段ボールやペットボトルでファンを自作

夏も終わりに近づきつつあるとはいえ、まだまだ残暑が厳しいが、そんな時期のオフィスの悩みといえばエアコンの“直風”問題がある。

冷房を入れて部屋は涼しくなったものの、吹き出し口からのよく冷えた風が直撃する場所で仕事をしている人は、今度は寒さに震えてしまう、かといって室温全体を上げるわけにもいかず…と悩ましいこの問題。

直接当たらないように様々な工夫をしている会社もあると思うが、そんなオフィスワーカーが思わずうらやましがるようなツイートが登場し、話題となっている。
それが、こちら!



「この時期どんなオフィスでも悩ましいのがエアコンの直風ですよね。それを直接当たらないようにするフィンとかよく売られてますがそれを手作りしてしまう人種がいます。

ええ、弊社のスタッフです。

にわかには信じられませんがこれを手作りしようという発想と技術が素晴らしく頼もしい。(嘘やろ)


というコメントともにアップされた動画には、天井のエアコンの吹き出し口に取り付けられ、くるくると回り続けるファン。しかし、よく見てみると、羽は厚紙、ハブは段ボール、軸はペットボトルでできていて、人の手で一から作られているようであるが、しっかり役割を果たしている。

この自作ファンの出来栄えに、「これ商品化して販売出来ちゃいそうですね」「 創意工夫で何とかしようとする姿勢が素晴らしい」「素晴らしい!最高の経費削減ですね!金一封ものでしょう!」という称賛の声が集まっていて、すでに27万回再生されている。(9月3日現在)

このユニークなツイートを投稿した、松山洋(@PIROSHI_CC2)さんが代表取締役社長を務めるゲーム開発会社・サイバーコネクトツーは、『NARUTO-ナルト- ナルティメット』シリーズ、『.hack』シリーズなどを制作。

そして、自作ファンを作ったのは、百武(ひゃくたけ)みずほさんと田中那智さんの2人の総務スタッフだという。百武さんは社歴15年、田中さんも社歴7年のベテランであり、スタジオの状況や松山社長の考えを理解したうえでみずから率先して行動する、ゲームクリエイターにも負けないぐらい「クリエイティブな総務・人事」だとのこと。

そんな2人による自作ファンで、オフィスの直風問題は無事解決されたのだろうか? そして、2人は経費削減を考え、何でも作ってしまうような“スーパー総務”なのか?
2人を代表して百武さんに詳しい話を聞いてみた。

ゲーム開発のため冷房を弱めに設定しにくい

ーー社内ではエアコンの直風対策を求める声が多かった?

はい。おそらく多くの会社が抱えているように、弊社もデスクの位置によって寒すぎたり、暑すぎたりという“エアコン問題”があります。さらに弊社はゲーム開発を行っておりますので開発機材やPCの熱問題もあり、冷房を弱めに設定しにくい傾向にあります。

ーーファン制作前はどのような対応を取っていた?

これまでエアコンの位置によってエリア分けし、エリアごとに担当者が調整する、冷風機を併用するなど、さまざまな対策はしてきましたが、全員が満足するというのはなかなか難しかったです。

ーーファンの制作に至るまでのいきさつは?

まず、シーリングファンは直風対策になり、さらに節電にも効くという話になるも、全社的な導入コストがかなり膨大になり、結果的に断念することになってしまいました。
しかし、あきらめきれずに調べてみたところ、自作されている人が結構いらっしゃいました。その中で、「自分たちでも作れそうだな」と思った作り方の紹介が目に留まり、「これを参考に作ってみよう」と盛り上がったのをきっかけに、本当に軽い気持ちで作ることにしました。

ーーファンの制作手順は? 使った材料は何?

意外と簡単なので材料をそろえればどなたでも作れると思います。
材料も百均やホームセンターで入手しやすいものばかりです。

1. 350mlのペットボトルを高さ10cmくらいで切断し、2カ所に穴を開けます。

2. あらかじめ用意しておいた角材8本と、厚紙で作った羽とを結束バンドで固定します。

3. 段ボールで直径20cmの円を2つ作り、のり付け。その後、円の中心部分と2.の角材を固定するための部分など、合計17カ所に順次穴を開けていきます。

4. 中心に開けたもの以外の16カ所の穴に結束バンドを差し込み、2.の角材付きの羽をしっかり円形段ボールと固定します。

5. 3.の段ボールの中心部分に開けた穴に鬼目ナットを下から通し、ワッシャーとボルトの付いたねじをそこに差し込むことで、段ボールと鬼目ナットをまず固定します。

6. ペットボトルの口とぴったり同じサイズのベアリングの穴に上からねじを差し込みます。そのベアリングをペットボトルの口の中にはめ込み、ペットボトルの口から突き出す形になったねじを5.の鬼目ナットに入れ込めば、段ボールとペットボトルが固定される形になります(ねじの留めが緩いと、ファンが天井から落ちてきてしまうので注意)。

7. 1.でペットボトルに開けた穴と、ダブルクリップのつまみ部分をナットでしっかり固定。次に、2つのダブルクリップを冷房にしっかり取り付ける(取り付けに失敗すると、ファンが天井から落ちてきてしまうので注意)。


詳しい作成方法はネット上でも調べられます。制作のポイントですが、全体の行程とどのような設計かを把握してから作り始めると効率がよく、どんな役割のどのパーツを作っているか理解して作ると失敗が避けやすいでしょう。

ーーこのファンは試作も含めていくつ作った?

今のものが2号機にあたります。

原材料費は600円ぐらい

ーー制作費用は総額でいくらかかった?

身の回りにあるものも使用したので原材料費は600円ぐらいでしょうか。
材料を購入しに行く時間と交通費、作る時間換算での人件費も加味すると、数千円の初期コストかと思っております。

ーー「買うと1万5千円する」と話したそうだが、自社の経費削減も目的のひとつ?

正直に申しあげますと、そこまでの高い意識ではなく、純粋に(自分の)寒さをなんとかしたいという思いでつくりました。上手くいけばもうけもの、ぐらいのお遊びのノリの方が強かったです。

ーー正直、うまく完成させられる自信はあった?

はい、できると思ったので作りました。でも改良点もたくさんあるので、そんなにうまくできているとも思いません。今の2号機も試運転している段階です。

こうした類の自作の経験はございません

ーー制作にはどの位の時間がかかった? また、いつ頃から作り始めた?

去年の夏、2人でたしか3時間ぐらいかけて初号機を作りました。その時は数日でネジが緩んで落ちてきたので熱が冷めてしまい、そのまま1年放置していました。
それから今年の夏の寒さ(!?)に耐えられず、初号機を改良して2号機を完成させました。

ーーこうした類のものを自作した経験は過去にある?

こうした類のものはございません。
強いて挙げるならテーブルを塗装したり、百均の木材で什器をつくったり、といった簡単なDIYぐらいです。

ーー実制作の上で一番難しかったのはどの部分?

軸をまっすぐしっかりさせるのが難しいかもしれません。

「もっと作ろう」との声も

ーー作ったファンを実際に使用してみてどうだった?

効果はすばらしいです。寒暖の差がなくなりました。もう直風に凍えることもありません。使う前は回っているだけのただの羽かと思っていましたが、部屋の空気をしっかり循環してくれているのですね。作った苦労もあり感動もひとしおです。

ーー完成後の周囲の声はどんなものだった?

思いの外、周りのスタッフが喜んでくれました。「自分たちも手伝うからもっと作ろう」と声をかけてもらえて嬉しかったです。

ーー松山社長がTwitterでファンを紹介したことについて、どう感じた?

失礼ながら、自分が思っている以上に社長はインフルエンサーだったのだと感じました。近くにいるとなかなか分からないものです(笑)。

ーー多くの反響が寄せられたが、どんな感想を抱いた?

想像以上に反響があり驚きました。「身近なオフィス」で「普通は作れなさそうなものが作れて動いている」というのがみなさんの関心を引いたポイントでしょうか。

ーー「自分の会社でも作りたい」という人へメッセージを。

まず自作ですので、既製品と違い、(落下などの)安全性・耐久性の保証はありませんので自己責任でお願いします!
ただ、うまく作れた場合の効果はとてもありますので、DIY好きな方はチャレンジしてみる価値はあると思います。作り方を眺めてためらうより、作ってみる方がおそらくずっと簡単です。失敗しても「ここを改良しよう」などあれこれ話し合うのは楽しいものですし、会社で興味のある人たちとワークショップ的に楽しんで作るとよいと思います。不思議な連帯感が生まれます。
個人的には、そういう意味で経費削減以外のメリットが高いと思っています。


今回は、2人が働く場所に取り付けたということだが、周りのスタッフから「もっと作ろう」と大変好評なようだった。一見作るのに骨が折れそうな自作ファンだが、意外と簡単だそうで、さらに制作を通じて連帯感が生まれるという副産物もあったという。こういった発想や行動力が会社の風通しもよくするのかもしれない。