今も本格的な漁の再開のめど立たず

沖合底びき網漁師 菊地基文さん:
「網こさえ」が訛って「あみこせ」。来年の準備、来シーズンの準備だな。

福島県相馬市の沖合底びき網漁師の菊地基文さん。

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漁が休みとなる7月と8月は船のメンテナンスや網の手入れを行っている。
海と向き合い続けて今年で20年…

沖合底びき網漁師 菊地基文さん:
一番変わったのは当たり前のことができなくなったこと。今まで普通だった仕事が普通じゃなくなった

かつては200種類以上の魚介類がとれる豊富な漁場だった福島沖。
親潮と黒潮がぶつかる潮目でとれる魚は「常磐もの」と呼ばれ、その品質は高い評価を受けていた。

震災前は2万5000トンの水揚げがあった福島県内の沿岸漁業。しかし、原発事故後は魚の種類を限定して行う「試験操業」が続いている

今はほとんどの魚介類は安全性が確認され、出荷制限は解除されているが、去年の水揚げ量は震災前の16%ほど。本格的な漁の再開のめどは立っていない。

沖合底びき網漁師 菊地基文さん:
もどかしさはあるけど、暗くとらえてたら嫌になってくるし、だから元々浜の人たちの気質かもしれないけど、陽気で楽天家が多くて前向きな人も多いし、自分も極力前向きに

相馬市にある県水産資源研究所。もともとは大熊町にあったが、震災の津波で被災。
職員も犠牲になり、育てていた稚魚や研究データは全て失われた。

あれから8年余り…

今年6月、研究所で育てたヒラメの稚魚100万匹を再開後初めて海に放流した。
特に力を入れているのは“海のダイヤ“といわれる高級魚、ホシガレイの飼育だ。

ヒラメより飼育が難しい魚だが、試行錯誤を続け、今年はこれまでで最も多い11万匹を放流した。

福島県水産資源研究所種苗研究部 川田暁副所長:
震災前の栽培漁業を展開することができればいいなと思うとともに、ホシガレイのような新たな取組が常磐の特産品となってくれればいいなと考えています

漁師や農家を取材

試験操業の日々が続く中、漁師の菊地さんは新たな取り組みを始めた。

生産者と消費者をつなぐ「そうま食べる通信」。菊地さんは編集長として各地の漁師や農家を取材し、年に4回、雑誌を発行している。

沖合底びき網漁師 菊地基文さん:
煮びたしみたいな感じか揚げ煮びたしか。いや~うまいだろうな~

この日は特集で紹介する農家の取材。こだわりのかぼちゃレシピを教えてもらった。

沖合底びき網漁師 菊地基文さん:
生産者の思いとか背景とかそういう生きざまとかを伝えて共感してもらえれば“福島県産”の農作物、魚介類という見方が、そういう(マイナスの)見方よりも強いもの(安心)が消費者に植えつくんじゃないかなと思って

本格的な漁が再開され「常磐もの」が復活するその日まで、漁師としての誇りを胸に、きょうも笑顔で、前進を続ける。

(福島テレビ)

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