「視察は私のおもてなし」

日本と中国、それに韓国の3カ国の首脳が一堂に会する首脳会議が12月24日に「三国志」の舞台ともなった中国・成都で開催された。初開催から20年の節目となる今回の会議で議長国を務める中国はナンバー2・李克強首相の意向で開催地を成都に決めるなど並々ならぬ力の入れようだった。

日中韓首脳会議後の共同記者会見(24日)

中国側は会議に合わせて訪中した日韓の首脳それぞれに北京で習近平国家主席との会談や食事会を開催するなど盛大にもてなした。特に安倍首相については成都近郊に場所を移し、李首相との会談、昼食会を開催したほか、世界文化遺産の水利施設「都江堰」の視察にも李首相自らが同行して案内するなど日本への厚遇ぶりを示した。都江堰は中国人の多くが知る景勝地で、会談でも李首相は「視察は私としてのおもてなしだ」とアピールした。

成都近郊で安倍・李克強両首相が会談、李首相は「視察はおもてなし」とアピール(25日)

視察に関わった日本政府関係者は「中国側はできる限りのもてなしをしようと考えていた。安倍首相が気に入るに違いないと思ってこの場所を選んだのだろう」と話す。また、他の関係者によると事前に中国側は日本の関係者に対して安倍首相の中国文化への関心、食事の好みなどについて聞いて回っていたという。中国当局の関係者は「中国としても今回の安倍首相の訪中は非常に重視している」と話していた。

背景には日中と「反比例」の米中関係

中国側が日本へのおもてなしに気をつかう背景には何があるのか。それはアメリカとの関係が影響している。中国はアメリカとの貿易協議で第一段階の合意に達したとはいえ、今後トランプ政権がどう出てくるか、不安を覚えているのは間違いない。また、政府への抗議デモが続く香港の情勢について、習主席は「我々はいかなる外国勢力の干渉も容認しない」と度々言及するなどアメリカが介入を強めていることにも警戒している。

中国側が無視できない存在、アメリカのトランプ大統領

中国としてはアメリカと緊張関係にある中、経済規模では米中に続く世界第3位、そしてアメリカと同盟国である日本との関係は重要だ。また、2020年春には習主席の訪日も予定されている。それらを踏まえれば日本との関係は今は良好なものにしておく方が得策だと判断しているのではないか。日中外交に長年携わってきた日本政府関係者は「米中関係が悪くなると逆に日中関係はよくなる。反比例のようなものだ」とその皮肉な状況を指摘する。

にこやかに握手する安倍首相と習近平国家主席、現在の日中関係を象徴?(23日)

プレスセンターに“珍”看板・・・現場では混乱

それでは実際に日中韓首脳会議の現場はどうだったのか。私が現地で取材した際には様々な混乱が見られた。まずは会場で取材するプレスのパスをめぐってだ。中国外務省には10日以上前に申請をしたが、実際に日本メディアにパスが配布されたのは会議前日の夜11時頃。パスの表記についても他のテレビ局の中国人カメラマンの所属する会社名が「フジテレビ」と誤表記。取材の集合場所や時間についても中国側から日本側に対して伝えられたのは当日の未明だった。

さらに、混乱は会場でも。日本メディアは中国側の指定で全員早朝に会場に入ることを求められ、そのため午前11時半から予定されていた共同記者会見を取材するにも朝6時過ぎの集合だった。

乗っていたバスが会場に向かう際に何度も止められる(24日朝)

日本メディアは会場へ数台のバスに分乗して向かうが、今度は到着すると入り口で止められ「あっちだ」「こっちだ」と言われ、目的の現場に着くまでには苦労の連続だ。同行した日本政府関係者は「中国側はロジの詳細をギリギリまでこちらに出してこなかった。対応が後手後手に回って大変だった」と現場での苦労を漏らす。そして会見を取材する報道陣がようやく会場の中に入ると、そこにあるものが待っていた。

日中韓首脳会議のプレスセンターに’’珍‘’看板(24日)

中国語で「吹風会(ブリーフィング)」と書かれた看板。ブリーフィングとは政府の会議などが開かれた際にその内容に関する説明を意味する言葉だ。目を疑ったのはその文字の下にある日本語。何と「ドライヤー」。実は中国語ではこの「吹風」を一字変えて「吹風」にすると「ドライヤー」を意味するのだ。

ブリーフィングが「ドライヤー」???(24日)

重箱の隅をつつくつもりはないが、中国だけではなく日本や韓国のメディアが世界に情報を発信するプレスセンターでその看板をいきなり目にすると、一体どんな準備をしてきたのだろう、と疑問を抱かざるを得ない。この看板を見て中国がアピールする「おもてなし」が急ごしらえのように感じたのは私だけではないと思う。

日中関係は改善していると言われるが、沖縄県尖閣諸島周辺での中国公船の活動活発化、相次ぐ日本人拘束など日中間で懸案は山積している。日中関係が急ごしらえのものではなく長期的かつ安定した真の友好関係に発展することを期待したい。

【執筆:FNN北京支局 木村大久】