厚労省も“ブラック”だった
「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」(大臣官房係長級)
「毎日いつ辞めようかと考えている。毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った」(保険局、係長級)
「子供がいる女性職員が時短職員なのに毎日残業をしていたり、深夜にテレワーク等をして苦労している姿を見て、自分は同じように働けないと思った」(退職者)
これは、厚労省の若手職員が行った調査に寄せられた、現役職員・元職員の声だ。20~30代のミレニアル世代で作る改革若手チームが、組織・業務改善に向けて緊急提言を発表した。
その中で、ブラック企業を監督・指導し「働き方改革」の旗振り役であるはずの厚労省の、衝撃の“ブラック”ぶりが明らかになった。
自分の業務量が「多い」と感じている職員は合わせて65%。
その理由は、ほかの省庁と比べて多い国会対応業務や訴訟対応などだ。
突出して多い!?厚労省職員の業務量
根拠として示されたのは、自民党が過去にまとめたデータだ。
内部部局(本省勤務)の職員の定員1000人あたりの業務量は、答弁回数2212回、委員会への出席時間219時間など、どの項目も厚労省がトップだ。
とはいえ、霞が関の官庁なのだから職員の人数は十分足りているのでは、とも思うのだが、国会にはタブレット端末を持ち込めないので、答弁資料を紙で用意したり、議員などへの政策説明(議員レク)を対面で行うなど、非効率的な業務内容にも原因があるようだ。
進次郎議員もナットク 議員レクのオンライン化も
業務改善案としては、会議で机や椅子を並べるような設営業務を外注したり、職員が国民からの電話対応に忙殺され通常業務が滞ることのないようコールセンターの大幅増員といった案が示された。
また、国会業務改革では、デジタル技術導入を提案。
通常は議員への政策説明(議員レク)を、職員が大量の紙の資料を抱えて議員の事務所へ出向いて行っているところを、Skypeを使ってテレビ会議方式で行う実証実験が7月からすでに始まっている。
体験した小泉進次郎議員は、「本当に快適。お互いにとって良いこと」とご満悦。
今後は毎回オンラインレクを希望しているという。
課題は“予算”と“世代間ギャップ”
民間企業ではとっくに導入しているSkypeやスケジューラー、チャットなどのICT技術だが、果たしてスムーズに導入できるのだろうか。
若手チームの懸念は、40~50代の職員がデジタル化に対応出来るのか、また、一部業務の外注など、新たに予算が必要なものについては財務省の堅い財布のひもが緩むかどうかだが、どちらもハードルが高く、すんなり実現できそうにない。
チームに参加している若手職員は「厚労省こそが働き方改革の旗手として範を示さなければならない」と意気込む。
チームを率いる大臣官房人事課課長補佐の久米隼人(36)さんは、「このような報告書は霞が関で初めて」と胸を張る。
「他の省庁の組織改革の参考になれば」とアンケート調査で集まった声を包み隠さず提言にまとめた。
提言を受け取った根本大臣は、「これからの厚労行政を担う若手がこういう思いでいるということは大臣としても力強く感じた」と若手チームをねぎらった。
また、来年度の概算要求に業務改善の項目を盛り込み、若手チームを改革実行のために正式な組織として位置づけると約束した。
“ブラック”体質から脱却し本物の働き方改革の旗振り役になれるのか。これからの厚労省改革に注目だ。