「働きたい専業主婦」は8割超だけど…

「働き方改革」が進む現代。

フレックスタイムやリモートワークの導入など、様々なライフスタイルに合わせた労働環境が整いつつある。さらに「女性活躍推進」として女性の採用比率を高めたり、管理職への登用が促進されている。

そのような中、妊娠・育児層向けのツールアプリやメディアを展開する株式会社カラダノートが「女性が子育てしながら働くこと」に関する意識調査を行った。

この調査は、同社が運営するメディア「カラダノートママびより」のユーザー254名を対象にしたもの。(インターネット調査・2019年7月22日〜28日)
調査の中で、「専業主婦であることで、後ろめたさや罪悪感を感じたことがあるか」という質問に対し、実に40.6%の女性が「後ろめたく感じたことがある」と回答したことがわかった。

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その理由として最も多かったのが「自分がお金を稼いでいないこと(54.5%)」。次いで「周囲のワーキングマザーとの比較(15.2%)」というものだった。

では、専業主婦たちは「実は社会に出てバリバリお金を稼ぎたい!」と思っているのだろうか?

この調査では「社会に出て働きたいと思うか」という問いに68.9%が「いずれ働きたい」、13.4%が「今すぐ働きたい」と回答し、実に82.3%もの専業主婦が「働く意欲がある」と回答している。

そして「働きたい理由」のトップ3は「自由に使えるお金が欲しい(42.9%)」「社会や人とのつながりがほしい(12.2%)」「経済的に自立したい(8.3%)」というものだった。

女性活躍への取り組みには半数が「中立」

8割以上の専業主婦が働く意欲を持っているという調査結果から、これから専業主婦たちは次々と「ワーキングマザー」になり、この「後ろめたさ」を解消していくのかというと、そう簡単ではないようだ。

カラダノートが調査した別の質問を見てみると、「働くことになった場合、障壁になりそうなこと」には「家事育児と仕事の両立(29.1%)」「自分のブランクや希望する条件の就業先があるかどうか(25.6%)」「保活を含む預け先の確保(13.4%)」が挙げられ、ライフスタイルやキャリアに関する不安などの声がある。

さらに、女性活躍に関する取り組みの是非についても聞いたところ、賛成が42.5%・反対が7.1%・どちらでもない人は50.4%という結果になった。

女性の活躍・社会進出を後押しする取り組みについて、実に半数が中立の立場であるという結果。
8割の専業主婦が「働きたい!」と思っている、ということから考えると不思議にも思えるが、それぞれの理由を見てみたい。


【賛成】
男女関係なく心地良く働ける社会になってほしい
「どの職場でも女性が活躍できれば、この先働きやすくなるかもしれないから」

【どちらともいえない】
「働く人が快適に働けるような社会が理想。働きたくない人にまで強要しないでほしい
「どの立場の人も自由に選択ができ、思うような生き方ができるといい」
「子育てだけでは不十分で、仕事をしなければ社会に貢献していないと言われているよう」

【反対】
「家事や育児を頑張ることも立派な活躍」
「家事育児に加えて社会に出て働きなさいというプレッシャーを受けている気分になる
「結局女性の負担が減る訳ではないと感じる」



これらの調査結果から浮かび上がってきたのは、「これから働きたい!」とは思うものの専業主婦たちは不安を抱えていて、その不安を取り除くように見える「女性活躍推進」の取り組み自体が逆にプレッシャーになっている女性も多い、という事実だ。

「専業主婦であることが後ろめたい」という意見は単に経済面の問題から来るものではなく、その背景に「社会に出て働くべき」という“強迫観念”のようなものがあるように思える。

カラダノートに、この調査結果と専業主婦の働き方についてお話を伺った。

これまでは「働く」や「稼ぐ」は、家の外に出ることが前提

――今回なぜこのような調査を?

共働き世帯数が専業主婦世帯数よりも増え、一億総活躍社会の実現に向けた働き方改革や女性活躍推進法にまつわる企業の取り組み、子育て中の女性が働くことをテーマにした報道を数多く目にします。

子育てしながら働くことが当たり前になってきた風潮がある一方で、専業主婦として家庭で働く母親の本音は、なかなか世の中に出てこないと感じていました。

弊社の提供アプリ・WEBメディアのユーザーを通したアンケート調査は、世の中にまだ知られていない子育て層のリアルな声を発信していくことに主眼をおいています。少数派である専業主婦の声を届けることに意義があるのではないかと考え、今回の調査に至りました。


――「専業主婦の後ろめたさ」はこれからどう変化していく?

今回の調査では、後ろめたさを感じる理由として、半数以上が「自分がお金を稼いでいないこと」を挙げており、次いで「周囲のワーキングマザーとの比較」という結果が出ています。

ここでいう「働く」や「稼ぐ」は、家の外に出ることが前提にあるのではないでしょうか。

昨今では必ずしも家の外に出なくとも働いて収入を得るという点で選択肢は増えています。例えば、家事や子育てのハウツーやエピソードなどをSNS投稿することで、インスタグラマーもしくはアンバサダーとして広告・PR収入を得たり、アクセサリーやバッグなどの手作り品をインターネット上で出品して収入を得る方法もあります。また自分以外の子どもの世話を請け負う、子育てシェアサービスやファミリーサポートなどでも収入を得ることは可能です。

“働く”ということにおいて場所や時間を選ぶことがなくなり、その方法や価値観が多様化していくことで、だんだんと専業主婦という概念や“後ろめたい”といった感覚が薄れていく方向に変化していく可能性は充分にあり得るのではないかと感じています。

フリマアプリなどを利用した働き方も
フリマアプリなどを利用した働き方も

専業主婦が囚われる「置いてけぼり感」

――では「女性活躍に関する取り組み」への関心の薄さ・不満の理由は?どんな取り組みが本当に求められている?

一部の意見の中に「一億総活躍社会の中に専業主婦は含まれているのか?」というものがありました。 ここから示すように、専業主婦の方の置いてけぼり感というのがあるのかもしれないと感じました。

その上で「育児が仕事とみなされないこと」や「バリバリ働くだけが活躍ではない」など、家事育児が社会的にも評価されていないことへの不満や、働きたいと思った時に障壁になるものとして挙げられていた上位2つ「仕事や家事育児との両立」や「希望する条件にあった働き方」については、社会や企業側の受け入れ体制が柔軟になることが求められていると言えるのではないでしょうか。

今回の調査で、約2割の「働きたくない」と回答した主婦から聞こえたのは、「外に出て働くよりも子どもと一緒にいたい」「家事育児で余裕がない」という声。

家の外に出なくてもできるものなど仕事の選択肢が広がり、様々な時間・方法で“ワーキングマザー”となることが可能になった一方で、忘れてはいけないのが「仕事をしている」ということが「女性活躍」と必ずしもイコールではない、ということだろう。

多様な価値観が認められ、自由な選択ができること

では、「働かなくてはいけない」という強迫観念ではなく、働ける環境が整ったときに自然と「働きたい」と思えるためには、どんなことが必要なのだろうか。


――女性が「働く」ことへの意識を変えるために必要なことは?

「これが必要だ」と言える答えは1つではないかもしれません。正解ではなく納得解として家庭内で家事育児や仕事のバランスやスタイルを話していくことが必要なのではないかと思います。 女性に限らず、どんな人も「働きたい」と思った時に多様な選択肢の中から選べることが社会や企業に今求められているのかもしれません。


――キャリアとライフイベントの両立のため、企業ができることとは?

弊社は子育て中のメンバーがおよそ6割を占め、手前味噌ながら、子育てしながら働く環境や制度は整っていると感じています(男性社員も含めた産休・育休からの復帰率は100%、全社員の残業時間も月平均20時間未満です)。

制度の一例ですが、通常の在宅勤務に加え、子どもが病気で保育園や学校に行けないとき、看病中の在宅が認められています(わたし自身も2歳の息子の体調不良時に利用し、助かっています)。

弊社では産休育休だけでなく、日々の仕事の調整なども含め、男性社員も女性社員がするのと同じように休みや調整ができる制度や環境が整っているため、それぞれの家庭の状況に合わせて働くことが可能です。

子供や家族を大事にしたいと考える誰もが家庭と仕事のどちらかを犠牲にするのではなく、両方を充実させられるような制度と実態が伴っていることが肝要なのではないでしょうか。


――今回の調査結果を受け、「女性が活躍できる社会」とはどのようなものであるべきと考える?

子育てをしている・していないに関わらず、誰もが希望する人生を歩めるように多様な価値観が認められ、自由な選択ができることこそが一億総活躍社会の実現と言えるのではないかと感じます。



仕事をしないことを選んだ専業主婦が“社会に置いて行かれている”という感覚を持ってしまうような世の中が「一億総活躍」でも「女性活躍」でもないはずだ。どのようなライフスタイルを選ぶかは個人の自由、その中で「必要とされている」と感じられる、そんな社会の在り方が求められている。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。