世間は秋の運動会シーズン。学校行事の一大イベントを前に、徒競走で早く走れるだろうか、お弁当の中身は何だろうかなどと、期待に胸を膨らませる子どもたちも多いだろう。

実際の打ち上げ花火は色が付いていないことはほとんど(画像はイメージ)
実際の打ち上げ花火は色が付いていないことはほとんど(画像はイメージ)
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そんな運動会において、開催当日の朝に花火を打ち上げる風習があるのをご存じだろうか。天候などを判断して「決行」なら打ち上げ、「順延・中止」なら打ち上げずに連絡網などが回ってくるというシステムで、地域によっては「のろし」とも呼ばれる。

この風習は地方を中心に行われているようで、地方出身の筆者も経験している。運動会当日が微妙な空模様でも、朝に「パーン!」という音が聞こえたら「ひゃっほい!」と喜んだものだ。

しかし、この花火を打ち上げる風習が、なくなりつつあるという。

花火の打ち上げ音が「騒音」に!?

その理由とは、なんと花火を打ち上げる際の音。
地方自治体へ苦情を訴えるケースもあり、例えば、千葉・富里市には「睡眠時間が不規則な人にとって、大音量の花火は騒音にしか思えません」、福島・福島市には「事前にチラシやポスターで告知するなど他の方法を考えられないでしょうか」などの意見が寄せられている。

2018年、福島市に寄せられた意見
2018年、福島市に寄せられた意見

このような背景もあり、2019年福島市では、以前に苦情を受けた地区にある小学校2校の花火が取りやめられた。福島市教委によると、これまでは午前6時に打ち上げていたが、苦情内容を知った学校側が電子メールでの連絡に切り替えたという。

それではなぜ、花火が「騒音」と捉えられてしまうのだろう。

そもそも運動会の打ち上げ花火は、保護者が準備などに余裕を持てるよう、午前6時ごろに打ち上げられることが多く、広範囲に伝わるように炸裂音も大きめだ。一般的な人からすれば朝早く、夜勤明けの人からすればこれから眠ろうか...というときに、轟音が聞こえてくることになってしまう。

緊急連絡用のシステムを活用する自治体もある

こうした影響もあってか、近ごろは花火から別の連絡手段に移行する流れもある。

北海道・帯広市では、2014年ごろから花火の騒音を指摘する苦情が目立ち始めた。帯広市教委によると、花火を打ち上げるかどうかは学校個々の判断で、広報チラシなどを通じて町内会に理解を求める学校もあるが、打ち上げを辞める学校もあるという。

音に敏感な人は「騒音」と捉えても仕方ないかもしれない(画像はイメージ)
音に敏感な人は「騒音」と捉えても仕方ないかもしれない(画像はイメージ)

その際の代替手段となっているのが、市が連絡網として提供する「帯広市子供安全ネットワークシステム」。もともとは、緊急時の連絡や不審者情報などを保護者間で共有するために構築されたものだが、登録されたアドレスに一斉送信できる特徴を生かして、ここ数年は運動会を決行するかどうかも伝えているという。帯広市教委の担当者は「市内でも以前は100%の学校が花火を上げていた。そう考えると、花火を辞める所は増えていると思う」と分析した。

BGMや練習音まで配慮する時代に

このほか、東京23区の複数の教育委員会にも話を聞いたが、都内ではそもそも、運動会の決行を告げるために花火を打ち上げることがほぼないという。理由は近隣住民への配慮といい、教育委員会側が制限しているわけではないが、各学校が自主的にメールやウェブサイトなどで通知しているとのことだった。ある担当者は「運動会のBGMや練習の音ですら、地域に配慮して小さくする学校もあります。そういう時代なのかもしれません」と話した。

静まり返ったグラウンドだらけになると、少し寂しい気もする(画像はイメージ)
静まり返ったグラウンドだらけになると、少し寂しい気もする(画像はイメージ)

決行の花火がなくなりつつある背景として、代替手段が以前は電話の連絡網で次の人に回すという方法しかなかったが、今はメールでの一斉送信やウェブサイトでの通知など手間がかからなくなったという側面もあるだろう。

ただ、運動会と打ち上げ花火の在り方を巡ってのネットでの議論を見てみると、「子供たちが一生懸命頑張る日なんだから」「好きなので無くなると寂しい」などと、今回の風習に肯定的な投稿が目立った。
音に敏感な人への配慮などは考えなければいけないだろうが、個人的には花火が打ち上げられなくなると、運動会の風物詩の一つが失われてしまう気もする。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。