セールでも始めるの?

テレビCMやインターネット広告に街頭広告など、普段の生活や街には広告があふれている。
こうした中、すみだ水族館の少し変わった広告が目を引くと話題になっている。

それがこちら。

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これは専属のプロのカメラマンが約1時間、お客さんに同行し、思い出の瞬間を写真に残す無料撮影サービス「Aqualbum(アクアルバム)」(現在は予約終了)の広告で、7月上旬から8月上旬まで電車の車内広告として掲載されていた。

しかし、話題になったのは内容よりもその色使いとデザイン。赤と黄色を基調に、「なんと0円」と値段を強調しているところなど、まるで電気屋さんのセールチラシみたいなのだ。

Twitterでもこの広告について「すみだ水族館の広告が電気屋さんの広告みたいで面白い」や「ダサかわいい」などの投稿が見られた。

なぜこのような広告を制作したのか。すみだ水族館に聞いてみた。

狙いはSNSを中心に話題になるため

ーーこのような広告をつくった狙いは?

他施設でよく見かける写真販売サービスに対して、プロが無料で1時間撮影をしてくれるというメリットをわかりやすく伝えながら、SNSを中心に話題化を図るという狙いがありました。


ーーデザインでこだわった部分は?

新サービスの独自価値とお客さまにとってのメリットを、具体的にわかりやすくお伝えするために、イメージ寄りの広告ではなくセールチラシのような便益をはっきりと打ち出す広告フレームを借りたデザインとしています。

ーー反響は?

水族館への直接の反響はありませんが、Twitter等でたくさん投稿を頂いています。細かく読んでいくとクスッとしてしまう要素をいたるところにちりばめているのが人気の要因かと思います。
新サービスが皆さまに受け入れられていることを大変嬉しく思います。大切な方とのお出かけ先として良い思い出を残してもらいたいという思いから生まれたプログラムです。このプログラムがきっかけとなって、一緒にご来場された方との会話が増えたり、距離が縮まることを願っています。

ライバル水族館をPR!?

電気屋さんではなく水族館の広告だと気づくと、内容が気になり、よく読むとクスッとする箇所もあるという計算された広告となっているが、すみだ水族館の攻めた広告はこれだけではない。

「アクアパーク先輩。すみだ水族館がすごいサービスをはじめても友達でいてくれますか?」

こちらも「Aqualbum(アクアルバム)」の広告なのだが、都内のライバル水族館である、アクアパーク品川に向けて語りかけた広告になっていて、7月上旬から中旬にかけて、品川駅に掲載されていた。

また、別の広告では「サンシャイン水族館兄さん、聞いて下さい!わたくし、すみだ水族館の者です。お客様の夏の思い出作りを本気で考えた結果、こんなサービスはじめます。もしあれだったら兄さんも、こういうのいかがですか?」とサンシャイン水族館に語りかけた広告も池袋駅に掲載されていた。

わざわざライバル水族館の名前を出して、しかもその最寄り駅に広告を掲載するなんて、どちらかというとライバル水族館のPRになる気もするが、こちらの広告についても聞いてみた。

「両水族館に掲載のご許可を頂き実現しました」

ーー品川駅と池袋駅にアクアパーク品川とサンシャイン水族館に向けても広告を出していたが、経緯と狙いは?

水族館に限らず他施設でよく見かける写真販売サービスに対して、プロが無料で1時間撮影をしてくれるという新サービスを始めるにあたり、他施設に語りかけるようなメッセージ広告が、プログラムの独自価値を伝えられるのではという着想から始まりました。普段から同じ都市型の水族館として懇意にしている品川と池袋の水族館両館に掲載のご許可を頂き実現しました。


ーーアクアパーク品川とサンシャイン水族館にどのようなことを訴えかけている?

語りかけるようなスタイルをとらせて頂いていますが、何かを訴えかけているわけではありません。

ーーアクアルバムの募集は終了したが再開の予定は?

利用者の方からは大変満足されたという声を多数頂いております。
具体的には、「写真のクオリティが高く、お出かけの記念になるよい思い出を残せた。」「お父さんがカメラ係をしなくてよいので子どもと一緒に水槽を見ることに集中できた。」等広告の話題化に伴い、今回ご用意した枠が全て予約開始初日で埋まってしまい、参加できなかったお客さまには残念な思いをさせてしまっているので、今回頂いたご意見などを取り入れながら、今後定期的なプログラムとして開催できるよう企画につなげてまいります。


ーーすみだ水族館の広告戦略はどのようなものか?なぜこのような少し変わった広告を出すのか?

広告の中で、プログラムを告知することに加えて、SNS上などで話題に上り、水族館自体にも興味を持ってもらえるものにしたいという意図がありました。


ーー今後どのような広告を考えている?

館内のイベントやコンテンツの計画とあわせて、また皆さまに楽しんでいただけるような広告展開ができればと考えています。



電気屋さんのセールチラシ風にしたり、他の水族館を巻き込んだりした結果、すみだ水族館の広告はSNS上で話題になり、本来の目的のアクアルバムも予約開始初日で埋まったということで戦略としては大成功といっていいのではないか。

SNSの普及で広告のアプローチのバリエーションも増えているが、すみだ水族館の次なる広告にも期待したい。

(画像提供:すみだ水族館)

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。