千代島瑞希(写真左)
日本時間の15日午前10時、北朝鮮では金日成主席生誕105 年を祝う大規模な軍事パレードが行われました。やはり一番懸念されるのはミサイル開発の動向です。
ここからは今回のパレードに出てきたミサイルについて、軍事評論家の岡部いさく先生と能勢さんにそれぞれの装備について解説していただきます。

能勢伸之解説委員
まずこれは、対空ミサイルですね。

この記事の画像(11枚)

岡部いさく氏(写真右)
「S-200」。新しいものじゃないです。SA-5シリーズですが後部のブースターの先端がちょっと外側に曲がっています。これは分離する時にきれいにはがれるようにという空力的配慮で、古くて曲がっているものではないですし、昔からこの形でちゃんと使われているミサイルです。

能勢解説委員
続いて潜水艦発射弾道ミサイルの「北極星Ⅰ型」です。

岡部氏
トラックが多いからきっと海軍なんですよ。これは、ミサイルと海軍の兵士を見せるためにこの車両に載せているのであって、移動式の発射機に載っているのではありませんね。
北極星Ⅰ型はこないだ撃ったものだけじゃなくてこれだけ何本もあるぞと見せつけている。

能勢解説委員
そしてこれが「北極星Ⅱ型」。

千代島
近くに人がいて、その大きさがわかりますね。

岡部氏
このキャニスター(筒)の中にミサイルが入っていて、いわゆるキャタピラ式の移動発射装置(TEL:テル)の上に載っている。キャタピラだと、ある程度荒れた道のない場所にも移動してミサイルを発射できる。しかもこのTELとセットで何台もあるぞと。

続いては今回、初公開となったもののひとつです。

能勢解説委員
はい、巨大ですね。ただこの移動式発射装置そのものは、以前KN-08やKN-14をむき出しにして軍事パレードで搭載していた8軸16輪の車両、WS51200の改造型。

岡部氏
WS51200は中国製の重量運搬用トラックで、それに似ています。たぶんそれだよねと言われているやつです。ただこのキャニスターに本物のICBM(大陸間弾道ミサイル)が入っているかは、この状態ではわからないです。

千代島
とすると、ただの張りぼて?

岡部氏
この中にミサイルが入っているなら先端の部分がはずれるようになっているはずなので、線が見えるはずじゃないか、それが見えないからただの見せかけかという。
でもたとえ見せかけであっても、ここまで作っているというのは、訓練用のモックアップ、あるいは現在開発用のモックアップの可能性もあるわけです。

能勢解説委員
次は今回初めて見た移動式の発射装置であります…

岡部氏
載っているキャニスターも筒の形や大きさが違っています。

能勢解説委員
7軸でけん引式(トレーラータイプの)移動式発射装置に搭載されています。移動式発射装置の場合、このけん引型というのは取り回しが難しいのではと思うのですが…

岡部氏
確かに。これは後部の油圧式のピストンがあって、TELとして移動のあとミサイルを直立させて素早く発射体制にもっていくことが可能になっていますね。最後部には直立させた時に接地して安定を保つためのアウトリガーも付いている。

能勢解説委員
ただ、なぜわざわざけん引式の車両にしたのかというのがありますね。ひょっとしたら、大型の弾道ミサイルを搭載するのに適した転用ができるような車両が不足しているのかもしれません。

岡部氏
あるいはそういう移動式発射装置の開発がミサイル開発に追いついていない状態か。
次は白いラインの入ったこのミサイルです。

能勢解説委員
これは、おそらく「ムスダン」の移動式発射機の転用だと思われます。
そしてその上に載っているのは明らかにムスダンではないんです。この大きさ、形状からするとKN-08と呼ばれる大陸間弾道ミサイルに似ている。

千代島
16日朝に発射後、数秒で爆発したとされる準中距離弾道ミサイルはこの軍事パレードには出たんですか?

能勢解説委員
出ています。それがこのKN-17というミサイルです。

ミサイルの発射装置は戦車の車体を使ったような装軌式で、上に載っているミサイルは全体的にはスカッド系列の形をしています。
後ろから見た画像を見てみましょう。

後ろの形状はスカッドとかノドンの形状とそっくりであります。
しかも白いコードのようなものが引っ張ってあります。それがミサイルにデータを送り込むためのものではないかと…スカッド系列はそういったものをよく使っています。
そして、このミサイルの特徴は前の方にあるんです。

ここに4枚の三角形の翼があるんですが、これがどうも動くようなんですね。

岡部氏
ミサイル本体との間に隙間があります。そして隙間の真ん中に軸みたいなものが確認できる。ということはこの軸を中心に翼が動くわけです。だから翼が動くことによって、このミサイルは、たぶん落下する時に向きが変わる。

能勢解説委員
それで、アメリカのメディアはこの弾道ミサイルは弾着までに〝機動性がある”と。
ひょっとするとこれは「対艦弾道ミサイル」ではないかというふうにも報じられているんですね。

千代島
対艦弾道ミサイルというのは???岡部さんが書いてくださったイラストで説明してくださるんですね。

岡部氏
はい、対艦弾道ミサイルというのは軍艦に対するミサイル。
弾道ミサイルというのは上の図のように地上や潜水艦から発射して相手の地上目標を狙う。発射した時に飛ぶコースと距離は決まってしまいます。ドカンと打ち上がって、あとは物理法則にしたがって飛んで行く。だから何かの基地、工場、都市といった動かない目標を攻撃するのに弾道ミサイルは使われていた。

ところが軍艦、たとえば航空母艦とかは動き回るわけです。速い場合には時速50㎞くらいのスピードで移動する。ミサイルを発射しても目標は動いちゃうじゃないですか。だから突入してからミサイルの向きを変えて当たるように動いていかなければならない。それができるのが対艦弾道ミサイルというわけですが…

でも本当に軍艦を攻撃するにはまだまだいろいろな問題があるわけですよ。
まず、広い海のどこに狙うべき軍艦がいるか。偵察衛星で船の動きを追いかけてもいい、あるいは飛行機を飛ばして敵艦を捜してもいい。でも北朝鮮にはそういう能力はない…さらに最後にどうやって目標に持っていくかという誘導装置の問題もあります。考えられるのはレーダーがミサイルに付いていて目標に向かうことですが少なくともまだ実験したこともなさそう。

能勢解説委員
これまで失敗した2回の発射というのは、その実験だったのかもしれないです。
ただ、何のために北朝鮮は対艦弾道ミサイルかもしれないものを開発しようとするか?ということなんですが…

岡部氏
アメリカの空母打撃群などが北朝鮮に近づいて行った時に、対艦弾道ミサイルを撃ってくるとなればアメリカ海軍としても北朝鮮のあたりにおいそれと艦船を近づけるわけにはいかなくなってしまうというわけです。

能勢解説委員
その可能性がもしもあれば、日本を防衛するためにアメリカ海軍が日本海にイージス艦を展開させるというのは結構大変なことになるかもしれない…
2回失敗していると言われていますけれども。

(文責:松島 スタッフ:能勢・北原)