旧日本海軍の料理を現代に復活

広島・呉市で、資料を基に旧海軍の料理を再現する取り組みが行われている。海自カレーに続いて、海軍グルメで地域を活性化しようというリモートイベントが開かれた。

2月、呉市内で行われた自宅で料理を楽しみながらのリモートイベント。今回、皆さんが食べている料理。実はこの料理、旧海軍の軍艦で食べられていた料理を再現したもの。

潜水母艦・大鯨で出されたうなぎのかば焼き
潜水母艦・大鯨で出されたうなぎのかば焼き
この記事の画像(12枚)

呉市にある五月荘。創業、明治34年。日本、最後の海軍料亭と言われている。

“日本最後の海軍料亭”五月荘 広島・呉市
“日本最後の海軍料亭”五月荘 広島・呉市

旧海軍の大規模根拠地、鎮守府が置かれていた呉市は、旧日本海軍にゆかりのある町。海軍料亭とは、どんな店だったのか。

五月荘三代目 呉飲食組合組合長・井口秀一さん:
定義としてはないのですが、鎮守府にあったお店で、海軍さんの御用達のお店という感じのところが海軍料亭と呼ばれてます。うちは潜水艦の方が多かったです。今は本通2丁目と言いますが、昔は元町と言っていた。(なので)潜水艦の元町基地だ、(元町)分校だと言われるくらい、潜水艦の方がいつもおられた

五月荘三代目 呉飲食組合組合長・井口秀一さん
五月荘三代目 呉飲食組合組合長・井口秀一さん

以前の建物は空襲で焼けてしまったが、東郷平八郎元帥直筆の書に日露海戦海戦図など、今でも貴重な品々が残っている。

東郷平八郎元帥直筆の書
東郷平八郎元帥直筆の書

五月荘四代目の池田佳幸さん。当時の海軍の料理を現代に復活させようとしている。厨房で作っているのは、戦艦・長門で作られていた「甘鯛の西京焼き」と「クジラのカツレツ」。

ーーカレー粉が入っているのですね

五月荘四代目店主 池田佳幸社長:
戦艦によっては、カレー粉が入ってなかったりするのですが、これは、戦艦・長門のウェール・スモールカツレツ。クジラの小さいカツという意味になると思うのですが…。戦艦・霧島とか、いろいろ、クジラカツはいろいろなところでやられていたみたいですね

旧海軍のレシピを基に再現された戦艦・長門のウェール・スモールカツレツと、2日間、みそに漬けて作る甘鯛の西京焼き。

戦艦・長門のウェール・スモールカツレツと甘鯛の西京焼き
戦艦・長門のウェール・スモールカツレツと甘鯛の西京焼き

テレビ新広島・矢野寛樹記者:
歯ごたえがあって、味がしっかりついていて、かめばかむほど味が出てくる。グルメだったんですね。海軍の方は…

健康食を兵士に食べさせる「海軍グルメ」

旧海軍の海軍グルメとは、一体どんなものだったのか。

海軍料理研究家・高森直史さん:
グルメというと、ぜいたくというか、美食というか、そのように受け取られますけど。実際には、明治海軍ができた時に、いかに健康な食事を兵士たちに食べさせるか、そこから発した。確かにフルコースで食べることもありましたし、西洋料理をナイフとフォークを使って食べるということもあるのですが、それは、日本海軍が西洋海軍に負けないように、食生活も、あるいはマナーも身につけようと必死でやってた時期があるわけです

こう話す高森直史さんは、元自衛官で、旧海軍料理研究の第一人者。

海軍料理研究家・高森直史さん
海軍料理研究家・高森直史さん

貴重な資料を見せていただいた。舞鶴海兵団 明治41年刊行「海軍割烹術参考書」は、明治時代に海軍が作った料理本。

見ると、西洋料理など随分おしゃれな料理の作り方が掲載されていた。驚くことに、タピオカプリンと書かれた箇所も。

舞鶴海兵団 明治41年刊行「海軍割烹術参考書」
舞鶴海兵団 明治41年刊行「海軍割烹術参考書」

それにしても、料理の工程はかなりくわしく書かれているが、調味料などの分量は、どこにも書いてない。

海軍料理研究家・高森直史さん:
海軍では、昔からあまり細かいことは言わない。まず基本を覚えたら、(あとは)応用でやれと…。だから、あとからできる(料理を教える)海軍経理学校でも、学校では基本を教えるだけだと。あとは、船の中で自由に味付けとか、分量とかはやってよろしいと。基本的には、教科書の中には分量は書いていない。自分で考えろと。そういうことです

海軍料理研究家・高森直史さん
海軍料理研究家・高森直史さん

一見、無責任のようだが、元来、海軍では不測の事態に備えて、「応用を利かせて柔軟に対応せよ」という教えがあり、これもその一環だと高森さんは考えている。

「海軍グルメ」で町を盛り上げる企画も

そんな海軍料理で町を盛り上げようというイベントが企画された。
希望者は、リモートで参加。事前に海軍料理を発送し、呉市内の旧海軍ゆかりの場所6カ所を中継するという大掛かりなもので、解説役は井口さんが担当する。

解説役は五月荘三代目 呉飲食組合組合長・井口秀一さん
解説役は五月荘三代目 呉飲食組合組合長・井口秀一さん

イベントの様子
これは、潜水母艦・大鯨で出されたウナギのかば焼きということですよね。給糧艦・間宮の海軍グルメ、ローストビーフのロールキャベツ。昔の資料を調べると、給糧艦・間宮で作られていたローストビーフのロールキャベツを発見した。甘鯛の西京焼き。これは、海軍割烹術参考書の調理法を基に作られているということで…

給糧艦・間宮で作られていたローストビーフのロールキャベツ
給糧艦・間宮で作られていたローストビーフのロールキャベツ

呉市内の旧海軍ゆかりの場所なども紹介される。

イベントの様子
すごいね呉市…。きょう注目してほしいのは、こちらのめがね橋…

2時間を超えるイベントは、無事終了した。

五月荘四代目店主 池田佳幸社長:
地域のみんなが、お土産物屋さん、食べ物屋さん、観光施設もみんなが一緒になって取り組んでいけば、呉の良さを知っていただいたり、PRにもつながるのではないかと思います

五月荘四代目店主 池田佳幸社長
五月荘四代目店主 池田佳幸社長

旧海軍が残した食文化、海軍グルメ。
さまざまな人たちが参加して、町を元気にする。新たな取り組みが始まっている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。