5歳男児餓死事件 児童相談所の対応に問題は?
福岡・篠栗町で5歳男児が餓死した事件。母親とその「ママ友」の女のいびつな関係が次第に浮彫になってきている。
保護責任者遺棄致死で逮捕、送検された碇利恵容疑者(39)と知人の赤堀恵美子容疑者(48)。

碇容疑者ら2人は、2019年8月頃から、当時住んでいた篠栗町のマンションで碇容疑者の三男、5歳の翔士郎ちゃんに十分な食事を与えず、餓死させた疑いが持たれている。
この事件は、篠栗町や福岡児童相談所などで組織する協議会の“見守り家庭”で起きた事件だった。
元児童相談所職員で虐待事案の対応に詳しい福岡市子ども家庭支援センターの河浦龍生さんは、死亡した翔士郎ちゃんが「体重が減っている」などと園から町に連絡があった段階で児童相談所は、重度な虐待があると認識する必要があったと指摘する。

福岡市子ども家庭支援センター長 河浦龍生さん:
体重減少の程度によっては重度の虐待にあたる。最初から児童相談所が関わらなければいけない事案

児童相談所(※以下、児相)が翔士郎ちゃんなど一家の情報を共有したのは2019年11月。死亡したことがわかった2020年4月までに「母親が大声で叱っている。子供を残して外出していることがある」として粕屋警察署から心理的虐待及びネグレクト、育児放棄の疑いの通告もあった。

福岡市子ども家庭支援センター長 河浦龍生さん:
保護者を伴わずに家の中や外で幼児が過ごしている状況は、重篤なネグレクト(育児放棄)になる。どこかで安全確認をしなければいけないと考えるべき
児相による家庭訪問は、2回行われた。1回目は不在で会えず、児相職員が直接、翔士郎ちゃんを確認できたのは、粕屋署の虐待疑いの通告を受けてから6日後だった。
児相会見:(3月3日)
この時点では、“差し迫った危険はない”と判断した

顔色もよく元気。翔士郎ちゃんと面会した児相は、危険度が最も低い段階と判断したという。

一方、翔士郎ちゃんの家庭は、ライフラインの電気・ガスなどが止められるなど、生活は困窮状態に陥っていた。
親族からは、安否を心配する相談も数回あったが、改めての家庭訪問はされず、また立ち入り調査などのより強い介入も行われなかった。
河浦さんは、兆候は何度もあったにも関わらず、見逃した児相の対応に疑問があるとしている。
福岡市子ども家庭支援センター長 河浦龍生さん:
十分な栄養を与えていない、子どもだけで過ごしているかもしれない、ライフラインが止まるような生活環境。この3点について児相は、子どもの育ちにとって重大な問題と認識しなかったとしか考えられない。これは虐待対応の基本が欠落していると言わざるをえない

“サイン”に本当に気がつかなかったのか。県は今後、弁護士や医師など第三者による検証を行う方針だ。
(テレビ西日本)