今まさに旬を迎えている、みかん。

こたつで食べることを楽しみにしている人も多いと思うが、腐りやすいのが“たまにキズ”。段ボールにいれたままにしている場合など、ひとつ腐ると他のみかんにも広がってしまう。

そのような中、みかんの腐敗を抑制する装置を和歌山市の研究機関「一般社団法人 雑賀技術研究所」が開発した。

みかんの腐りやすさには農家も頭を悩ませていて、輸送中のコンテナ内で腐敗することなどが大きな負担となっているという。
これまで腐敗の抑制技術としては、紫外線を用いた殺菌処理が広く知られている。しかし、この技術は主にみかんの皮の表面に付着している菌を死滅させるもので、その効果は一時的だった。

今回は、開発された装置に数秒間みかんを通し、別の種類の紫外線を当てることで腐敗を防ぐことができ、その効果は10日~20日ほど持続するのだという。

カギとなるのが「スコパロン」という成分

この装置のカギとなるのが、みかんの皮にできる「スコパロン」という成分。みかんが外部からの刺激を受けたときに、自らの実を守るために皮の部分に作られる抗菌物質だ。

雑賀技術研究所は、数秒間、紫外線を当てることで、スコパロンを生成し、腐敗を抑制する効果が得られる条件(紫外線の種類、当てる際の強さなど)を発見。この条件をもとに、みかんをコンベアで搬送しながら、紫外線を当てる装置の開発に成功したという。

その後、約3万5000 個のみかんを用いて、この装置の実証試験を繰り返し、「装置を使って紫外線を照射した後、1カ月、保管したみかん」と「装置を通さずに1カ月、保管したみかん」を比べたところ、「装置を使ったみかん」の方が2割程度、腐敗を抑制できることが確認された。

箱いっぱいのみかんを1ヵ月保管…腐ったみかんはこれだけ違った

この装置で処理し、温度などの適切な条件で保管すると、みかんの皮にスコパロンが生成される。この物質が果皮の中にしばらく残るため、腐りにくくなる効果が持続するのだという。

でも「紫外線を当てるだけ」だということならば、自分で「買ったみかんをベランダなどに放置して紫外線を当てる」ことで、同じ効果を期待できないのだろうか?
別の種類の紫外線とはどういうことなのか、雑賀技術研究所の担当者に話を聞いた。

開発で苦労したのは「紫外線の量」

――このような装置を開発したきっかけは?

雑賀技術研究所は、過去に紫外線と赤外線を使ったイチジクの殺菌装置(腐敗抑制とは異なる)を開発した実績があり、みかんの腐敗でお困りだった静岡県様からお声がけ頂きました。

また、みかん農家の方から「腐りで消費者に迷惑をかけたくない」「腐りによるロスを少なくしたい」という声を頂いていたので、「何とかしたい」という思いで開発をスタートしました。


――開発するにあたって、苦労した点は?

みかんに当てる「紫外線の量」です。

紫外線をたくさん当てるほど、スコパロンが多くできる傾向があります。一方で、紫外線を当てすぎると、人間の日焼けのように、みかんの皮が変色したり、しわしわになることがあります。これを果皮障害といいます。

果皮障害がなく、かつ、スコパロンが一定量、以上できる処理条件を決めていくところで苦労しました。


――装置の開発にかかった年数は?

約3年です。

使用する紫外線は太陽光に含まれる紫外線よりも強い

――みかんを育てている時点での紫外線では、「スコパロン」は増えない?

紫外線で処理していないみかんを分析したところ、ほとんど含まれていなかったので、生育時に浴びる紫外線では増える可能性は低いと思われます。

今回、使用している紫外線の種類は、太陽光に含まれている紫外線よりも強いもので、自然にはあまりないものになります。


――ということは、みかんを買った後、ベランダなどで紫外線を当てても、腐りにくくなるわけではない?

ベランダにしばらく放置するというのは実際にやったことはないのでわからないですが、太陽光に当てると果実が温まるので、違う要因で腐る可能性が高くなるような気がします。


――この装置で紫外線を当てることによって、味に影響はある?

検証の範囲では、甘さ(糖度)、酸っぱさ(クエン酸濃度)に影響はありませんでした。

2020年のみかんシーズンの導入を目指す

――みかん農家の方の反応は?

「みかんの腐りで消費者をがっかりさせることが減らすことができる」と前向きに捉えてくれています。


――実用化はいつ頃になりそう?

2020年のみかんシーズン(10月ごろ)に、現場への導入を目指しています。


――実用化に向けた課題は?

コストダウンと性能のバランス、そして、特殊な紫外線を使用しますので、装置の安全性の確保です。


家庭でみかんを長持ちさせる方法も聞いた

――腐敗を抑制する効果は購入してからも持続するもの?

今回の開発の範囲では、照射後3日ほどでスコパロンが生成し、みかんの種類にもよりますが10~20日程度は皮に残ることを確認しています。

通常の流通ですと、3~4日で小売店まで到着(遅くて10日程度)しますので、スコパロンが生成していれば、消費者が購入してからも持続している可能性はゼロではないと思います。

ただし、保管条件によっては生成しにくい場合もあります。


――ちなみに、家庭でみかんを長持ちさせるためにはどうすればよい?

生産者の方も収穫後は、できるだけ温度が低い場所で保管するように注意されているようです。

特にみかんが流通し始める、9月、10月頃は、気温が高いので腐りが発生しやすいです。

みかんが1つでも腐っていると周りのみかんに広がっていきますので、腐りを取り除いて、冷暗所で保存するのがいいのではないでしょうか。


雑賀技術研究所によると、この装置は腐敗を低減できる可能性があるもので、腐敗がゼロになるわけではないとのことだ。

元々のみかんの状態(切り傷の有無、品種など)や保管環境によって、腐敗のしやすさは大きく変わるとのことだが、少しでも減らすことができるのならば生産者も消費者もうれしいことだろう。