オフィス街で働いていたり、グルメイベントに行ったりしたことがあれば、もう「フードトラック」のおいしさは体験していることだろう。

自動車などを使った移動販売と言えば、かつては石焼き芋・おでん・ラーメン・ロバのパンぐらいのものだったが、今や和洋中はもちろん、珍しい多国籍料理や、本格的な石窯を車に積んだピザ店、クラフトビールの専門店などバラエティは豊か。

さらにクレジットカードやQRコード払いに対応した便利な店舗もあり、その数は10年でほぼ倍増している。

そんな「フードトラック」が、これからは被災地でも活躍するようになるかもしれない。
防災の日でもある9月1日、日本最大級のフードトラック・プラットフォームを手掛ける株式会社Mellowは、災害時フード支援ネットワークを発足した。

その名はフードトラック駆けつけ隊」!

全ての画像出典:Mellow
全ての画像出典:Mellow
この記事の画像(6枚)

被災地域に行く際に、円滑に「食」の支援を行うことが目的

これは、Mellowがボランティア団体や行政などと協力し、フードトラック事業者による「食」の支援活動をサポートするというもの。

ボランティアとして被災地域などに赴くフードトラックが、円滑に「食」の支援を行える仕組みを構築するという。

Mellowは、これまでTLUNCH(トランチ)という、ビルなどの「空きスペース」と「フードトラック」をマッチングするサービスを展開してきた。

場所と店舗のそれぞれを登録し、適材を適所に展開することで、「賑わい」と「新たな収益」が生まれるとしており、7月時点で約160か所のランチスペースと約660台の店舗と提携している。

今回の「フードトラック駆けつけ隊」についてMellowは、災害時に「あたたかい食事を食べたくても食べられない」というニュースをよく見ることを例に挙げ、「あたたかいご飯が食べたい」という思いと「おいしいご飯をお届けしたい」という思いを繋げることで、より安心して過ごせる社会づくりに貢献する、としている。

温かくバラエティ豊かな食事を被災地に届けることができれば多くの人に喜ばれるのは間違いないだろう。

では、これまでは被災地支援にどんな課題があって、今回はどういうシステムで割り振ることにしたのか?
そして、気になる値段とメニューについても担当者に聞いてみた。

「フードトラック駆けつけ隊」に3日間で100社が賛同

――「フードトラック駆けつけ隊」発足に至った経緯は?

東日本大震災の時に東京で複数社のフードトラック事業者から炊き出しなどのボランティアは出来ないかと相談を受け、被災地側の行政や支援団体にアプローチいたしましたが受け入れていただけませんでした。

その当時は、フードトラック自体の認知度も低く、組織的に未熟であったのも原因だったかも知れません。しかし、多くのフードトラック事業者は、機動力も調理能力もあるので災害時に支援活動しようと思うのは必然でした。

また、辻調理師専門学校との情報交換の中で、料理人の方々も災害時に技能を活かしたボランティア活動は同じような課題があると、個人活動の大変さをお聞きしたこともあり、何かしら「フードトラックの災害時の支援ネットワーク」を構築しなければと思い今回の発足にいたりました。

――これまではフードトラックのボランティア活動は難しかった?


多くのフードトラック事業者は中小規模の事業者で、個々にボランティア活動をしようとしても限界があり、一方 自治体や支援団体などもフードトラックでのボランティアの受け入れ態勢が整わないなど、困難な状況にありました。

また、普通のボランティア活動と違い、「食」を取り扱う為、ある程度の専門知識の有無や実務経験などを、その都度確認するのも難しかったと思います。

――その状況が、今どう変わった?

Mellowでは、モビリティの機動力とITを駆使して「必要なサービスを」「必要な時に」「必要な場所へ」お届けするサービスのTLUNCHを運営してフードトラック・プラットフォームを構築する一方、フードトラック事業者も増え、社会的な認知度も上がってまいりました。

また、以前は私共もフードトラック事業者とのコミュニケーションに時間がかかっておりましたが、ITを活用することで迅速かつスムーズなコミュニケーションが可能となり、今回の取り組みをスタートすることができました。

今後は、この「フードトラック駆けつけ隊」のネットワークを活かし、連携していただける自治体やこの活動をご支援いただける企業様とフード支援ネットワークを共創していきたいです。

――「フードトラック駆けつけ隊」は以前ボランティアをしていたフードトラックも参加している?

フードトラックによるボランティア活動をされた方もいらっしゃいます。しかし、各店がほぼバラバラに活動していた為、資金的にも体力的にも限界があったようです。

またもっと多くの事業者が活動したくてもできなかったと思われます。実際に「フードトラック駆けつけ隊」の賛同者を募ったところ約3日間で100社の方のご賛同をいただきました。

このことからも、多くの有志のフードトラック事業者の力が最適に活かせるよう、さらに賛同いただく企業や連携させていただける自治体などのご協力も得ながら災害時の支援体制が必要だと考えます。

――被災地のどこにフードトラックを送るかはどう決める?

基本的にはMellowが連携させていただく関係各所から被災地側の要望や状況を整理して、フードトラック駆けつけ隊にご賛同いただいた事業者へ情報発信します。その情報を元に、有志でその時に対応可能な事業者を調整して関係各所へ送りだします。

現在すでに100社以上の方の賛同の声をいただいておりますが、コミュニケーションツールで賛同者はお互いに意見を交換することが可能です。

ですので、ゆくゆくは誰かが指示を出すという仕組みではなく、同じ目的を持って自発的に動ける仲間づくりを行ってまいりたいと思っております。

NPO法人や行政などにもコミュニケーションツールに入っていただき、災害時には情報をなるべく早く伝えられる仕組みにしていきたいと考えております。

無料での食事提供を実現したい

――食事は無料で提供するの?

具体的な料金についてはまだ未確定なところが多い状況です。
ただし、災害時に寄付をしたいという方などの賛同を経て無料での食事提供も実現できればと思っております。

――ご飯と味噌汁セットとか、災害時はメニューを変えたりするの?

災害時の状況によりますが、メニュー選定に関しても状況や受入れ側のニーズを考慮した上で調整していきます。

また、フードトラックの強みである「個性あふれる豊かな食事」を考えております。美味しいお料理で少しでも災害時こころがあたたかくなる「食」を提供したいと考えたからです。

「できる」人が「できる」だけの支援を行う仕組みに

――リリース画像を見ると、人材・食材・資金を連携パートナーから支援してもらう?

まだあくまでもイメージの段階ですが…

・「食材」の手配などは豊洲仲卸商店会との連携をする
・「料理人」の知識を持った辻調理師専門学校の卒業生のネットワーク(企画中)との連携をする
・「物資」などは、支援団体に集まる物資やこの活動にご参画いただける企業の商品の活用をする
・「資金」はこの活動にご賛同いただける企業からの支援金やフードトラック事業者からの援助金を用いる…など

様々な座組みが想定できますが、現実可能な取り組みを模索できればと考えております。

今回、賛同いただいたフードトラックの事業者については強制ではなく、できる範囲内でのボランティア活動を行う組織を作っております。あくまでも無理のない範囲で、できる人が、できるだけの支援活動を行う仕組みにしたいと思っています。

災害の状況によっても変わってくるとは思いますが、ご支援金などいただいた場合にはMellowが独自のインフラを活用し、店舗側へ支援する方法を考えております。


発足間もない「フードトラック駆けつけ隊」は、活動の詳細などまだ決まっていないことも多いようだが、喜ばれることは間違いないだろう。

災害は起きないのが一番いいが、これからフードトラックによるボランティアが被災地で活躍すれば、「あたたかい食事を食べたくても食べられない」というニュースが減っていくかもしれない。

「常識が通用しない…いま備える防災」特集をすべて見る!
プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。