日本のベンチャーがフォアグラの培養肉を開発

世界三大珍味といえば、フォアグラ・キャビア・トリュフ。
これから訪れる“食欲の秋”を前に、高級食材として知られる世界三大珍味について驚きのニュースが飛び込んできた。

日本のベンチャー企業「インテグリカルチャー」がフォアグラの培養肉の生産に世界で初めて成功したと8月29日に発表したのだ。

フォアグラは、ガチョウやアヒルの肝臓を肥えさせた高級食材で、濃厚な味が特徴で、フランス料理の食材として使用されることでも知られている。

培養フォアグラについては販売計画の目処もつき、2021年には高級レストランへのテスト提供、23年には一般販売を目標としているという。

同社は、「たんぱく源不足問題」がこれからの人類課題として立ちはだかると想定。これを解決するための方法のひとつとして、「大量培養細胞技術」による安価な人工肉の供給を目標として研究開発を進めている。

だが培養と聞くと、単なる代用品で美味しくないイメージをついつい持ってしまう。味は大丈夫? また今なぜ、フォアグラの培養に取り組んでいるのか? 「インテグリカルチャー」の川島一公CTOに話を聞いた。

1ヵ月程度で商品化できる大きさに成長

こちらが通常のフォアグラ、この組織から培養をさせる
こちらが通常のフォアグラ、この組織から培養をさせる
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――フォアグラの培養に挑戦しようと思ったのはなぜ?

培養肉の開発の中では、技術的なハードルが比較的低いということがひとつあります。実は血管や筋繊維を含む臓器などを作るには高度な培養技術が必要となり、弊社もこの技術を開発中ではあります。

その前段階として、私たちが今できる培養肉として、ペースト状で作れるフォアグラに注目しました。筋繊維などを作ることは難しく、今後はこれを組織化するところも目指しています。


――他にも理由はある?

従来のフォアグラ生産と比較して、味や栄養成分の広がりなどを生み出すことができることもあげられます。また、フォアグラは単価が高いという経済的な側面もあります。

調理前の培養フォアグラ(画像:インテグリカルチャー)
調理前の培養フォアグラ(画像:インテグリカルチャー)

――培養ってどうやるの?

主にガチョウやアヒル、ニワトリなどの肝臓の細胞を採取し、その組織片をカルネットと呼ばれる動物の体内を模した独自の培養システムに入れて、増やすという形になります。だいたい1ヶ月程度で、商品化できる大きさに成長すると見込んでいます。


――培養を始める際の組織片の大きさは?

スプーン1杯ほどの組織で、1ヶ月後には数キロの大きさになります。


――開発期間はどれくらいかかった?

およそ2~3年です。

テスト調理したシェフ「コクと甘みがバランス良い」

――開発で難しかった点は?

一番難しかったのは、肝臓細胞の継続的な培養ですね。従来の培養方法ではうまく増えてくれなかったこともあり、安定した状態で順調に培養させていくことが比較的難しい細胞でした。


――現在はどのような段階?

今はラボスケール(研究段階)でフォアグラを培養する技術が揃ったところで、課題はスケール(量産化)ですね。月産で数百グラムから数キログラムと、どんどん生産量をあげていくための技術開発がこれから始まることになります。


――味や食感は?

実は私は、前の世代のものまでしか食べていないんです。今回、貴重な培養フォアグラを調理していただいたシェフは「コクと甘みがバランス良く感じられ、とにかく良い。甘みが優しくふわっと広がる、ピュアで芳醇なフォワでした」などとコメントをされています。

私としては早く量産化を成し遂げて、早くみんなで味を分かち合いたいなと思っています。


培養フォアグラのフランの上に、軽く炙った培養フォアグラを乗せた(画像:インテグリカルチャー)
培養フォアグラのフランの上に、軽く炙った培養フォアグラを乗せた(画像:インテグリカルチャー)

21年のテスト提供では100g約3万円を予定

――販売価格はどれくらい?

21年のテスト提供の際には、100g約3万円で進めています。一部のレストランなどで、テリーヌなどの加工食品として使われることを想定しています。


――フォアグラの次はどのような肉に挑戦?

まだ未定ですが、ヒレなどの培養も考えています。弊社は要素技術が固まったところから、その技術でできる培養肉を作っていくというスタンスなので、まずは必要な要素技術を引き続き開発していくという意識でいます。



市販まではもう少し時間が掛かりそうで、テスト提供では100gで約3万円とまだまだ高いが、量産化されれば価格も下がっていくはず。世界三大珍味のひとつが、気軽に食べられる未来に期待をしたい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。