10%に増税する必要はあるのか?
10月から引き上げられる消費税。
そもそも、なぜ10%に引き上げられるのかー。そもそも、使い道は何なのかー。
こうした消費増税に関する様々な“そもそもの疑問”をひとつひとつ紐解いていきたい。
まずは、なぜ8%から10%に上がるのか。
その答えは、8%のままだと“足りないもの”があるから。
その“足りないもの”とは、年金や医療などの社会保障を維持するための費用だ。
少子高齢化が進んだ影響で、社会保障費はここ30年でおよそ3倍に膨れ上がった。
今年度予算では、一般会計歳出 101兆4571億円のうち、社会保障費は34兆円593億円。
歳出総額の約3割(33.6%)を占めるまでになった。
社会保障の財源は基本、保険料で賄うものだが、保険料だけだと働く世代に負担が集中してしまう。
そこで、政府は税金や国債の発行、つまり借金も充てている。
つまり、政府が支出している公的な費用の多くを、国債発行で賄う“借金頼み”の状態。
政府はそれを、「私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況」だと説明している。
こうした現状を打開して、全世代で負担を分かち合おうと選ばれた手段が、消費税の増税なのだ。
消費税を財源にする3つのメリット
では、そもそもなぜ消費税を財源にするのか。
政府は、主な理由として以下の点を挙げている。
① 景気などの変化に左右されにくく、税収が安定している。
② 働く世代など特定の人に負担が集中しない。
③ 経済活動に中立的。
①について。以下のグラフの主な税収の推移を見ても、所得税や法人税と比べて、消費税はその時その時の景気の影響をあまり受けることなく、比較的安定した税収となっている。
この記事の画像(3枚)②については、消費税は物やサービスを購入する際に誰もが払うので、働く世代だけでなく国民全体で負担を分かち合える。
消費税は、収入に応じて課税されるものではないので、労働意欲を阻害するものではない。
また、貯蓄や投資に課税されるものでもないので、こうした経済活動にも影響を与えにくい。
それが③の意味するところだ。
増税分の使い道は?
では、今回の消費税引き上げ分の使い道は何なのか。
その答えは、“足りないもの”である社会保障費に全額充てられることになる。
ただ今回は、これまでの消費税より使い道が広げられた。
これまでは医療や介護など「高齢者中心」だったが、子育て世代にも拡大し、「全世代型」の社会保障制度へ転換する、としている。
新たに加わった主な使い道を見ていくと、
Ⅰ.幼児教育・保育の無償化
Ⅱ.待機児童の解消
Ⅲ.高等教育の無償化などがある。
Ⅰは、3歳から5歳までのすべての子供たちの幼稚園・保育所・認定こども園の費用を無償化し、0歳~2歳児についても、所得が低い家庭を対象に無償化するとしている。
Ⅱでは、2020年度末までに待機児童32万人分の受け皿を整備、
Ⅲは、所得が低い家庭の子供の大学や専門学校などの授業料を免除や減額する、というものだ。
なぜ増税し、どう使われるのか。
そこを理解した上で、10月以降は、消費税が社会保障制度を支えるためにしっかり有
効活用されているか、納税者として注視していくことも重要だ。
(フジテレビ報道局 経済部記者 日比野 朗)