ゲームをする時間をコントロールできず、日常生活に支障がでる「ゲーム依存」が若い世代を中心に広がっているという。

なぜ、ゲームにのめりこんでやめられないのか?

1日20時間、2年間、1度も外出しないでゲームに没頭した男性が、深刻な実態を語った。

WHOでも「新たな病気」と認定

オンラインゲームや「eスポーツ」の普及などで拡大する世界のゲーム市場。
日本でも、4700万人以上が、継続してゲームをしているという調査結果がある一方で…

ゲーム依存の患者 滝沢拳一さん(27):
ゲームをやっている時じゃないと生きている実感を味わえない。(ゲームを)1日20時間、24時間とか、寝ず食わず、3日間、5日間やっている日もありました。

ゲームをする時間をコントロールできず、日常生活に支障が出る「ゲーム依存」が若い世代を中心に深刻化しているという。

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WHOは今年5月、「ゲーム依存」を新たな病気として認定。

WHOの担当医師:
ゲーム依存は、ゲームの行動様式の中でみられる特定の変化です。

ゲームを最優先にすることで、学業や仕事など日常生活に支障が出る状況が1年以上続くと、「ゲーム依存」と診断されるという 。

ゲームが「居場所」や「仲間」を与えてくれる

2年前からゲーム依存の治療を受けている滝沢拳一さん、27歳。
勉強が苦手で、「学校に居場所がない」と感じた高校1年の頃からゲームに没頭した。

ゲーム依存の患者 滝沢拳一さん(27):
自分の居場所をつくりたい、自分の生きている証明が欲しいということで、ゲームなら得意なので1位になれるかなと思って、がむしゃらにがんばって。

お気に入りは、敵を倒すと自分のランキングがあがる戦闘型のオンラインゲーム。

滝沢さん:
寝てた?おはよう。準備しますね。

学校や仕事が終った夜が最も盛り上がる時間帯。
取材したこの日も午後9時からゲームを始めていた。

滝沢さん:
みんな体調崩しすぎじゃない?おれもだけど。

スマートフォンのアプリを使い、顔も知らない仲間と会話。ネットだけでつながる仲間とチームを組んで一緒に戦えるのもオンラインゲームの特徴だ。

ゲームをしている最中は、休憩もせず、席を立つことはない。

登録者が200万人もいる人気ゲームの個人ランキングで、2位にまで上り詰めた滝沢さん。20代前半の2年間は、1日20時間、自宅から一歩も出ずゲームに没頭した。

滝沢さん:
知り合いから『またレベルあがったじゃん』と声をかけてもらったり、『きょう何時間育成しているの』と聞かれたときに、『朝からずっとやって夜までやっているよ』と言うと『さすが』と言われるので、そういうのがうれしくてずっと続けているときもありますね。

この日は、ゲーム仲間の体調が悪く、午前0時前に一旦、ゲームを中断したが…。

滝沢さん:

じゃあ、やりますか。

日付が変わるとすぐに再びゲームを始めていた。

滝沢さん:
(1日1回)ログインキャンペーンというのがあって、ここを押すとアイテムゲットになるんですよね。本来1日1回ですが、ポータルスフィア(特別なアイテム)があると1日2回までできる。だから僕、もう1回やるんですけど。

敵を倒すときに使うアイテムを得るため、なかなかゲームをやめようとはしなかった。

小学生に「講習」…自治体・教育現場も対策に

若い患者が中心といわれる「ゲーム依存」。
学校の現場でも、危機感が広がっている。

神戸市にある中学校の調査では、1日4時間以上ゲームをしていた1年生の割合が、1割にものぼったという。

神戸市立大池中学校 西崎渉校長(当時):
朝、調子が悪いと保健室に訪れた複数の男子生徒が、オンラインゲームを深夜までしていたということがわかりました。「やめられなかった」と言っていた。
学校の廊下の洗面台で顔をしきりに洗っている女子中学生をみかけましたので、『どうしたんだ』と声をかけたら『2時までゲームをしていた』と笑いながら言いました。

一方、対策に乗り出した自治体も。

高松市立川岡小学校 山田正校長:
規則正しい生活と反対のことが、全国の小学校や中学校で問題になっています。それはゲーム依存。

香川県は、県内のすべての小中学校に「ゲーム依存から子供を守る」と題したDVDを配布し、その危険性を広めようとしている。

ある小学校では、自由時間が増える夏休みを前に視聴し、ゲーム依存が原因で生活が乱れたり暴力的になったりすることを学んでいた。

DVDを見た小学生:
ゲームをしすぎで病気になったりして、すごくこわいと思いました。

DVDを見た小学生:
親に暴力をふるったりするのはこわいと思ったので、これからは親が決めた時間を守って、気をつけたいと思いました。

専門の病院では、予約電話が鳴りやまず…

治療に向けた医療の取り組みも始まったばかり。
滝沢さんが2週間に1度訪れるのは、ゲーム依存の患者を専門に受け入れている病院だ。

久里浜医療センター院長 樋口進医師:
表情を見ても前は苦虫噛んだような感じだったが、すこし余裕がでてきた感じじゃない?

滝沢さん:
そうですね、気持ち的には余裕が出てきました。前より現実への意欲というか、興味もでてきたなと感じているので。

治療の方法は、医師とのカウンセリングや他の患者とのグループミーティングなどで、「ゲーム漬けの生活では、将来に展望がない」ということを患者本人に気づかせることが目標だ。

久里浜医療センター院長 樋口進医師:
(新規患者の)予約を取る日があるが、その日の朝は、専用回線の電話は為りっぱなしで、2時間で何百という患者さんの予約希望がある。(ゲーム依存患者の増加に)医療のキャパシティが追いついていないのが今の状況。

ゲームに変わる「新しい居場所」を探す

親族の勧めで病院に通うようになって2年。滝沢さんに前進のきざしが見えてきたようだ。

滝沢さん:
職場で求められるマナー、職場で守るべきマナーを勉強しました。

去年、「ゲームばかりする」と自宅を追い出されことをきっかけに、就職を支援する福祉サービスを受けるようになり、外出する機会が増えた。

滝沢さん:
(ゲーム時間は)全然、減りましたね。5分の1になった。(以前は)1日中やっていた。(病院の)先生からのアドバイスは自分にとってプラス、前向きに考えられるので。今後も通い続けて、もうちょっとゲームやネットの時間を減らしたい。

ゲームが生活の中心になってから10年あまり。
「ゲームの世界」に変わる新しい「居場所」を探す日々が続いています。

(関西テレビ)

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