「私は生々しい写真を見ることはできなかった。写真を確認した妻から内容を聞き、まさかそんなことまで…」

こう語ったのは、当時小学校中学年だった娘を持つ父親の鈴木さん(仮名)。鈴木さんの娘は、別の友達と一緒に小学校の同級生の家に泊りに行き、寝ている間にその友達の父親に衣服を脱がされて、プライベートゾーンを触られている写真を撮影されたという。さらに別の日にはその父親の性器を触らせているような写真も撮影されていたという。

筆者も小学校のとき、頻繁に“お泊り会”と称して友人宅に泊まりに行き、夜まで大騒ぎしたことがある。子どもにとっては楽しく特別な経験だろう。

鈴木さんに話をうかがったところ、「泊まりに行くくらいだからそれなりに家族付き合いがあると思った」として、事件当日も「『泊まりに行く』というので『ああ、そう。じゃあ、いってらっしゃい』」と見送ったという。もちろん、“お泊り”先の父親(以下、加害者)が性犯罪を行っていることなど知る由もなかった。

加害者はその後、別の事件で逮捕され、携帯電話を調べられたところ、児童ポルノの写真が大量に出てきたという。鈴木さんの娘のほかにも、被害を受けた子供は複数人に及んでいた。「頼みの綱は警察しかいない」と思った鈴木さん。しかし被害届を出しても簡単には受け取ってもらえなったという。

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「最初に警察から話があったときに、厳罰に処さないといけないから被害届は出しますと伝えていた。犯人は再犯を犯す可能性もある。ほかの子供が被害を受ける可能性もある。そうしたらその子に申し訳ない。あの時、自分が頑張らなかったから、よその子がさらに被害にあったなんてなったら僕の責任だ」

しかし、警察から突き付けられたのは、被害にあった娘本人への聴取の必要性だったという。本人聴取ができないのであれば起訴できない可能性を示唆され、鈴木さんは間接的に示談を求められていると感じたという。

「被害にあったということがわかっちゃうと、幼い子供が一生のトラウマになってしまう。死ぬまで忘れないだろうし、思い出すこともたくさんあるだろうし。トラウマになるような傷はつけたくない」

鈴木さんは娘への聴取を避けつつ被害届を出せないか悩み続けたという。鈴木さんから相談を受けた立憲民主党の寺田学衆院議員は、3月10日の衆院法務委員会で、自らも7歳の子供の父親であることにも触れつつ、13歳未満の子供への性被害の事情聴取のあり方について質問し、こう切り出した。

「頼みの綱である警察が『本人の聴取をやらせてもらわないと被害届なんて出せませんよ』と突き放してくる。(中略)量刑としてどうなるかというところは本人聴取によって左右されるところがあるんじゃないかというのが多くの方々のお話でした。ただ、その量刑の的確性とのてんびんにかけられているのは子供の心の傷ですよ。こういうことが今、現状にあるということを、私は自分ごとにして、今この場に立って質問をしているんです」

寺田氏は、警察も検察も的確な量刑を導き出すために被害児童本人の聴取を求めるケースがあることを指摘しつつ、13歳未満の性被害では被害児童の同意の有無に関わらず加害者は罪に問われるはずなのに、量刑のための本人聴取が、立件の前提となるようなあり方に疑問を呈した。

これに対し、政府参考人として出席した警察庁の猪原官房審議官は個別のケースについては言及を避けると述べた上で、次のように答えた。

「被害の届出に対しては、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理することとされております。また、特に、御指摘の低年齢の被害者の方に係る性犯罪事件の捜査に当たりましては、被害者の方に対する慎重な配慮が重要であると認識しており、今後とも、このような点を含め、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております」

被害届は原則受理されることと、低年齢への性犯罪事件は被害者に慎重に配慮という一般論を述べた警察庁に対し、寺田氏は改めて「警察がそうやって示談を誘導しているんですよ、結果的に。若しくは、子供にわざわざ傷を与えることを警察がやっているんですよ。ちゃんとやってください」と訴え、各都道府県警察への指導を求めた。

寺田氏はさらに上川陽子法務大臣に対して、加害者を罰するための行動と、本人の事情聴取による子供の心の傷を、まるでてんびんにかけるような選択を親に迫るような司法制度のあり方について、次のように質した。

寺田議員:
「正直、ここにいるみんなで考えたいですよ。本当に自分がその選択、親として迫られたらどうしますかと。大臣、どうします、本当に。大臣だけの問題じゃないと思いますが、この国の司法制度、司法行政がこういうことを国民に押しつけているんですよ。悶絶する選択ですよ」

上川法相:
「私も伺っているだけで、本当に胸が苦しくなりました。その子のこと、今どういう状況なのかも含めて、心配をしています。小さいときには、なかなか自分も言うことができない、親にも言えない、あるいは親からも…。こういうような状況でありますので、極めて根が深い問題であるというふうに認識をしております。ゆえに、この問題については、今、この時点の中でしっかりと取り組んでいきたいと思っているところであります」

寺田議員:
「私は、十三歳の性同意年齢以下の子には、本人の聴取があるとかないによって、起訴する、しないというようなことにならないように、検察庁としても一定の基準を出していただきたい」

委員会での議論後、鈴木さんの被害届は娘への聴取が行われることなく受理された。寺田氏は「氷山の一角の下にある部分をちゃんと表面に出さなきゃいけないというのが私の問題意識だ」と述べ、全国に泣き寝入りしている被害者がいるのではないかという危機感を示した。

立憲民主党は18日、このような問題を含めた性犯罪関連の刑法改正を早急に検討・提言するためのワーキングチームを設置した。三児の父親である立憲民主党の泉政調会長は、「魂の殺人という性犯罪に関し、被害者を救済していく議論を進めていきたい」と意気込みを示した。

また自民党には2017年に発足した「性暴力のない社会の実現を目指す議員連盟」もある。被害はたとえ1件でも多すぎる(too many)という意味で、通称「1 is 2 many!(ワンツー)議連」と呼ばれている。この議連は上川法相自身が会長を務めていた。

この国に住む子供たちを守っていく大人として、性犯罪の問題を単に男女の問題として片づけるのではなく、子供も含めた被害者をしっかりと守っていく視点で国会での議論がさらに深まっていくことを切に願う。

(フジテレビ政治部 大築紅葉)