韓国・文在寅政権を超ド級の不正疑惑が直撃している。韓国土地住宅公社の職員らが新都市計画の未発表情報を悪用し、事前に土地を購入して暴利を得ていた疑惑が提起されたのだ。

土地投機疑惑に国民激怒

革新系弁護士団体は3月2日、住宅公社の職員約10人が2018~20年の間に、ソウル市郊外の新都市予定地区で7000坪(約2万3140平方メートル)の土地を100億ウォン(約10億円)で購入したと暴露。公職者倫理法と腐敗防止法に違反する可能性が高いとして警察に告発した。

弁護士団体は会見で住宅公社の職員らが不正に関与していたと発表(3月2日)
この記事の画像(6枚)

購入したのは大部分が農地だが、新都市計画では一帯に7万戸の住宅が建てられる予定で、開発に入れば多額の補償金や代替地取得による莫大な利益が当て込める。

韓国では農地の購入には農業を営んでいることが条件となるが、公社職員らは農民だと偽装して農地を購入した疑いが持たれている。不正疑惑は国会議員や周辺都市の公務員にも広がりつつあり、文政権を揺るがす一大スキャンダルとなりつつある。

韓国国民は怒り心頭だ。

文政権発足後の2017年以来、ソウルの住宅価格は50%以上も上昇したとされる。世界一のスピードで地価が高騰し、ソウル市内のマンションの平均価格は9億2000万ウォン(約8800万円)に達した。庶民、特に若い世代にとっては、マイホームは夢のまた夢と言わざるを得ない状況で、不動産格差が深刻化している。

ソウルの住宅価格は文政権発足以来、50%以上も上昇。不動産格差は深刻に

韓国政府はこれまでに20以上の不動産対策を導入したが、思うような効果は出ていない。新都市計画も不動産価格抑制策の一環だったが、むしろ不正投機の温床になる事態を招き、国民の不評を買った。

「すぐに忘れ去られる。悔しかったら転職してみな」

これに火に油を注いだのが、公社職員と見られる人物が匿名サイトに記した書き込みだ。

「どうせ1~2カ月経ったら忘れ去られる。内部では気にもしていない」

「調べても仮名で(土地購入を)やっているからばれないだろう」

「(国民が)どんなに怒っても、これはうちの会社の恩恵であり福利厚生だ。悔しかったら転職してみな」

公社職員と見られる人物が匿名サイトに記した書き込み

不正な土地投機を反省するどころか、特権として開き直る態度は国民の神経をいっそう逆なでした。

不動産を所有する富裕層であれ、持たざる庶民であれ、「土地を持った者が勝ち」というのが韓国の実情だ。特権を悪用して暴利をむさぼる既得権層への恨みは根深く、国民感情を燃え上がらせている。

所轄の卞彰欽(ピョン・チャンフム)国土交通相は、就任直前まで住宅公社の社長を務めていた人物で、問題の不正取引は同氏が社長の時代に起きた。

韓国土地住宅公社の本社

卞氏は「土地を事前に購入したというより、新都市開発がないとわかって取得したが、急に新都市に指定された、というのではないか」などと職員らをかばうような発言をし、国民を呆れさせた。

辞任要求が強まると、卞氏は文大統領に辞意を伝えたが、文大統領は卞氏が講じた住宅供給対策が国会を通るまで辞表の受理を保留している。

文大統領にも疑惑が飛び火

世論の猛反発を受け、文大統領は新都市地区での関連部署の職員や家族による土地取引について全面的な調査を命じるとともに、「国が持つ全ての行政力と捜査力を発動しなければならない」と徹底調査する方針を打ち出した。

政府は首相室、警察、行政安全省、国税庁、国土交通省などによる合同調査団を設置したが、検察と監査院は除外した。文政権が進める検察改革によって警察との捜査権の調整が進められており、公的企業ではあるが公務員には当たらない公社職員の不正捜査は「検察の管轄外」とされたためだ。

検察と監査院の除外には当初から疑問の声が上がっていた。警察による公社への家宅捜索が疑惑暴露から1週間後と出遅れるなど批判が絶えず、結局、検察も捜査に加わることとなった。

こうした中、文大統領が退任後の私邸用に購入した土地についても疑惑が提起された。

新都市地区での土地投機疑惑について謝罪した文在寅大統領

文氏は2020年4月に釜山近郊の農地約1144坪(約3780平方メートル)を、計10億ウォン(約1億円)あまりで購入した。前述のように農地購入には農業を営んでいるという条件があり、文氏も農業営業計画書を提出した。

そこに記された農業歴は「家庭菜園11年」だった。

しかし、この土地は購入から9カ月で宅地への変更が認められたことがわかった。野党が特別扱い疑惑を提起すると、文氏は自身のSNSで「みみっちくて恥ずかしい」「選挙時期だから理解はするが、ほどほどにしなさい」と反論した。

文氏は「全ての手続きは法に従っている」と主張しているが、説得力に欠けるのは否めない。文氏の娘や親族による土地投機疑惑もくすぶっている。国民に対し、再三「不動産投機によってこれ以上、カネ儲けできないようにする」と表明してきた文大統領だが、その言葉がむなしく響く。

韓国のリアルメーターが3月15日に発表した世論調査で、文大統領の支持率は37.7%と前週に比べ2.4ポイント下落した。文氏の支持率が30%台に落ちたのは2月第1週以来、5週ぶりとなる。「支持しない」は57.4%で1.7ポイント増加した。

文大統領は16日、住宅公社の不正疑惑に対し「誠実に暮らしている国民に大きな虚脱感と失望を与えた」と初めて謝罪した。さらに新たな政治課題として「不動産積弊」の清算を掲げた。不動産をめぐる疑惑を「親日」と同様、過去に蓄積された腐敗として位置づけたのだ。

自分だけの責任ではないとも取れる言い分だが、果たして国民は納得するのか。

4月7日に控えるソウル・釜山両市長選挙で与党の苦戦が続く中、2022年の次期大統領選挙にも影響が出そうだ。

【執筆:フジテレビ 解説副委員長(兼国際取材部) 鴨下ひろみ】