消費増税じわりと影響…

消費税増税から2 か月半が経った12 月13日、増税後初めてとなる日銀の短観(全国企業短期経済観測調査)が発表された。
最も注目される大企業の製造業「業況判断」指数は「0」となり、前回9月調査から5ポイント低下。4期連続の悪化となった。
これは、2013年3月以来の低水準で、米中貿易摩擦による海外経済の減速に加え、消費税増税による駆け込み需要の反動減が、自動車や繊維業などで響いた形となった。
また、大企業の非製造業もプラス20と前回から1ポイント低下し、2期連続で悪化
小売・卸売などで、やはり増税による駆け込み需要の反動減、増税後の客足鈍化を指摘する声があったという。

日銀は増税の影響について
非製造業を中心に増税の影響を指摘する声が幅広く聞かれている。先行きについては、和らぐと期待する声もある一方で、消費の不透明感に対して懸念する声も聞かれた」と説明した。
前回増税時と比べると影響は小幅にとどまったものの、非製造業では先行きへの警戒感は根強い形となった。

 
 
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軽減税率対応などコストかさみ…小売り倒産増続く

民間調査会社の東京商工リサーチが12月9日に発表した「倒産月報(2019年11月度)」も興味深いデータとなっている。
11月の全国企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、727件(前年同月比1.2%増)となり、3カ月連続で前年同月を上回った。
3カ月連続増は8年ぶりで、さらに、2019年の企業倒産は、2008年以来11年ぶりに前年を上回ることがほぼ確実となっている。
産業別では、小売業が2019年に入り増加傾向が続いている。消費税増税に関連して経営に行き詰まった企業は、12月6日までにすでに全国で3件発生。軽減税率対応レジへの投資負担や電子マネーの普及で、想定以上に資金繰りが悪化したケースがあるという。
小売業の倒産は、消費税増税の前から増加している。
東京商工リサーチは、
「経営不振が長引く中小企業の中には、今後、消費増税が背中を押す形で業績悪化に拍車がかかるケースの増加が懸念される」と指摘している。

2019年は11年ぶりに前年を上回る見通し
2019年は11年ぶりに前年を上回る見通し

追い詰められるアパレル業界

小売業の中でも、特に倒産が増加しているのがアパレル関連だ。
2019年1月~10月の倒産は199件(前年同期比14.3%増)。負債額は453億9300万円に上り、実に前年同期2.3倍に達した。これはリーマン・ショック後の2010年同期以来の水準
特に店舗売り上げの比率が高いブランドでは、ネット通販のノーブランド勢との競合の激化が苦境の原因だという。
今や「洋服は試着してみないと…」という消費者の意識は薄れ、ネット通販は重要な販促ツールになっている。
2019年のアパレル業界は、全国に店舗展開する中堅企業以上の破綻が相次ぎ、負債が大型化した。
以下の表が、それをまとめたものになる。

(提供:東京商工リサーチ)
(提供:東京商工リサーチ)

「オンワード」「フォーエバー21」続く店舗閉鎖

アパレル業界の「大量閉店」も2019年の話題となった。
記憶に新しいのが、「23区」「組曲」など百貨店向けブランドを多数展開する「オンワードホールディングス」。
ネット通販に押されるなどして販売不振が続き、2020年2月期中間決算は244億円の最終赤字を計上。全体の2割に当たる国内外約600店の閉鎖を決めている。

オンワードホールディングス 保元道宣社長;(10月4日の決算会見)
顧客との接点は必要だが、数よりも質を高めたい。デジタルに精通した世界大手と連携し、新しいビジネスを共同開発したい

オンワードは、現在ネット通販などデジタルの売上比率は約15%程度だが、今後10年程度で5割まで引き上げたい方針だ。

オンワードホールディングス本社
オンワードホールディングス本社

低価格帯では、ファストファッションブランド「フォーエバー21」も、10月末で日本の全ての店舗を閉鎖した。
「フォーエバー21」は1984年にロサンゼルスで創業。流行を意識した若者向けカジュアル衣料品を安く売るファストファッションブランドとして、世界各国で800を超える店舗を展開し一世を風靡した。
しかし、9月に米国連邦破産法11条を申請。
こちらも、ネットショッピングの台頭により、経営が悪化したことなどによるものだった。

 
 

東京商工リサーチは
アパレル小売業者は低価格化とコストアップに苦心し、“利益なき消耗戦”にさらされている」と指摘している。
消費税増税の影響も後押しし、アパレル業界の生き残りはさらに厳しさを増しそうだ。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者