与党や国民からしばしば「反対ばかりだ」との批判が浴びせられる野党。その野党の議員が国会で菅首相に「野党は本当に反対ばかりだと思うか」と直撃した。これに対する菅首相の苦笑を交えた答弁は、コロナ禍での政府と与党・野党の立場を反映するものだった。

菅首相に“山形の徳光”が質問「野党は反対ばかりと思うか」

菅首相も出席して行われた5日の参議院決算委員会。無所属で国民民主党会派に所属する芳賀道也議員と菅首相の間で次のようなやりとりが展開された。

芳賀議員:
「野党は反対ばかり、対案がないと信じている一般の方がずいぶんいるが、総理はそう思っているのか、お聞きしたい」

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菅首相:
「新型コロナという厳しい状況を乗り越えていくためにはここは与党も野党もない。国会審議を通じて、様々なご提案をいただいて、そのもとに謙虚に受け止めながら、大事なものはしっかり対応させていただいている。例えば強くご要望いただいた事業規模に応じた協力金については今回実現をさせていただきますし、さらに一人親、また二人親でも低所得の方については子供に対し一人5万円の支給させていただく、こうしたことも確か皆さんからもいろいろご要望があったというふうに思います。引き続き、国民の命と暮らしを守る提案の中で、できそうなものはそこは謙虚に受け止めて取り入れさせていただきたい」

菅総理は、野党が反対ばかりと思うかについては直接答えず、これまでに取り入れた野党の提案について言及し、「今後もできそうなものは取り入れたい」と述べた。しかし元民放アナウンサーで、「山形の徳光」とも呼ばれた芳賀氏の菅総理への“ズームイン”は続いた。

芳賀議員:
「野党は反対ばかり提案がないと思っているのか。イエスかノーでお答えいただきたい」

菅首相:
「私、今こんなに丁寧に答えて・・・(議場笑い)褒められるかと思ったんですけど。本当にそういう意味で答えさせていただきました」

芳賀氏の「イエスかノーか」との再確認に対し菅首相は、「褒められるかと思ったのに」とマスク越しに苦笑いした。それでも芳賀氏は、野党は反対ばかりではなく、多くの提案をしていることを認めて欲しいと食い下がった。

菅首相の慎重答弁のウラに与党からの不満も

芳賀議員:
「ひとり親支援、申し上げたのは与党か野党か。具体的に聞きたいと思うが、コロナ禍で個人の10万円給付、最も早く提案したのはどこだったでしょうか。同じようにひとり親支援、学生支援、家賃支援についても、もっとも早く法案を提出したのは政府与党だったか、野党だったか、お答えいただけますか」

菅首相:
「そこについてはいろんな方から、いろんな政党から申し入れがあったんじゃないでしょうか」

ここで菅首相があえて「いろんな政党」と言ったのにはワケがあるようだ。コロナ禍の中で野党は、政府に様々な政策を提案していて、孤独担当大臣の設置や、ひとり親家庭の支援などが実現してきた。しかし与党内の一部には、菅政権が与党の提案を差し置いて野党の提案を受け入れることへの反発があり、菅首相は与党に配慮して「いろんな政党から申し入れがある」と述べたとみられる。これに対し、芳賀氏はダメ押しの質問を浴びせた。

芳賀議員:
「友人からも議員になった途端に、野党は反対ばかりだから提案はないんだとお前はそういう議員にならないでと。と信じ込んでる人はそう言ったんですね。議員になってきてみたら、全く真逆でした。総理は今、コロナ禍であって、与党も野党もないんだということで、ぜひ国民のためになることをやるんだという力強いご答弁がありました。もう一度確認します、その通りそう思ってらっしゃいますね?」

菅首相:
「あまり疑わないでいただきたいなと思う。その通り、そうでございます」

芳賀議員:
「有り難い、力強い言葉をいただきました。この困難の中で与党も野党も話し合って決めているんだと国民に見えれば、一つの国民の安心につながる」

野党提案のジレンマ、成果は政府与党に?

度重なる質問に「あまり疑わないで」とこぼした菅首相の姿は、ちょっと不快感をのぞかせているようにも感じられた。結局、「野党は反対ばかりか」という単刀直入の質問に対し、菅総理の答えは「与党も野党もなくできそうな提案は取り入れる」ということだった。

菅首相には、与党に配慮しつつ野党も巻き込んで、コロナ対策に打ち込む姿勢をアピールする狙いがあると見られる。一方、野党内には、提案しても実際に実現するのは政府与党だというジレンマもあり、「結局は丸呑みされて政府与党の手柄になるだけだ」という見方をする議員もいる。年内に総選挙を控える中、後半国会でも政府と与野党各党のアピール合戦が激しくなりそうだ。

(フジテレビ政治部 大築紅葉)