日本語の会話は74%の主語が省略

日本語を学び始めた外国人、または日本で生活している外国人は、日本語には省略が多いと気づいてくるようです。
確かに、日本語の特徴のひとつに、主語や目的語を省くというか、わざわざ言葉にしないということがあります。

例えば、「いってきます」と言うときに「私はいってきます」とは言いませんし、会話中、話題にのぼっているものや人のことを言葉にすることは省略しがちです。会話では74%の主語が省略されているといわれています。

一方、英語には主語や目的語を省略して話すことがないので、英語を母国語とする外国人はとまどうことが多いようです。主語や目的語がないと誤解を生じることが多くなります。お互いにわかっているつもりだったり、話がかみ合わない、ということが起こりやすいのです。誤解が生じないようにするためにも日本語の特性を改めて確認しましょう。

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全部言わない方が簡潔

日本語会話では、場面に応じて正しい情報をクリアに伝えるために、伝えたい情報だけを話します。
例えば、レストランでの注文で、「私はオムライス」と言うと、「私(自身)がオムライス」なのではなくて、「私はオムライスを注文します」の「を注文します」が省略されているのは日本人なら当然理解します。
このように日本語には、状況でわかることは繰り返し言わない傾向があり、繰り返しや無駄な言葉を省く合理的な方法といえます。時間がないときに情報を的確に伝えることができるメリットがあるのです。

全部言わない方が礼儀正しい

電話の声が聞き取れない時につかう表現、「お電話が遠いようなのですが…」は「あなたの声が聞きとれない」ではなく、あたかも電話器のせいで声が聞こえないという表現です。
相手に失礼とならないよう気遣いされた言葉です。
また、お客様に頼む場合は「~ください」のような直接的な依頼表現よりも、「~していただけますよう、ご協力お願いいたします」といった表現の方が使われます。

さらに、「そろそろ時間なので…」や、「その日は予定があって…」といった最後まで言わない文もよく使われます。これらには最後まで言わなくても通じてしまう、最後まで言い切らない方が礼儀正しい(=相手に悪い印象を与えない)という日本語の特徴の表れだと思います。

逆に、ベトナムやロシアは、端折らないでできるだけ全て言った方が礼儀正しいとなるそうです。

多くを語らない謙虚さが良い

「言わぬが花」や「1を聞いて10を知る」のように、昔からおしゃべりではないことが美徳とされてきました。日本人は言葉より行動を重視する人が多いため、雄弁な話し方、説得力のある話し方に重きを置かれてこなかったのです。そのため、間接的な表現が好まれ、聞き手が話し手の意図をどれだけ汲み取れるかのほうに重きが置かれ、現在に至ります。

欧米はその逆で、雄弁で論理的な表現が重要です。

はっきり言わない方が丁寧

「よろしくお願いします」というあいさつは便利でよく使われる表現で、丁寧に聞こえる一方、その表現に意味をもたせる場合は曖昧となることが多いです。

また、はっきり言わない方が丁寧となる表現に「できないわけじゃない」「嫌いなわけじゃない」の二重否定や、「全然いい」「全然だいじょうぶ」といった「全然(悪くなくて)いい」「全然(変じゃなくて)だいじょうぶ」という省略された表現もあります。

省略から生まれた「こんにちは」「さようなら」

日常のあいさつも省略から生まれたものがあります。
「こんにちは」は「今日は(よいお日和で結構です)」、「さようなら」は「さようなら(=そうであるなら)、(またお目にかかりましょう)」に由来します。

以上のような特徴から日本人の特性をも知ることができます。
日本人は、礼儀正しく、謙虚さを好み、丁寧であることを大切にするといえるでしょう。日本語の省略や曖昧さにとまどう外国人がいましたら、このような背景があると説明してみてください。また、外国人と会話するときに普段どのような言いまわしをしているかを振り返ってみるのもおすすめです。

参照:
成山重子『日本語の省略がわかる本 誰が?誰に?何を?』