「消費増税」を機に関心高まる“ビール”が

10月1日から8%から10%に引き上げられる消費税。
今回の消費増税が、2014年に5%から8%に引き上げられた時と大きく異なるのが、『軽減税率』という制度の存在。
軽減税率制度が導入されることで、「8%」と「10%」の2つの税率が存在することになる。その内容については、「複雑」「線引きがわからない」など戸惑いの声が多く聞かれる。

軽減税率制度が導入され、消費税率が8%に据え置かれる対象品目は大きく分けて次の2つとなる。
① 酒類と外食を除く飲食料品
② 週2回以上発行される新聞

国税庁HPより
国税庁HPより
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ここで今回注目したいのは「酒類」。
「酒類」は軽減税率の適用対象“外”となり、消費税率が10%となる。お酒好きの中には肩を落とす人もいるだろう。

しかし、“ビール”とうたいながらも消費税率「8%」に据え置かれる飲料がある。
それがノンアルコールビールなどの「ノンアルコール飲料」だ。
軽減税率が適用されない「酒類」は、酒税法で「アルコール度数が1%以上の飲料」と定義されている。
一方、「ノンアルコール飲料」は“飲食料品”の扱いとなるため、軽減税率が適用され、8%のままなのだ。
調査会社のアンケートによると、「消費増税後、軽減税率の適用対象となるノンアルコール飲料の飲用は増やしたいか」という質問に対し、「飲用頻度は増えると思う」と回答した人が44.5%と、およそ2人に1人という結果となった。消費者の関心も高まっているとみられる。

サントリーノンアルコール飲料レポート2019
サントリーノンアルコール飲料レポート2019

健康志向に応える「ノンアル」開発競争!

そうした関心の高まりなどを踏まえ、ビールメーカー各社は、新商品を出すなど「ノンアルコール」カテゴリの強化に乗り出している。
近年の健康志向の高まりから、「〇〇を減らす」などの「機能性」を持った商品の提案が増えているのも特徴だ。

サントリービールは、「内臓脂肪を減らす」という機能性表示食品のノンアルコールビール「からだを想うオールフリー」を7月に発売した。ノンアルコールビール飲料に対する健康ニーズを充足し、市場のさらなる活性化を図るとしている。
キリンビールは、まだまだ市場拡大の可能性があるとして、「お腹まわりの脂肪を減らす」という機能性表示食品のノンアルコールビール「キリン カラダFREE」を10月に発売予定している。
さらにサッポロビールも「尿酸値を下げる」という機能性表示食品のノンアルコールビールを開発中であるという。
また、アサヒビールはノンアルコールビール「アサヒ ドライゼロ」の販売が好調に推移。2019年1月から6月の販売実績は前年比105.2%と伸びているとして、8月には新商品「アサヒ ドライゼロライム」を期間限定で発売するなど、引き続き注力していく考えだ。

ノンアルコール飲料市場は「ドル箱」?

各社が続々と「ノンアルコール」カテゴリの強化に乗り出す理由は、軽減税率の適用だけではない。
実は、ノンアルコール飲料市場は、2019年には前年比103%と伸長。
市場規模は10年前と比較して4倍以上になると推定されるなど、好調に推移している。
しかし、飲用者はビール類に比べると少なく、まだまだ市場拡大の可能性がある。
いわゆる「ドル箱」なのだ。
こうした背景から、各社は主力の「ビール」を強化しつつ、「ドル箱」である「ノンアルコール」カテゴリのさらなる市場活性化を目指している。

サントリーノンアルコール飲料レポート2019
サントリーノンアルコール飲料レポート2019

「安く」「美味しく」「健康に」という、3度美味しい「ノンアルコールビール」。
各社の開発競争が進むなか、増税を味方にさらに成長できるのか、注目される。

(フジテレビ報道局 経済部記者 入戸野 綾)

入戸野 綾
入戸野 綾

元フジテレビ報道局 経済部記者