Any bad kids?

秋田と言えば、“男鹿のナマハゲ”。

出刃包丁を持ちながら「泣ぐ子はいねが~、親の言うごど聞がね子はいねが~」などと言いながら家々を巡り、怠け心を戒め、無病息災をもたらす地域の守り神のような存在だ。

ナマハゲは1978年に国の重要無形民俗文化財に指定、さらに2018年にはユネスコ無形文化遺産にも登録された、秋田を代表する民俗行事。

そんなナマハゲについて今、秋田県が制作したポスターが話題となっているのだ。



秋田県観光戦略課が、新しい「あきたびじょん」のポスター画像としてTwitterに投稿したのは、赤と青の顔の2匹のナマハゲ。

「あきたびじょん」 とは、統一感のあるイメージで秋田の魅力を発信するためのイメージアップ戦略のひとつ。「あきたびじょん」ポスターは観光誘客用ではなく、まずは秋田を知ってもらう端緒として、秋田を強く印象付けることを目的としているという。

ポスターの写真はフランスの写真家、シャルル・フレジェさんが撮影。また一般的に想像するナマハゲの顔と比べると怖いものではなく、どこかかわいらしい顔になっている。

このコンセプトは 「Any bad kids? 世界は悪い子?であふれている」

そして「悪い子はいねが~」が英訳されて「 Any bad kids? 」となっていたり、「あきたびじょん」が「AKITAVISION」と英語になっていたりと、今回のポスターは主に国外に秋田のイメージをアピールするために制作したものだというのだ。

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「AKITAVISION」ポスターは秋田駅、秋田空港などの県内だけでなく、県外、そして、フランスのパリ日本文化会館など海外にも掲示されているという。

でもなぜ、ナマハゲを英語で発信しようとしたのだろうか? コンセプトにはどのような意味が込められているのか秋田県観光戦略課にお話しを伺った。

「努力を怠る人をナマハゲが諭す」がメッセージ

ーーポスターのコンセプトが“Any bad kids? 世界は悪い子?であふれている”ということだが、どのような意味が込められている?

「Any bad kids?」は、ナマハゲの「悪い子はいねが~」の英訳にあたるものですが、「悪い子?」とは、特定の個人や人種ではなく、貧困、格差などの世界の悪弊を指すもので、それらの是正に向けて努力を怠る人をナマハゲが諭すというメッセージを持たせています。怠け者を諭す地域の守り神であり、来訪神としてユネスコ無形文化遺産に登録されたナマハゲが、こうした問題に立ち向かうイメージを表現しています。


ーーポスターに写っているのは特別なナマハゲ?

このナマハゲは、男鹿の芦沢地区のもので、フランスの写真家シャルル・フレジェ氏が実際に男鹿を訪問し、撮影したもので、写真集「YOUKAINOSHIMA」の冒頭を飾る代表作品の一つです。一般的なナマハゲとは印象が異なるものですが、外国人目線から秋田の魅力を撮ったもので、写真が持つ透明感や独特の雰囲気は、世界に通じる魅力やインパクトがあるとして、ポスターに起用しました。

芦沢地区のナマハゲ
芦沢地区のナマハゲ

ーーAny bad kids?と英語にしているが、英語で伝えることで何か効果はある?

ポスターを見た外国人の方にもインパクトを与え、「何だろう?」と思わせる端的な言葉として「Any bad kids?」というコピーを掲載しました。


ーーポスターとコンセプトでこだわった部分は?

ポスターデザインにおいては、余計な情報は盛り込まず、「おや?何だろう」と思わせるインパクトのあるコピー、ビジュアルづくりにこだわりました。ポスターで関心を引いたうえで、QRコードでサイトに誘導し、ナマハゲや写真を説明するとともに、県の観光情報に誘導する流れとしています。

近年の課題は若い担い手の不足

ーー最近のナマハゲ事情は?

ユネスコ無形文化遺産に登録されたことで、世界からも注目される存在となり、ナマハゲ行事を一度は中断したものの、登録を契機に復活した地区も出てきていますが、人手不足の問題は未だ解消されていない現状にあります。昔から町内会の若手がナマハゲ役を担ってきましたが、担い手の高齢化が進んでおり、次世代に繋げていくべき伝統行事であるものの、若い担い手の確保が課題となっています。

観光面では、昨年度から男鹿市観光協会DMO推進室が大晦日に行われる「男鹿のナマハゲ」行事を体験するプレミアムツアーを造成しており、ツアー参加者は、地域の方と行事に同行し、あるいはナマハゲ役として本来の行事に参加することが可能であり、今年度も実施予定です(申し込みは締め切りました)。

ナマハゲの“本当の姿”を伝えていきたい

ーー今後はナマハゲ文化をどのように伝えていきたい?

「男鹿のナマハゲ」の“本当の姿”を伝えていきたいと考えています。近年テレビで取り上げられることが多く、知名度が上がっている一方で、ナマハゲは子どもを泣かせる存在だと誤解している視聴者の方もいらっしゃるようです。

「男鹿のナマハゲ」は、大晦日の晩に家々をまわり、「今年1年元気にしていたか。来年も来るから元気に過ごしなさい」など、家主と会話し、家庭、地域に寄り添う神であることを知っていただきたいです。

「男鹿のナマハゲ」の本当の姿を知るためには、男鹿にお越しいただき、実際に体験をすることが一番ですが、上記のようなツアーへの参加のほか、ナマハゲについて学ぶことが出来る「なまはげ館」やナマハゲ行事を再現する「男鹿真山伝承館」は、通年訪問が可能です。

また、男鹿市観光協会では、ナマハゲ習俗や歴史、伝統行事を深く知ることができる「ナマハゲ伝導士認定試験」を通してナマハゲを伝える取り組みを行っており、現在、全国に1300名を超えるナマハゲ伝導士がいらっしゃいます。


ポスターのコンセプトには、社会問題にもなっている貧困や格差などの是正に向けての努力を怠る人をナマハゲが諭すというメッセージが込められ、外国人にもインパクトを与えるために英語を加えたポスターとなったことがわかった。

若い担い手が少ないということなので、このポスターで国内外に秋田、そしてナマハゲの魅力をさらに発信していくことで、ナマハゲの担い手が増えていってほしい。