超低金利政策を維持

12月18日~19日、2019年最後となる日銀の金融政策決定会合が開かれた。
短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度に誘導する大規模な金融緩和策の現状維持を決定。海外経済の減速が続く中、米中の貿易協議が第1段階の合意に達したことなどから、現時点ではマイナス金利の拡大など追加緩和策は必要ないと判断した。
ただ、声明文では、2%の物価上昇目標に向けたモメンタム(勢い)が損なわれるおそれが高まる場合には、躊躇なく追加的な緩和を行う方針を引き続き明記。

日銀 黒田総裁;(12月19日);
2%の物価安定目標の出来るだけ早期の実現に向けて、引き続き大幅な金融緩和を粘り強く続けていく

黒田総裁は、金融機関の収益が悪化する副作用についても十分に注視していく考えを示した。
 

日銀 黒田総裁
日銀 黒田総裁
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メガバンクが揃って減益…

では、現在のメガバンクの収益状況はどうか。
2019年4月から9月までの中間決算では、最終的な利益は、三菱UFJフィナンシャル・グループが前年同期比6.3%減、三井住友フィナンシャルグループが8.6%減、みずほフィナンシャルグループが19.9%減、といずれも減益となった。
銀行の本業は、預金で集めた資金を企業や個人に貸し出し、その利ザヤで稼ぐこと。
この利ザヤが減ったことが最大の減益要因となった。
利ザヤを大きくするには、預金金利を低くして高い金利で貸せば良いが、大規模な金融緩和が続いているため、現在メガバンクの普通預金金利は0.001%とすでに過去最低水準。
貸出金利は、住宅ローン金利では、主力の「10年固定型」の最優遇金利(12月適用)で、三菱UFJ銀行が0.79%、みずほ銀行が0.80%、三井住友銀行は1.05%と、12月に0.05%~0.10%引き上げたものの、過去最低水準の低金利が続いている。
長期金利の指標である新発10年物国債の利回りは、低水準で推移し続けているため、大きくは上げられない状況だ。

メガバンクが住宅ローン審査に導入

こうした中、住宅ローンの審査業務をフィンテック化し、業務効率アップ・コスト削減を図ろうとする動きが活発化している。
みずほ銀行は、2018年10月から住宅ローン審査へのAI導入に向けた実証実験を開始している。
みずほ銀行に蓄積された大量の住宅ローンデータを、グループのみずほ第一フィナンシャルテクノロジーが開発したAIに学習させ、過去実績からその結果を予測する機械学習モデルだ。
従来の複雑化した審査工程から、AIが構築する新たな審査モデルに置き換えることで、効率的でスピーディーな審査、業務負担の軽減を図ることが出来る。
みずほ銀行は、実証実験の結果を踏まえた上で、住宅ローン審査へのAI導入を検討している。

提供;みずほ銀行
提供;みずほ銀行

三菱UFJ銀行は、2019年9月から不動産会社経由の案件でも、スマートフォンで住宅ローンの申し込みを契約まで完結出来る新ツールを始めた。
不動産会社の店頭でタブレット端末から住宅ローンの申し込みを行うシステムはすでに展開していたが、端末を導入していない不動産会社向けに、スマホでいつでもどこでも申し込みが出来るようになった。
申し込みは、QRコードを読み取ってスタート。タブレット端末での申し込みと同様に、免許証や名刺の読み取り機能により、入力の負担が軽減される他、必要書類も画像データとして送ることが可能。銀行側も電子データの受領により、審査スピードの早期化、情報セキュリティの強化を図ることが出来る。

三井住友銀行は、2017年6月から「住宅ローン審査申込アプリ」を始めている。
アプリをダウンロードすれば、いつでもどこでも申し込みOK。審査に必要な書類はスマートフォンのカメラで撮影しアップロード可能で、保存機能があるので申し込みを中断しても再開出来る。
「ネットだけじゃ不安」という顧客のために、ネットローンのコンサルタントによる電話サポートもついている。
そして、契約となった際には、近くのローンプラザで手続きを行うか、近くにローンプラザがない場合は、電話や郵送で対応する形となる。

提供:三井住友銀行
提供:三井住友銀行

店舗を持たないネット銀行の攻勢も近年強まっている。
来店不要やペーパーレスをアピールし、顧客獲得を進めてきたネット銀行にとって、そもそもAIなどフィンテックとは親和性が高い。
長引く超低金利を背景に、住宅ローンのフィンテック化の動きはますます進みそうだ。

(フジテレビ報道局経済部 土門健太郎記者)

土門 健太郎
土門 健太郎

フジテレビ報道局経済部 記者