続々と国内に工場新設

日本企業が、国内の生産拠点を相次いで新設している。
化粧品大手のコーセーは、国内工場としては42年ぶりに、山梨県にスキンケアとヘアケアの工場を着工。2021年度内の稼働を目指している。
日用品大手のユニ・チャームも、中国を中心に日本製おむつの需要が拡大しており、2019年春 福岡県で26年ぶりとなる国内工場を稼働させた。

そうした中、資生堂は11月27日、栃木・大田原市に36年ぶりとなる国内工場をオープンした。
水田に囲まれた中に突如現れた「資生堂那須工場」は、敷地面積が東京ドームの約2個分の約11万平米。需要が拡大している、中高価格帯スキンケア製品の製造工場として350億円を投資して作られた。

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「工場内にメイクアップルーム」の理由

那須工場を建設した理由のひとつは、立地する栃木県大田原市の「水質の良さ」。
資生堂は、大田原市の地下水をさらに精製したものを使用することで、高品質なものづくりにつながると期待をみせる。

また那須工場では、製造中の製品データをリアルタイムに収集して品質管理に活かすデジタル化されたシステムや、IoTなどの最新技術を導入し、生産効率の向上を図っている。

さらに、従業員の6割が女性ということで、工場内にはメイクアップルームが設けられている他、ユニフォームの色も自由に選択できるなど、働きやすい環境作りにも力を入れたという。

「メイドインジャパン」を最大限に生かす

そして、36年ぶりに国内工場を建設した最大の理由は、資生堂が世界で戦う上で「メイドインジャパンブランド」を戦略上、最大限に生かすためだ。
資生堂のアジア市場の拡大は続いていて、2019年7月から9月の決算では、中国国内での高価格帯化粧品の店頭売り上げが、前年同期に比べ約40%も増えている。

資生堂 魚谷雅彦社長;
安心安全に加え、細部にこだわった品質管理がされていること。これは明らかに海外のお客さんから評価を受けている。

資生堂 魚谷雅彦社長
資生堂 魚谷雅彦社長

魚谷社長は、「メイドインジャパンブランド」が世界で競争するに当たっての強みになると指摘した。
つまり、賃金水準の高い国内で製造することで多少価格は高くなるが、日本製への信頼がブランド価値の向上と売り上げ増加につながっているという訳だ。

また資生堂ではここ数年、いくつかの商品で品切れが続き、アジア市場を含めた需要に供給が追いつかない状況が生じていたという。
今回、着工から1年半と短い期間で完成にこぎつけた最先端工場の生産能力は、2022年に1億2000万個を計画しており、この「機会損失」を減らすことも期待されている。
さらに資生堂は、2020年には大阪、2021年には福岡にも工場を新設する予定。
これにより、国内の工場は6つに倍増し、生産能力はさらに増強されることになる。

目指すは世界競争力の強化

2015年から6年間にわたる中期経営計画で、2020年に売上高1兆円としていた目標を3年早く達成し、化粧品の国内売上高で1位に位置する資生堂。
一方、海外に目を向けると、ロレアルやエスティローダーなどの美容関連売上高は3兆円を超えており、世界5位の資生堂にとってその背中はまだまだ遠いのが現状だ。

資生堂 魚谷雅彦社長;
売上の目標は前倒しで実現できたが、日本の会社である資生堂が世界で競争力を持つためにはイノベーションの力をつけることが必要だ。

「メイドインジャパン」を一つの付加価値として売り出す日本企業勢の、世界での戦いは続く。

(フジテレビ報道局経済部 奥山 未季子記者)

奥山未季子
奥山未季子

フジテレビ報道局経済部記者