押収したコピー商品1000万点
この記事の画像(10枚)東南アジアのタイ・バンコク郊外で9月12日、国内で押収された模造品を一斉に破壊するイベントが開催された。各国の外交団や国内外のメディアが招待されたこの式典では、破壊される対象の大量のコピー商品が積み上げられた。
その種類は多種多様で、シャネルやルイ・ヴィトン、ロレックスといった高級ブランド品から、偽ウイスキー、偽タバコなどの嗜好品のほか、偽エンジンオイルまで。その多くは一見して「ニセモノ」と判別できるものだったが、中には本物かどうか分かりにくいものもあった。
目的は「再び出回らない」ため
模造品を破壊するイベントではタイらしい派手なパフォーマンスも行われた。商務相自ら運転するロード・ローラーでコピー商品を何度も押しつぶしたり、参加者が一斉に金色のハンマーで叩いて壊したり、巨大な裁断機を使って切断したり…。
一見楽しげなイベントではあるが、コピー商品による実害は深刻だ。2018年にタイでの押収は計1085万点。摘発件数も7000件近くで、推定被害額は日本円で20億円以上にも上る。日本企業の商品を模したものもあり、今回破壊された中にも、キヤノンの望遠鏡やトヨタの自動車部品、ハローキティなどのキャラクター商品、イッセイミヤケのバッグなどのニセモノが数多く含まれていた。
こうした知的財産の侵害は日本企業にも大きな損害を与えている。知的財産保護の取り組みを強化しているタイ政府はこのような「破壊イベント」を通じて、こうしたニセモノが再び市場に出回らないよう、処分する様子を定期的に公開している。
ニセモノはどこから・・・?
実際にバンコク市内のマーケットを歩いてみると、高級ブランド品のコピー商品を見つけるのは簡単だ。有名な観光地のマーケット「パッポンストリート」に並んだ露店でも堂々と陳列されている・・・これらは一体どこから来ているのだろうか。
実はタイで出回っているニセモノの9割は「中国製」とみられている。タイは中国とは国境を接していない。しかし近年、中国と国境を接する隣国カンボジアやラオスとの陸路が開けつつあることや、中国が提唱する「一帯一路構想」などで国境を超えた開発計画が活発に進められていることもあり、中国からの陸路によるコピー商品流出が急増していると考えられている。
反社会的組織の資金源に?
タイへの流入増加の背景には、中国国内の事情もあるようだ。JETROバンコクの加藤範久・知的財産部長は「中国でのコピー商品取り締まりが強化されていることにより、徐々に東南アジアに入ってきている」と指摘する。中国で販売できなくなったものが国境をすり抜け、大量にASEAN諸国に流入してきているのだ。
最近は店頭ではなくインターネット通販でのニセモノ販売も増えていて、真贋が判別しづらいケースも増加している。またタイに来る日本人観光客が、こうした偽ブランド品を冗談半分で購入してしまうケースもある。しかしこれらに安易に手を出すのは危険だと加藤氏は指摘する。
JETRO加藤氏
「模倣品を作っているのは、例えば中国の反社会的組織みたいなところと繋がりがあるとも言われている。模倣品を買うこと自体、そういう組織に、ある意味『資金提供』する行為になってしまう」
こうしたコピー商品の流通を野放しにすることや、購入することが結果的に反社会的勢力に資金提供をすることにつながるという実態は、旅行の際にぜひ留意しておきたい点である。タイ政府は今後も国境での水際対策や国内での摘発を強化していく方針だ。