担当大臣でさえ直前まで知らない

9日朝、東京・永田町。内閣府がある中央合同庁舎の一室で重要な指標が発表された。
ことしの4月から6月までのGDPだ。
GDPとは“Gross Domestic Product”の頭文字で国内総生産のこと。国内で一定期間内に生産されたモノやサービスの付加価値の合計額を表している。
GDPは、国際連合が定めた基準に沿って各国が計算していて、その国の経済状況を表す指標として最も重視されている。

時には株価までも大きく動かしてしまうこともある数字のため情報管理は徹底されている。
午前8時50分に解禁時間が設定されているのだが、午前8時30分までに記者は発表が行われる会見室に入らなければいけない。
その後、担当者から説明が行われるのだが、ここからは外部と連絡することは一切禁止となる。
事前に数値を知っているのはこの場で説明を行う内閣府の担当部局だけで、内閣府のトップである茂木経済再生担当大臣も直前まで数字を知らない。

消費増税控え、予断許さない状況続く

この日の朝、いつも通り私は会見室の“いい席”を確保するために午前8時ごろ到着した。“いい席”があるのは出口付近。なぜなら解禁と同時に一刻も早く会見室を出て本社に伝えられるからだ。
これまで何度もGDP発表の取材をしてきているが、未だに緊張し、前日の夜はよく眠れない。
午前8時30分、会見室が締め切られると担当者によるGDPの結果概要の説明が始まった。食い入るように紙を見る。結果は…

実質GDPの成長率はプラス0.4%。
この伸びが1年続くと仮定した年率換算はプラス1.8%。
3四半期連続のプラス成長。

「あれ…思ったより…」。私の第一印象はこうだった。
なぜなら事前に出ていた民間エコノミストの平均予測は実質GDPはプラス0.1%、年率換算プラス0.4%で、予測を上回る数字だったからだ。
そして解禁時間の午前8時50分。記者たちが一斉に会見室から我先にと出て行く。私もスマートフォン片手に飛び出し本社に連絡した。
今回の数字を紐解いていくと、GDPの半分以上を占める個人消費は、改元による10連休があったため、旅行やレジャーなどが好調だったことに加え、自動車の新車販売やエアコンの売れ行きが増加したことからプラス0.6%となった。
企業の設備投資も土木など建設業で人手不足解消のための投資が活発だったことなどからプラス1.5%だった。

一方で、輸出は米中貿易摩擦などの影響で、アジア向けの半導体製造装置などが落ち込み、マイナス0.1%だった。輸出の落ち込みを、堅調な個人消費や設備投資がカバーして、全体のプラスに寄与する形となった。
今後のGDPについて、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は
「7月から9月期は、7月が長雨の影響などで不振となる可能性があるが、8月・9月は天候が回復し10月の消費増税の駆け込み需要が高まることで見かけ上はプラス成長になると思われる。本当に厳しいのは10月から12月期で駆け込み需要の反動減、家計のマインド悪化などが懸念される」と消費増税の影響をポイントに挙げた。

茂木経済再生担当相も会見で消費増税について言及。
「10月の消費税引き上げに向けて、経済の実態をきめ細かく分析し、今後とも経済運営に万全を期していきたい。海外のリスクが顕在化した場合は躊躇なく対策を打っていくという方針で臨みたい」。
3四半期連続のプラス成長となったGDPだが、10月に控える消費増税が、今回のプラスに貢献した頼みの個人消費にどう影響するのか、予断を許さない状況は続きそうだ。
次のGDP発表は3カ月後。再び時間と数字相手に格闘する緊張の朝が訪れる。

(執筆;フジテレビ経済部記者 三上紗永)

三上 紗永
三上 紗永

フジテレビ報道局社会部記者 厚生労働省担当