台風で妻を失った男性が明かす“あの日のこと”
台風19号の大雨で乗っていた車が流されて亡くなった、宮城・大和町の石川ゆきみさん(当時58)。
助けに駆けつけた夫を思いやる言葉を残し、命を落とした。
夫の喜巳穂(きみお)さん(66)が、同じことを繰り返さないためにと、悲痛な胸の内を明かしてくれた。
石川喜巳穂さん:
頭こっち、腹を向けて。最終的にここで見つかった、車が
宮城・大和町に住む石川喜巳穂さん。石川さんは、台風19号の大雨で妻・ゆきみさんを亡くした。
石川喜巳穂さん:
(妻は)辛抱強いし、自分の考えはしっかりと持っている。自分がこうだと思ったことは、はっきりと言うタイプだった
助け求める妻が残した言葉…「危ないから来なくていい」
台風が上陸した10月12日、妻のゆきみさんは大雨が降る中、富谷市での仕事を終え、車で大和町の自宅に帰る途中だった。
午後11時20分ごろ、石川さんにゆきみさんの携帯から1本の電話が...
石川喜巳穂さん:
最初の一声が『お父さん助けて』、『なんだどうした』と話を聞きながら。『水がかぶって車のエンジンが止まった。今、浮き始めて流されている』と
ゆきみさんのSOSに、石川さんはすぐに利府町の勤務先から、助けを求める妻の元へと急いで車を走らせたが...
石川喜巳穂さん:
ここは全部、冠水
ゆきみさんのいるところまであと1kmという場所で、石川さんの車も濁流にはまり、身動きが取れなくなった。
石川喜巳穂さん:
『もう危ないから来なくていい』、『助けに来なくていい』と言われた
そして、最初の電話から3時間がたった午前2時20分ごろ、もう一度ゆきみさんに電話した。
石川喜巳穂さん:
『父さん、電池なくなるから切るよ』と。携帯の電池がないから切るという答え方で、すぐに切られた。それが最後のやりとり
そして翌日の夕方、自宅から車で10分ほどの小西川の中に転落した車の中から、ゆきみさんは遺体で見つかった。
石川喜巳穂さん:
亡くなってる思い出しかない、ここに来ても。涙が出てきて終わり
“家から出ない判断”も重要
石川さんは、『危険を感じるような大雨の場合は、家から出ないという判断重要だ』と話す。
石川喜巳穂さん:
夜、雨がすごかったらどうなるのか? イメージがわいてないのが一番の認識不足。台風がすごいときには「(外に)出ない」、皆さんにも話していきたい
『同じ悲しみを繰り返してほしくない』。石川さんは、自分の体験を話すことで犠牲者が減ることを強く願っている。
(仙台放送)