12月11日、東京・丸の内で約5万人に囲まれてのパレードを終えたラグビーワールドカップ日本代表の選手らが首相官邸を訪れ、安倍首相を表敬した。主将のリーチマイケル選手は、大会開催前の9月にも首相官邸を訪問したが、そのときと比べると記者の数もカメラの数も比べ物にならないくらい多く、官邸の職員も一目見ようと官邸のエントランスに詰めかけたほどの人気ぶりだった。

東京・丸の内でのパレード・12月11日
リーチマイケル主将らラグビー日本代表(官邸・12月11日)

桜の戦士が安倍首相に渡したのは…

選手たちが安倍首相に渡した記念品は、国会で話題の「桜」に敏感な安倍首相に配慮したのか、桜のジャージではなく、サイン入りのラグビーボールと赤Tシャツだった。安倍首相は「まさに『ONE TEAM(ワンチーム)』、流行語大賞にもなりましたが、ワンチームの力でこの大きな壁を突破したんだろう」と史上初のベスト8入りをたたえた。

「笑わない男」として知られる稲垣選手に対し、安倍首相が「稲垣さんもちょっと笑っていただくと…(笑)」と声を掛けた際には、稲垣選手はぐっと我慢をするような表情を浮かべ、周囲の笑いを誘った。

(首相官邸インスタグラムより)

首相はラグビーにわかファン?長年のファン?

さらに安倍首相は政治家になる前、社会人ラグビーの名門である神戸製鋼で勤務をしていた頃によくラグビーを観戦していたというエピソードを明かし、「にわかファンではない」と主張した。

首相が本当に「にわか」でないかは定かではないが、W杯期間中、開幕戦の日本―ロシア戦や決勝戦のイングランド―南アフリカ戦をスタジアムで観戦したほか、執務後に秘書官らと夜の食事をしながらテレビ観戦するなど、首相自身もラグビーW杯に相当熱中していたことがうかがえる。そして、安倍首相は次のように述べた。

「にわかラグビーファンもずいぶん増えてですね、ノックオンとか、ノットリリスザボールとかですね、ジャッカルなんて、人のおかずを取っちゃうことをジャッカルって言う(会場笑い)、こういうですね、色んな流行語になっているわけですが…」

このように、W杯効果でにわかファンにもラグビー用語が普及したことに言及した安倍首相だが、当の安倍首相自身も、W杯期間中や終了後には、スピーチなどでにわかに、ラグビーに関する用語を散りばめていた。

(首相官邸インスタグラムより)

スピーチにラグビー用語を活用

「いま私たちが進めているこのアベノミクスにおいても、なんとかオールジャパンで取り組みたいと思っているんです。(会場内の黒田日銀総裁を見つけ)まあ、黒田さんとはまさに「ONE TEAM(ワンチーム)」になっているんだと思いますよ」(経済界の懇親会でのスピーチ、12月11日)

「商工会80万社の会員の皆様と政府が、がっちりスクラムを組んで、まさに「ONE TEAM(ワンチーム)となって令和の時代を切り開いていきましょう」(日本商工会の会合でのスピーチ、11月21日)

「我々、政府・与党もしっかりとスクラムを組んで、まさに「ONE TEAM(ワンチーム)」で山積する内外の政策課題に果断に取り組み、国民の皆さまの付託に応えて参りたいと考えております」(政府与党連絡会議でのスピーチ、11月12日)

安倍首相にとっては、政治を前に進める中で、様々な連携やチームワークが必要だけに、同じくこうした要素が重視されるラグビーの用語は、使いやすいのだろう。さらにW杯を機に日本を訪れた海外首脳と相次いで会談するなど、ラグビーを自身の外交に積極活用した。

日NZ首脳会談・9月19日

令和元年の安倍外交 スクラム組み成果を出せるか?

11月20日に桂太郎を抜き憲政史上最長在任の総理大臣となった安倍首相だが、今国会では「桜を見る会」をめぐり野党から追及され、火消しに追われる結果となった。

一方、安倍政権の強みとされる「地球儀を俯瞰する外交」では、ラグビー外交や、即位外交などのいわゆるソフト外交の面で存在感を示したものの、これまで意欲を示してきたロシアとの北方領土交渉は失速気味で、北朝鮮による拉致問題も進展の目処が立たず、政府高官も「外交面ではあと2つ課題が残っている」とこぼしている。

そうした安倍外交において、この年末に注目されるのが、来日が最終調整されているイランのロウハニ大統領との首脳会談だ。20日にも行われる見通しで、日本が閣議決定する中東への自衛隊派遣について丁寧な説明を行う見通しだ。

ただ、安倍首相がスクラムを組む同盟国アメリカと、日本が伝統的に友好を築いてきたイランの関係が核開発問題をめぐり緊迫する中で、日本の立ち位置は極めて難しくなっている。

そうした中で、安倍首相がアメリカとイランの仲介役として、「ワンチーム」とはいかないまでも、少しでも「ノーサイド」に近づけられるか、令和元年の締めくくりにその手腕が問われる。

(フジテレビ政治部 総理番記者 阿部桃子)