大阪の大学病院の職員らで作るグループは、岩手県大槌町の子供たちに奨学金を贈る取り組みを10年続けてきた。
多くの若者が、その感謝を胸に復興に貢献しようと歩みを進めている。
東日本大震災で大きな被害を受けた大槌町。
2月7日、町の文化交流センターで開かれた式典に、地元の中高生4人が出席した。
授与者
「心音殿の夢の実現と大槌町の復興を心から祈念いたします」
中高生に贈られたのは、大阪から届いた奨学金。
大槌町の子供たちが、夢の実現のため勉学に励むことができるようにとの思いが込められている。
大阪市立大学 荒川哲男 学長
「本日、奨励賞を受賞した学生には、特にこれから元気に明るく笑顔で大槌町を盛り上げていっていただければありがたいと思います」
「近未来の大槌町再建に向けて羽ばたけ」、そう名付けた奨学金を贈ったのは大阪市立大学医学部附属属病院の職員や学生によるボランティアグループ「なにわすまいるず」。
「なにわすまいるず」は東日本大震災の直後から、大槌町に物資や義援金を届ける支援活動を続けてきた。
奨学金には、医学生が街頭で集めた募金や、病院内の食堂で販売した復興支援メニューの売り上げの一部が充てられている。
大槌高校2年 中村有沙さん
「将来は人を癒せる職に就きたいと考えています。そのため今後、勉強をがんばっていきたいと思います」
奨学金は1人10万円。
支援を受けるにあたり、中高生たちは大槌町をどんな街にしたいか、そのために自分は何を頑張りたいか、作文で伝えていた。
大槌学園8年(中学2年に相当) 黒澤心結さん
「自分たちのために色々支援してくださってありがとうございますと言う気持ちでいっぱいです」
大槌高校1年 河合光さん
「魚屋を継いで、大槌の新巻鮭とかを全国に広めていきたいです」
大槌高校2年 浅田心音さん
「将来の夢はトリマーになりたいです。トリマーになって大槌に戻ってきてみんなを笑顔にしたいなと思っています」
2012年から毎年続けられたこの支援により、今回を含め28人の中高生が夢の実現に向け歩み出した。
大阪市立大学 荒川哲男 学長
「他の地域からも観光客が集まるような、そういう街にしていただければうれしい。コロナが収まったらぜひ訪問させてください」
東日本大震災では、津波とその後の火災で町の中心部が壊滅した大槌町。
あれから10年。
かさ上げされた土地には住宅や商店が並び、町はようやく賑わいを取り戻しつつある。
4年前に再建を果たした菓子工房「エルマーノ」。
実家でもあるこの店で、パティシエとして働く阿部華奈さん(23)も、奨学金を受け取った一人だ。
阿部華奈さん
「震災で家を流され、進路をどうしようかと悩んでいるときに奨学金の話を聞いた」
幼いころから、パティシエである父の背中を見て育ったという華奈さん。
高校卒業後、奨学金で専門学校へと進学することで、震災で諦めかけていた夢を、かなえることができた。
阿部華奈さん
「奨学金をいただいて本当にありがとうございます。お客様を笑顔にできるパティシエになりたいなと思って、仕事を毎日一生懸命がんばっていきたいと思います」
震災から10年。
若者の未来を支える奨学金の贈呈は、今回で区切りを迎えることになった。
しかし、大阪と大槌との絆、そして後押しを受けて成長した若者たちの力は、これからも被災地の発展を支え続ける。