男に懲役17年の判決

3月9日、さいたま地裁で1人の男に懲役17年の判決が言い渡された。

男は埼玉県越谷市の路上で通勤途中の元交際相手を待ち伏せし、包丁で刺し、現行犯で逮捕された水元義人被告(36)。

水元義人被告 2020年10月1日
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裁判で明らかになったのは異常とも言える水元被告の執念深さだった。

包丁、ロープ、名前入りの焼き印も

水元被告と殺害された元交際相手の石沢里美さん(23)は会社の同僚で、2人は2018年9月から交際を開始していたが、水元被告には妻子がいた

殺害された石沢里美さん(23)

「さーちゃん」「ぴーちゃん」とお互いを呼び合い、交際は約2年続いたが、2020年7月に水元被告の妻が2人に対して慰謝料を請求したことをきっかけにその関係は終わりを迎える。

その後、石沢さんは水元被告に対して「交際を解消する」と連絡を入れ、翌8月11日には「他に好きな人ができた」と告げた。

水元被告は石沢さんが「他の男のものになるくらいなら殺そう」などと考え始め、この日を境に水元被告の行動は徐々に石沢さんを追い詰めていく。

石沢さんに「好きな人ができた」と告げられてから約1週間後、水元被告は事件で使用した刃渡り18センチを超える包丁を購入し、水元さんを縛るためのロープや焼き印も購入した。

この焼き印には水元被告の名前である義人(よしと)が平仮名で刻印されていた。

水元被告の自宅にあった2人の写真

水元被告の妹が裁判で焼き印に関して次のように明らかにした。

「私は兄が不倫をしているのを知っていたので、一線を越えないように注意していた。千葉県で兄と話した際に、石沢さんに対して「運命の人だったが愛が憎しみに変わった」と話し、“よしと”と刻印された焼き印を発注したと聞いた。何に使用するのか?と聞くと、「さとみさんの内ももに入れてやろうと思った。焼き印で自分の痕を付けたい」と言っていた。

その後、心配になって別の日にさとみさんに何をしたの?と確認をしたら「殺人未遂」と返信があった。また別の日に兄と話した際には、石沢さんの首を絞めたと言っていた。私は兄に対して石沢さんは運命の人ではないので諦めなさいと言った」

明らかになった強い執着心と独占欲

裁判で明らかになったのは水元被告の石沢さんに対する強い執着心や独占欲だった。

水元被告は石沢さんから交際を解消する旨と「他に好きな人ができた」という連絡をきっかけに石沢さんに対する異常な行動をエスカレートさせていく。

水元被告は石沢さんの首を絞めたりするだけでなく、「殺す」などと書いた手紙を石沢さんに見せたりもしていた。

またインターネットで「愛した人 殺したい」、「約束守らない 殺す」などという言葉で検索もしていた。

水元被告の自宅にあった2人の写真

石沢さんの父親「極刑にしてほしい」

裁判には石沢さんの父親が出廷し、水元被告に対する強い怒りと、もっと早く警察に相談していれば良かったと後悔の念が絶えないことを明らかにした。

そして、「里美はまだ23歳でこれから結婚して子供も産んで明るい未来が待っていた。水元被告は無期懲役では足りない。極刑にして欲しい。あの世で里美に謝って欲しい」とその気持ちを涙ながらに語った。

裁判には水元被告の母親も出廷した。

母親は被害者の石沢さんとその家族に対して「本当に申し訳なく思っています」と謝罪の言葉を述べた上で、「バカな息子ですが見捨てることができないので来ました」と話した。

弁護側から「これまで水元被告にDVの様子はあったか?」と問われるとは、「物に手をあげることはあっても人に手を出すことはなかった」と話し、母親として今の気持ちを聞かれると、「(水元被告は)バカ野郎です。バカなことをしたと思います。取り返しのつかないことをした」と語り、そして「バカな息子ですけど、息子ですので反省をしながら生きて欲しいと思います」と証言した。

「愛情を持って接していたのか今一度振り返って欲しい」

水元義人被告

さいたま地裁は水元被告に「強い殺意に基づく残忍かつ一方的な犯行で若い被害者の未来を突如奪った結果は重い」と指摘し懲役17年の判決を言い渡した。

そして判決後、水元被告に対して、「石沢さんに本当に愛情を持って接していたのか、今一度振り返って欲しい」と述べた。

水元被告の弁護側によると、水元被告はどんな判決でも受け入れるとして控訴はしない方針だという。

執筆:埼玉県警担当 河村忠徳