経団連が構想する“人類史上5番目の新しい社会”

11月6日、経団連で一つの会議が行われた。
「デジタルトランスフォーメーション会議」。
全産業横断でデジタル革新を進めようとする会議の初会合だ。「デジタルトランスフォーメーション」とは、『デジタル革新により生活やビジネスをより良い方向に変えていく』という概念のこと。

中西会長は会議で「次の経済成長にどう結び付けるか。単に規制緩和だけではなくて、新しい経済の構造を作っていくという発想が必要だ」と述べた。
会議は中西会長肝煎りのもので、デジタルトランスフォーメーションは「人類社会が次のステージへ向かうきっかけになる」としている。
次のステージとは何か?

経団連 中西会長

経団連では、創りたい未来社会を「Society 5.0」と呼んでいる。
「狩猟社会」(Society 1.0)、「農耕社会」(Society 2.0)、「工業社会」(Society 3.0)、「情報社会」(Society 4.0)に続く、人類史上5番目の新しい社会のこと。
そして、このSociety 5.0を「創造社会」と定義している。
経団連は、このコンセプトの下、デジタルトランスフォーメーション会議で、全産業横断でデジタル革新を進めるための課題を議論し、2020年夏をめどに提言をまとめることにしている。

日本企業で「フィンテック」は進んでいるか?

では、日本企業の現状はどうか。
近年なじみ深い言葉となっているのが「フィンテック」だが、実態はどうなのか。
KPMGコンサルティングと慶應義塾大学FinTEKセンターは、12月2日、日本国内の上場企業を対象に行ったフィンテック導入に関する実態調査をまとめたレポート「Fintech Initiative 2030」を発表した。
それによると…フィンテックへの投資規模について聞いたところ、過去3年間に1億円以上の投資規模と回答した企業は22.4%。今後3年間で1億円以上の投資規模を予定していると回答した企業は35.9%だった。

(提供;KPMGコンサルティング・慶應義塾大学FinTEKセンター)

また、フィンテックの活用およびデジタル化への中期計画やロードマップを策定しているかについて、「策定済み」と回答した企業は9.4%にとどまり、65.3%の企業が「策定していない」と回答した。

(提供;KPMGコンサルティング・慶應義塾大学FinTEKセンター)

トップ企業を中心としてフィンテックの活用が進む一方、全く関心がない、あるいは関心はあるが具体的な施策に至っていない企業も多いことが浮き彫りになる結果となった。
まだまだ日本においては、フィンテックは進んでいないというのが実態のようだ。

オンライン診療で「セカンドオピニオン」へのハードル下げる

一方、制度改正を追い風に、デジタルトランスフォーメーションが進みつつある分野がある。
病院に通わなくても診察を受けられる、いわゆる「オンライン診療」の分野だ。
オンライン診療は当初「遠隔医療」と呼ばれ、2015年8月に厚生労働省が事実上の解禁。2018年3月には「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が作られ、診療報酬の改定で保険診療の点数も設定された。
その後、オンライン診療の導入が全国で増え、業界トップのIT企業「メドレー」が手掛けるオンライン診療システムは、全国約1300の医療機関に導入されている(2019年9月時点)。メドレーは、12月12日、東証マザーズに上場する。

(提供;メドレー)

そもそもオンライン診療とは何なのか?
メールや電話ではなく、ビデオ通話を用いてリアルタイムに映像と音声のやり取りをして診察を行うもので、予約から受診、支払いまでインターネットを通じて行うことが可能だ。ただし、原則として初診は対面診療で行い、医師がオンライン診療を利用可能と判断した場合のみ利用できる。
つまり、オンライン診療は、対面診療と組み合わせることで利用可能となる(保険診療では、最低3か月に1度は対面での診察が必要)。
初診でもオンライン利用が認められているものに、セカンドオピニオンがある。
メドレーでは2019年6月に、著名な医師のセカンドオピニオンをオンラインで受けられる「オンライン専門医外来ネットワーク」というサービスも開始した。
「可能であれば複数の医師の話も聞いてみたい」というニーズは存在するものの、現実には様々なハードルが存在している。
「セカンドオピニオンを受けられる病院がどこかわからない、」「主治医に気兼ねしてしまう」など、患者側が懸念していることを背景に立ち上げたものだ。
現在、てんかん・心臓血管外科・不妊症などを対象に実施していて、今後、対象の疾患領域や参加医療機関を継続して拡大していくとしている。

(提供:メドレー)

メドレーは、「医療のICT化は圧倒的に遅れている」と指摘する。
電子カルテの導入は世界的に見て圧倒的に遅れ、その結果として医療情報の連携もあまり進んでいないという。
少子高齢化、医療費の高騰、予防医療の推進。
オンライン診療が求められる社会状況は広がる中で、医療のデジタルトランスフォーメーションは、まだまだ発展途上にあるようだ。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)