世界有数の火山国のアイスランドで3月19日、首都から30kmほどの場所で火山が噴火。

同じエリアで噴火が起こるのは約800年ぶりとのことで、現地では火口に近づいて見物するハイキング客らで殺到しているというのだ。

この噴火の様子など捉えた動画がTwitterに投稿され、話題となっている。

それがこちら。

溶岩が容赦なく進んでいる様子。これでアイスランドに移ってから、オーロラ、氷河、噴火を生でみたことになる。すごいよね!?

このコメントとともに投稿された動画は、噴火口から離れたところで撮影していることが分かるが、真っ赤に流れる溶岩の迫力や物珍しさに多くの見物客がいることが確認できる。

提供:小倉悠加さん
提供:小倉悠加さん
この記事の画像(13枚)

投稿したのは、2017年からアイスランドの首都レイキャビクに在住し、音楽や文化を中心にアイルランドの魅力を日本に紹介する、アイスランドの独自ツアー企画や各種コーディネーターをしている小倉悠加さん(@YukaOgura)。

スナイフェルネス半島に立つ小倉さん(提供:小倉悠加さん)
スナイフェルネス半島に立つ小倉さん(提供:小倉悠加さん)

この投稿に、Twitterユーザーからは「こんなに近くまで行かれて、見られることがとっても凄い!」「そばにいて熱さを感じますか?」「危険じゃないんですか?」と感動や心配するコメントが集まり、9万9000いいねが付いている。(4月1日時点)
 

提供:小倉悠加さん
提供:小倉悠加さん

動画では分からない、実際の現場の雰囲気も知りたい。撮影した時の様子などを小倉さんに聞いた。

「熱くなかったですよ」

ーー動画はどこで撮影したの?

ハイキングコースでみなさんが歩く道を行き、噴火がおきている渓谷に入って右側の山の中腹あたりです。


ーー撮影時、熱くはなかった?

熱くなかったですよ。もっと山の下に降りて近づかないと暖かさも熱も感じませんでした。風向きの関係もあったことでしょう。有毒ガスに注意と言われていたので、常に風上にいるようにしました。

 

提供:小倉悠加さん
提供:小倉悠加さん

ーー安全なの?

Twitterでも「危なくないの?」という反応がたくさんありました。誰も死にたくないし、火傷もしたくないでしょうから、前列の人はそれなりの距離は保っていたと思います。

事前に今回の噴火は火砕流や火山灰を吹き上げるようなものではなく、そういう意味では比較的安全と研究者から発表されていました。

実際の噴火があり、ヘリコプターで視察をした学者や研究者が、「安全なところから見学してほしい」という言葉が出ていたこともあり、みなさん危険性は低いのだろうと判断したことと思います。私もそのひとりです。
 

提供:小倉悠加さん
提供:小倉悠加さん

ーー噴火当時、なにか被害はあった?

2月末にM5.7の大きな揺れがあり、その後311のあの時しか体験したことのないような、矢継ぎ早で大きな揺れのくる群発地震となっていました。地鳴りと揺れが数週間続き、正直なところ私も精神的に辛くなってきていました。

噴火は大災害にもつながりかねず、気やすく「噴火してほしい」なとどは言えませんが、内心は「噴火して地震をおさめてほしい」でした。地震鬱になりかけていた人は、非常に多かったと思います。

そんな雰囲気になってきた時に、安全な場所に噴火が起こった。よかった!それが住民の正直な感想だったと思います。たまたま、そのニュースが飛び込んできた夜、知人の家で会食がありました。みんな「よかった!」でしたね。今回の噴火はかわいいものだし。


ーー現在はどう?

現在群発地震はおさまっています。地鳴りを聞かなくなり、揺れなくなって、本当にありがたい。今後の地震や噴火がどうなるかはわかりませんが、とりあえずはコロナの暗い話題も、群発地震による不安も、噴火が吹き飛ばしてくれて、現時点ではお祭り気分ですね。
 

小倉さんによると、今回の噴火は小規模なこともあり、溶岩の見学はそれほど危険性が高くないとのことだった。
現地の映像でも、真っ黒な溶岩の上でソーセージを焼いてホットドッグを作っている現地調査に訪れた科学者たちの姿も見られた。

火山の現地調査に訪れた科学者たちは、溶岩の上でソーセージを焼いていた…
火山の現地調査に訪れた科学者たちは、溶岩の上でソーセージを焼いていた…

近づきすぎると熱いです。燃えます。

ただ、これは火山国ならではの光景なのか。日本ではこんな間近で見られることはないだけに、やはり危ないのではと思ってしまうが専門家の意見も聞いてみたい。
火山活動の研究をする北海道大学大学院理学研究院地震火山研究観測センターの青山裕教授に溶岩について詳しい話を聞いた。

ーー溶岩の近くはどのくらい熱い?

赤熱したストーブの近くに居るようなものなので熱いはずです。


ーー近寄っても危なくないの?

溶岩の流動速度がさほど速くなければ危険性は低いと考えられます。ですが、極めて高温ですし有毒な火山ガスも放出されますので、近寄ることはお勧めしません。

提供:小倉悠加さん
提供:小倉悠加さん

ーー速度が速いとどうなる?

溶岩流は重力によって低い方へ流れるので、溶岩が高温で粘り気が低い場合や斜面の斜度が大きい場合には、人間が歩くよりも速い速度で流れることもあります。

投稿動画の最後の方でも、噴出口の近傍が映っていますね、出てきたばかりのところは溶岩がどんどん移動しているのが分かるでしょうか。(動画の30秒頃です)

溶岩流が流れ下る斜面の下方に居なければ、直接的な危険性は低いでしょう。周囲の地形などから流れてこない方向を判断して、安全に見学してもらいたいものです。

投稿動画30秒部分(提供:小倉悠加さん)
投稿動画30秒部分(提供:小倉悠加さん)

ーーそもそも、「溶岩」とはどのようなものなの?

溶融した岩石のことを「マグマ」や「溶岩」と呼び、一般的には地下にある場合には「マグマ」、地表に噴出したものを「溶岩」と言います。この溶融した岩石が冷え固まってできる岩石も「溶岩」と呼びます。

アイスランドでは玄武岩質溶岩と呼ばれる種類の溶岩が噴出し、噴出時の温度は1200℃程度と言われます。


ーー溶岩の黒い部分も熱いの?

溶岩に限らず、物体は500℃程度より高温になると赤く見えるようになります。黒くなっている部分の表面は500℃程度以下の温度にまで冷えたものと考えられます。

提供:小倉悠加さん
提供:小倉悠加さん

ーーでは、もし溶岩を見学する機会があった場合の注意点を教えて。

近づきすぎると熱いです。燃えます。有毒な火山ガスを吸い込む危険があります。

・むやみに近づかないでください(万一転んで高音の溶岩に触れると命に関わる)
・黒くなっていても数百℃の高音なので触れない
・有毒な火山ガスも出るので風向きに留意する

「地球の息遣いを日々感じる」

やはり、溶岩の見学には熱さだけでなく、有毒な火山ガスなどの危険もあり、常に風上に移動するなど注意が必要とのことだった。

しかし、火山活動が近くで見られるというのは、アイスランドの自然がそれだけ雄大であるということだろう。小倉さんは、これまでにアイスランドの情報を投稿してきたが、今回の火山の投稿が話題になったことをどう思ったのだろうか。アイスランドの魅力と合わせて話を聞いた。


ーー投稿が話題になったけど、どう思う?

驚きました。今までずいぶんとアイスランドの大自然の写真や動画はツイートしてきましたが、私自身が素晴らしいと思っても、ほとんど反響がないこともありました。火山噴火の珍しさに加えて、至近距離で見学できるという驚きが反響を呼んだのでしょうね。

これをきっかけにアイスランドに興味を持ってくれればいいなぁと思っています。意外にも日本と共通点の多い国なので、知れば知るほど親近感を感じると思いますよ。

アイスランドの凍った滝(提供:小倉悠加さん)
アイスランドの凍った滝(提供:小倉悠加さん)

ーー最後に、アイスランドの魅力を教えて。

美しい大自然に恵まれる島国です。水と空気がきれいで、首都のレイキャビクは文化的にとても楽しい。平和指数も男女平等指数も世界一で暮らしやすいですよ。

30分もドライブすれば、誰もいない大自然の中。荒涼とした中にも春夏秋冬があり、地球の息遣いを日々感じることができます。

キルキュフェットル(提供:小倉悠加さん)
キルキュフェットル(提供:小倉悠加さん)

(参考記事:こちらアイスランド(2)火山が噴火!いざ現地へ!溶岩まで50メートル!世にも稀なエンタメをどうぞ!

たしかに提供してもらった他の写真からも、アイスランドの魅力が伝わってくる。海外旅行には行きづらい状況が続いているが、興味を持った人は調べてみるのもいいかもしれない。
 

【関連記事】
アイスランドの“氷河”を空から見てみた…合成写真じゃないの!? 撮影者と専門家に聞いてみた
西之島の面積が拡大 昨年の噴火で新たな陸地が形成 

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。