児童相談所虐待対応ダイヤルが12月3日から通話料を無料に

2019年もあと少し。昨年の東京目黒区の児童虐待死事件に続き、今年も全国で児童虐待のニュースが後を絶たない。

虐待は世の中の関心も高く、FNNプライムオンラインの公式Twitterからも多くのリクエストが寄せられた取材テーマでもある。

こうした悲劇が少しでも減らせないかと対策が急がれる中、厚生労働省は児童相談所虐待対応ダイヤル(189番・イチハヤク)の無料化を12月3日から始めた。このダイヤルは、虐待の疑いを感じたときや子育てについて悩んだときに、24時間いつでも児童相談所に通告・相談ができる全国共通の電話番号だ。

電話を掛けると、発信した電話の市内局番などから地域を特定して近くの児童相談所につながり、虐待の通告・相談ができる仕組みとなっている。

(出典:厚生労働省HP)
(出典:厚生労働省HP)
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2015年7月までは10桁の番号だったが、より子どもや保護者らの声を“いち早く”キャッチできるようにと、覚えやすい3桁(189)の番号に変更。2016年には、児童相談所につながるまでの音声ガイダンス(操作手順などの案内)の時間を平均約70秒から約30秒に短縮するなど、より使いやすい運用に努めてきた。

そして2019年12月3日からは、無料化としたのだ。これまでの通話料は、距離などに応じて異なるものの、3分で固定電話は約8.5円、携帯電話で約90円かかったという。

虐待の疑いを通告することに、心理的なためらいがある人もいるだろうが、そもそも通告・相談は、匿名で行うこともでき、通告・相談をした人、その内容に関する秘密は守られる。

今回なぜこのタイミングで無料化に踏み切ったのだろうか? 厚生労働省の担当者に話を聞いた。

電話は月平均で約2万件、このうち児相につながるのは25%ほど

ーーまず189の仕組みを教えて。ダイヤルを掛けて児童相談所につながると、どのような対応を取るの?

189では虐待通告のほかにそれ以外のご相談も承ってます。その中で虐待の疑いがある場合については、各児童相談所には48時間ルールというものがあり、基本的にはこの時間内に子どもの安全確認をするということになっています。


ーー189には、毎月平均してどれくらいの件数が掛かってくる?

月によってばらつきはあるのですが、2万〜2万5000件の間で推移しています。ちょうど数字を集計している段階なのですが、現在は2万件を少し超えるくらいです。

(出典:厚生労働省HPより)
(出典:厚生労働省HPより)

ーー過去には児童相談所までの接続率の低さが注目され、音声ガイダンスの短縮を図った。これによりダイヤルの途中で切れず、児童相談所までつながる接続率はどうなった?

10桁の番号を3桁(189)に変更した2015年7月から2016年3月までは、10%ほどでした。

それが同年4月に音声ガイダンスを短くしてからは、20%ほどまで向上しました。そこから徐々に接続率は上がっていき、現在はもう少しで25%に届きくというところです。


ーーこの音声ガイダンスが長かったことから、過去にはその間に「虐待じゃないかも?」などと通告者が思い直して、電話を切られた可能性はある?

通告される方の心理は非常にさまざまだと思いますし、当然初めは虐待かと思ってかけてもかけているうちに心理状況が変化したりすることもあろうかと思います。ただ実際に通告される方の聞き取りは、そういう観点でできてはおりませんので、それも原因の分析の難しさを物語っているのかと思います。


ーーこれに加え、さらに接続率アップを図るために無料化に踏み切った?

はい、厳密に言えば分析はすごく難しいと思うのですが、一つの要因として有料であるだろうということもございまして、今回無料化に踏み切りました。


無料化の効果はこれから、データが揃ったら分析

ーー無料化して数週間が経った。既に接続率が上がったなどの成果は分かる?

まだ判断が難しいところです。無料化した当日は「本当に無料化になったの?」という電話が一部あったとの報告は受けていますが、その後の状況については各月に報告を求めていますので、1月にそのデータが整ってきてからになります。コールセンターのオペレーターの皆さんは普段の業務を行なっていますので、まだその部分に関しては伺えていない状況になります。


ーー無料化に続いて、既に次に関して予定している対応はある?

まず我々は、今回ひとつとして無料化を打ち出しているので、その効果がどのようなものになるのかというところを見てからになると思います。接続率の問題はさまざまな要因がありますので、当然それを見ていく必要はあろうかと思っています。さらに、これまでもさまざまな改善を重ねて参りましたので、引き続きしていきたいと考えています。

虐待を見つけたら躊躇なく通報を

ーーさまざまな189ダイヤルの改革をするのも、虐待の疑惑について少しでも気になったら通報してほしいから?

虐待を見つけた場合には、まさにその“いち早く(189)”という言葉に込められているのも、ためらわずに躊躇なく通告していただきたいという思いがございます。


ーーただこれで通告が増えると、現場となる児相の職員の負担がさらに増えることになるのでは?

昨年に作成しました政府の新プランでも、本当に政府全体で児童相談所の体制強化に努めています。189の無料化などで通告が増えることも十分予想されますが、その中で児童相談所においても体制強化をしていただいております。そして国としてもこれを支援していく形でやっていきたいと思います。

ーーちなみに虐待事件が起きると、話題となるのが警察との連携(情報共有)。今はどのようなタイミングで行われている?

連携に関しては我々も通知を発しており、こういう場合は警察に情報共有をしてくださいというのを示しています。いわゆる虐待事案として作成したアセスメントシートに該当する場合や外傷が見られる場合などには、警察と情報共有をするように努めています。

児童虐待というものは非常に事件化される可能性が高いので、そういう風な場合には基本的に警察に情報共有を図るということで示しております。

具体的な流れは、189の通告がありますとまずその内容を児童相談所の職員らがきちんと聞き取って事実を確認することになります。そのあとに、基本的には子どもの安全確認を行うということになります。そして安全確認を行なった際に事件性を疑われる場合には、警察に通報して情報を共有するという流れになっています。

(出典:厚生労働省HPより)
(出典:厚生労働省HPより)

無料化当日には問い合わせのような電話もあったことから注目の高さがうかがえ、接続率アップへの効果は期待できるのではないだろうか。

「あの時伝えておけば…」と後悔しないためにも、少しでも虐待への疑いを感じたら迷わず189番に掛けてほしい。


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プライムオンライン編集部
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