「それって、ホント?」と言いたくなるマナー、多くありませんか?
新入社員のキャトウさんも、そんな“もやもやマナー”に悩まされるひとり。

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出張から帰ってきた社員を迎える「ご苦労様!」「お疲れ様でした!」の声。
でも、この使い分けに意味ってあるの?

5月には退位された上皇ご夫妻に向けた「お疲れ様でした」という言い回しが、インターネット上で「ふさわしくないのでは?」「いや、合っている」と議論を呼んだのも記憶に新しい。
SNSでは「後輩に『ご苦労様でした』と言われてモヤッとした」という体験談が挙がる一方、「使い分けなくてもいいのに…と思う」という声もある。

そこで今回のテーマは…

さっそく、国内外の企業や大学などでのマナーコンサルティングや人材育成などのマナー指導を行っている、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんにお話を聞いた。

西出氏:
まず、今回もマナーの大前提として、「相手の立場に立つ」という相手目線をマナーとして考える場合、その相手がその言葉をどのように感じ、どのように受け取るかに応じて、答えは変わってきます。よって、一概に「これが正解!」ということは言えません。

とはいえ、一般的にビジネスシーンにおいてはどう言えばいいのかお悩みの方もいらっしゃると思いますので、このような言葉を使えば、一般的には失礼には当たらないでしょう、という言葉をお伝えしてまいります。

まず、「ご苦労様」という言葉は、目上の人から目下の人にかける言葉としてはOKですが、目下から目上にかける言葉としては現代ではNGと言われています。
もともとは目下の人から目上の人への「ご苦労様」も使ってよかったのですが、時代の流れと共に使われ方が変化してきたようです。一部の辞書には「目上の人に対しては『お疲れ様』を使うほうが自然」との記述もあります。

例えば「貴様」という言葉。もともとは、尊い人に向けられた言葉であったのが、現代では逆の意味や印象の言葉となっています。このように、言葉は時代とともにその意味や使われ方も変化するものなのですね。


「お疲れ様」「ご苦労様」という言葉の使い分けはなんとなく知っていた…という人も多いだろうが、現代では基本的には
目上→目下…〇「お疲れ様」〇「ご苦労様」
目下→目上…〇「お疲れ様」×「ご苦労様」

という使い分けを把握しておけばOK。

「ご苦労様」という言葉も、もともとは目下→目上の場合にも使ってOKだったが、「目上の人に『ご苦労』って、上から目線じゃない?」と感じる人もいるはず。
言葉の使い方や捉え方が時代とともに変化したことで、現在は一般的に目下→目上の場合には「ご苦労様」は使わないほうが良いだろう。

基本的な使い分けは以上のことを覚えておきたいが、「ご苦労様」という言葉の代わりに、誰にでも使えるのが「お疲れ様」
では、「お疲れ様」の言い方に、立場によって使い分けはあるのだろうか。

西出氏:
「お疲れ様です」という言葉は、ビジネスにおける挨拶言葉としてよく使われる言葉です。従って、相手が変わることにより、この言葉自体が変わるということはありませんが、大切なことは、何(WHAT)に対する「お疲れ様」なのかを明確に理解した上で、この言葉を伝えることです。

そして、この言葉を使用するときに意識するポイントは大きく2つあります。

1つ目は、相手に応じて、敬語にするかどうかです。
たとえば「出張から帰ってきた上司・部下・同僚」に対しての使い分けとしては…

(1)上司に対して
「お疲れ様でございました

(2)部下に対して
「お疲れ様でした」「お疲れ様」

(3)同僚に対して
「お疲れ様です」「お疲れ様」
気心の知れた同期などであれば、「お疲れ!」でもよろしいかと思います。

大事なことは、言葉を向けられた相手が癒されたり、モチベーションがアップするよう、相手を思いその言葉を発することではないでしょうか。

2つ目は、「お疲れ様」の後に続く言葉です。

(1)上司に対して
「ご出張、お疲れ様でございました。何か、お手伝いすることはございますでしょうか」
「ご出張、お疲れ様でございました。先方様より、御礼のお電話がございました」

など、上司がしてほしいこと、知りたい情報など言われる前に先手で提供できると「デキる人財」と評価される可能性が高くなりますね。

(2)部下に対して
「出張、お疲れ様でした。福岡はどうだった?」
「お疲れ様。商談はうまくいった?」」

など、部下に意識をおいて見守っていますよ、という上司としての優しさを言葉でも伝えるコミュニケーションを取り入れると部下としては、嬉しいと思います。

(3)同期に対して
「お疲れ!今晩、一杯飲みにいく?」などと後に続く言葉を口にすることも良いですね。


現代は厳格な階級社会ではなく、また、そもそも肩書を持たないというビジネスパーソンも増えている。
そんな時、役職に関係なく使える「お疲れ様」という言葉のバリエーションをおぼえておくと、ねぎらいの言葉に続くコミュニケーションがしやすくなるはずだ。

お客様に対しては「感謝の言葉」を

では、たとえば大事な会議でお客様を招いた時「暑い中来ていただいて、疲れたはず…」と思った時にも「お疲れ様です」は使える?会議が終わった後の「お疲れ様」もOK?

西出氏:
こちらは状況に応じて変わります。
来社くださったお客様に対していきなり「お疲れ様」という挨拶言葉は使いません。しかし、会議を共にした場合には「お疲れ様でございました」と敬語を用いてねぎらいの言葉を伝えても間違いとは言い切れません。

ただし「お疲れ様」という言葉は、どちらかというと、社内・内輪間で使用する印象があります。例えば、eメールでは社内の人には「お疲れ様です」と書きますが、社外の人には「お世話になっております」となりますね。

したがって、社外のお客様に対して対面で「お疲れ様」という言葉を使うことに抵抗のある方は、使用しないほうがいいでしょう。

そこで、社外の方には特に「お疲れ様」の代わりに「ありがとうございます」と御礼の言葉を伝えると良いですね。例えば、自社にお越しくださったときであれば「お暑い中ご足労くださり、ありがとうございます」、会議の後であれば「貴重なご意見をありがとうございました」という感じです。「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えられて不快に感じることはないでしょう。


お客様に対して「お疲れ様」を使っていい場面は、“共有の場”を過ごしたか否かがポイントということを覚えておきたい。

西出氏いわく、「ビジネスシーンで相手に『ねぎらいの言葉』をかけるのはモチベーションのアップに繋がり、ゆくゆくは業績や収益のアップにつながる。そうなるように「お疲れ様です」「ご苦労様です」といった、決まった表現ではなく「ありがとう」「助かりました」などの具体的な言葉をかけることで、より良いコミュニケーション・円滑な人間関係を築いていくことが大切」ということだ。

ただし…役職を超えたコミュニケーションはgoodだけれど、最低限「こんな表現は失礼」というものも知っておきたい。

西出氏:
「OK」「了解」などは避けましょうね。

挨拶に関する“もやもやマナー”は、「お疲れ様」の使い分けをマスターすれば解決。
マスターにはあと一歩ですが、今回もお疲れ様でした、キャトウさん。

(漫画:さいとうひさし)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。