることもよくあります。片付けも男性陣が率先してやってくれ、女性陣はグラスを傾けておしゃべりしていることも。

それぞれの夫婦やカップルが、自分たちのやり方でお互いを尊重しあい、それぞれができることをやっている・・・そういう印象を受けます。

家族の形も多様です。ステップファミリーもまわりに多くいます。養子縁組もあります。
正解はなく、お互いにそれぞれの夫婦や家族の在り方を尊重し、比較しないこと。
それがフランスの良いところなのではないかなと思うのです。

【関連記事:「男女である前に“一人の人間”であることを諦めない これぞフランス流夫婦のカタチ」】

【執筆:フリーアナウンサー・タレント 中村江里子】

「夫婦のカタチ」すべての記事を読む
「夫婦のカタチ」すべての記事を読む
中村江里子
中村江里子

1991年フジテレビへ入社、アナウンサーとして活躍。
1999年フジテレビを退職し、フリーアナウンサーとなる。
2001年にフランス人のシャルル・エドワード・バルト氏と結婚し、生活の拠点をパリに移す。
妻であり、3児の母でもある。
現在はパリと東京を行き来しながら、テレビや雑誌、講演会、イベントなどの仕事を続ける。著書も多数。