あなたは、事業のリーダーや上司に不満がないだろうか?
「別の部署の○○さんならよかったのに」とか「ソフトバンクの孫さんならもっとうまくいく」とか、働いていたら誰もが考えたことがあるだろう。
実は、そんな望みをかなえてくれるかもしれない、新たなサービスが登場している。

出典:カーマンライン株式会社(全て)
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その名は「シェアボス」。
内容を一言でいうと「上司のサブスクリプション」で“おそらく日本初”のサービスだという。
「シェア」とか「サブスク」とか、よく聞くカタカナが並ぶが、どんなサービスか説明しよう。

月額固定で上司入れ替え放題!

「シェアボス」が公式サイトをオープンしたのは今年5月13日。
9月12日から、月々一定の料金で「ボス」に働いてもらえるサブスクサービスをスタートした。
現在プランは全部で5種類ある。

・月額20万円で月2回まで「ボス」を選べる「プランS」
・40万円、4回の「プランM」
・80万円、8回の「プランL」
・600万円、150時間まで選び放題の「ボスライト」
・1000万円、300時間まで「ボス」を何人でも選び放題の「ボスホ」


まるでスマホの料金プランみたいだが、気になるのはどんな「ボス」がいるのかだろう。

公式サイトで「ボス」の職歴を見てみると、Google、マイクロソフト、docomo、IBM、東芝、サイバーエージェント、GREE、DeNA、GMO、野村総研…など有名どころがずらり。
そういった企業で、経営・営業・広報・ゲーム・マーケティング・AIなど、様々な分野を経験したデジタル系人材を中心に、実績と知見豊かな人々が「シェアボス」に掲載されているという。

「ボス」のプロフィールは、ウィキペディアやまとめサイトのような形式で掲載されているが、一般公開していない「限定公開ボス」もいるそうだ。

企業が「ボス」をオーダーすると、「シェアボス」のディレクターがスケジュールなど各種調整作業をサポート。
月の上限回数を超える場合は、別途料金で追加が可能だという。

「シェアボス」によると、彼ら「ボス」は各業界の第一線で活躍した人材だからこそ意思決定の説得力に長け、広い視野を持つなどのメリットがあるという。
新たな事業に乗り出す場合などで「シェアボス」を活用すれば、未経験な状態で模索するより、成功率の向上、リスクの軽減、スピードアップなどが期待できるとしている。
さらに、もしオーダーした「ボス」が社風やプロジェクトに合わなければ、プランの範疇で別の人に代えることができる

月1000万円の「ボスホ」などはかなり高額に思うかもしれないが、「シェアボス」の調べによればコストは大手戦略コンサルに依頼する場合の半額以下だという。

こんなサービス聞いたことない。
一体どこから着想を得て、どんな企業が「ボス」を依頼しているのか?そして、もしそのプロジェクトが失敗したら「ボス」は責任をとってくれるのか?
また、逆に自分も「ボス」として仕事を受けることができるのか?
いろいろ気になるので、「シェアボス」を運営するカーマンライン株式会社の許直人代表に聞いてみた。

社会のため“若いハイクラスデジタル人材”を野に放ちたい

カーマンライン株式会社 代表取締役 許直人氏

――なぜこんなサービスを思いついた?

理由は大きく分けて2つあります。
1)企業の意思決定に関与するサービスを作ることで日本経済の発展に貢献できると思った。
2)優秀な「個」にスポットライトが当たる世界を作りたかった。

終身雇用が崩壊し、人材の流動化が進む中、「個」が生きていくためにはこれまで以上にブランド化が必要です。
「君の会社じゃなくて、○○の名刺出して」ということがあるように、これまでの日本社会では「個」よりも「会社の看板」が重視されてきました。

個人がその実績や能力、ひいては仕事感やスタイルまでオープンに出して、蓄積することでブランド化できたら…
発注する方も安心でミスマッチも減り、フリーランスも苦手な営業に時間を割くことなく、高い手取りを実現し、みんな幸せになれるんじゃないかと考えました。

――「おそらく日本初」としているけど海外にもない?何を参考にした?

直接的な類似サービスはないですね…。
世界全てを見たらわからないのですが、欧米ではちょっと知りません。
アメリカはそもそも人材が流動的なので、わざわざサブスクリプションと銘打つ必要がないのかもしれません。

私がサラリーマン時代に事業責任者をやっていた「NOREL(自動車のサブスクリプションサービス)」の経験はそのまま活用しています。

少子高齢化もあって、比較的若いハイクラスデジタル人材は「希少な資源」ですし、需要も旺盛なので、企業が「雇用」によって社内に縛り付けておくよりは、野に放たれた方が社会全体としてみたらよいことなのだろう、という漠然とした思いがあります。

――人材派遣やコンサルとはどう違う?

コンサルとの違いは、「実業をやってきた人たち」が中心になっている点です。
コンサルは、調査とそこから導き出される戦略設計は経験豊富ですが、実際にその戦略を実施した人はいません 。
ですので、コンサルと比較して「実業をやってきた人たち」ならではの強みがあります。
「実業をやってきた人たち」は、組織のマネジメントや、投資家・経営・社員間の政治的・感情的な駆け引き、市場、ITがわかります

人材派遣との比較では、「スペック」と「契約」の違いがあります。
人材派遣は派遣契約ですが、「シェアボス」は業務委託契約が多いですね。

「どのボスがいいか全く分からない」くらいの事業に向いている

――「シェアボス」は、どんな企業に向いている?

まず、シリーズA(企業がVC出資を受ける初期段階)からレイターステージ(収益化実現段階)のベンチャー・スタートアップです。
実際、登録している「ボス」はこのクラスの企業からお声がかかることが多いです。
自分たちで手探りでやるより、一度経験している人が「逆算でプロセスを構築」すると3倍早いと思います。

次に、新規事業にトライしたい巨大企業です。
今どきの新規事業で、デジタルが関わらないものはないといっていいです。
ただ外注を頼むだけでは、情報格差でぼったくられます。詳しい人を身内に置くだけでコストが何分の一にもなります。

そして、投資家です。
買収や事業継承で手に入れた事業をデジタライズして企業価値を上げて転売する目的や、VC・商社などが投資・出資する子会社のテコ入れという目的に、「ボス」を派遣することが考えられます。
これは、コンサルも活躍する分野なのですが、システムのIT化やデジタルマーケティング、経営改善などの領域では「ボス」人材が大活躍できます。

――企業は「このボスがいい!」と指名するの?

これまで指名されたケースは少ないですね。
「○○な人を探しているんですけど、誰がいいですかね」みたいなざっくりした相談を受けて、こちらから何人か「ボス」のレジュメと推薦利用を伝えてアサインに至る、みたいな感じです。

サブスクリプションという強みを最大限に活用するには、「誰がいいのかすら全くわからない」くらい、その分野の知見がない方が、手当り次第にいろんな可能性を試すことができるため、メリットが大きいのではないかと思っています。

ボスになる人…年収900万円以上くらい

「シェアボス」は企業からの依頼を受け付けているだけでなく、同時に「ボス」の募集も行っている。
「ボス」として公式サイトで紹介されるメリットは3つあるという。

1、自分を指名して仕事を依頼される状況を作る「自己ブランド化」
2、自分では聞きにくい満足度や要望を「シェアボス」がクライアントに伺うので「相性 / 期待値のコントロール」がしやすい
3、企業独立後も「ボス」同士の「横のつながり」で新たな人脈が作れる

我々も希望すればボスになれるのだろうか?
どんな人がボスになっているのか聞いてみた。

――ボスになるのは、どんな人?

「マインド」「スキル」の面を分けて説明します。

まず、自分の力を試したいという「マインド」のある人
組織の中にいると、多かれ少なかれ自分の意思を殺すことになりますが、そのリミットを外して、「力は小さくても、自分で決定したい」という人。
ちょっと伝え方が難しいんですが、サラリーマンのようにどんな仕事でも断れない状態ではなく、仕事によって断れる個人商店のような感じでしょうか。
次に、会社員でいるメリットが薄れてきたのでもっと稼ぎたいという人
感覚的には年収900万円以上くらいでしょうか。
サラリーマンで1000万円超えるより、個人事業主や一人法人の方が節税もできるしQOLが高いと考える人。
そして、会社員でいてもこれ以上、上に登れないので独立したいという人

「スキル」面では、まず上場企業やベンチャーで客観的に分かる成果を出した人
そして、デジタルビジネスにおけるスタンダードなスキルと知識を持った人
上場企業のハイクラス人材はITに弱い人も多く、「シェアボス」でなくても仕事がたくさんあるでしょうから、今後このあたりは登録を厳しくしていこうと思っています。

――「ボス」って普段は他の仕事をしているの?

大きく2パターンあると思います。

まず、「サラリーマン 兼 フリーランス」
この人達は、空き時間「シェアボス」で働きます。会社の雇用契約も裁量労働だったりします。
このパターンは、サラリーマンの立場や信用力と、フリーランスの手取りの良さを両立できるので会社が認めてくれたら理想的な働き方だと思います。

もう一つは、「フリーランスとして複数社で仕事」をするパターン。
この人達は、自分の仕事量を自分でコントロールします。ポートフォリオ・ワーカーとも呼ばれていて、「この仕事は稼ぐための仕事、この仕事は好きだから金にならないけどやる、この仕事はスキルアップ」というような感じです。

――「ボス」は何人いるの?

100名近いです。

――いわゆる「プロ社長」や「プロ経営者」とは違う?

そちらは「就任契約」だと思うので、「業務委託契約」の多い「シェアボス」とはちょっと毛色が違うかもしれません。

成果が出なかったらボスが責任を取る?

――ところで「限定公開ボス」ってなに?

ここはホントに色々あります。
例えば…
・エンジニアなどの属性なのか恥ずかしがり屋な人
・勤め先の会社が厳しく、おおっぴらにできない人
・会社を売却したばかりでロックアップなどの契約(一定期間株を売れない契約)があり、報酬が受け取れない人
・特定の仕事しかやりたくないから無駄に人前に出たくない人

――「ボス」の給与体系は?

「人月単価」があって稼働分だけ支払うシステムです。

――成果が低かったら「ボス」が責任を取る?

契約上の話ですが、「請負契約」とは異なり成果には責任を持ちません
損害賠償責任はありますが、受け取った賃金を上限とした直接的被害の額が上限となります。

ただ「ボス」は「自分の看板」という契約以上に強いモチベーションを持っています。
有名な「ボス」は、仕事で不義理をしたり、失敗すると、その噂がすぐに業界で広がり次の仕事を探すことが難しくなります。
コンサルやSIerが、どれだけ仕事を失敗してもその情報が外に出ないのとは対象的です。
この力学により、ボスは「責任を持てない仕事は受けない」というスタンスが自然に生まれます。

――でも企業側は短期間で結果を出さないと、満足しないのでは?

企業側は当然結果を求めます。
社員や取締役と違い、契約期間の短いボス達は、クライアントの期待値を下回ればどんどん切り替えられるのが普通です。
単価が高い分、流動性というリスクを背負っているとも言えます。

ただ、これもボスならではかもしれませんが、「それやっても多分儲かりませんよ」「それ意味ないですよ」と言う話をすることがよくあります。
会社員って、普通上司の決定には逆らえないですよね。
ボスは、下手な仕事を受けて結果を出せないと自分の信用が下がるので「今のままじゃ無理です。こうしてください。それができないならこの仕事は受けられません」と、はっきり言うことが多いのです。

戦略が良くても現場の実行レベルが低かったり、逆に現場は優秀で実行レベルも高いのに戦略が悪くて台無しだったり、うまくいかない理由は様々なので、そこを俯瞰できるのがボスの強みかもしれません。

――カーマンライン株式会社でもシェアボスを活用している?

私がシェアボスとして社外に出てますね。
大企業は、説得するより事例を見せる方が話が早いので積極的に出るようにしています。



ちなみに許代表によると、月1000万円の「ボスホ」と600万円の「ボスライト」は、ほぼ冗談だという。
ネーミングについては、やはりスマホの契約を真似たそうで、新規サービスは「それが何なのか」理解してもらうのが最も大変なので、スマホのプランに倣ったそうだ。

上司入れ替え放題とは斬新な発想で一体どういうことかと思っていたが、取材をしてみると、なるほどと思う部分も多々あった。今の上司に不満のある人、新規事業に不安がある人は、このサービスを検討してみてはいかがだろう。