アメリカで中絶を禁止する法律 各地で反発の声

アメリカ各州で次々と成立している「人工妊娠中絶を禁止する法律」
これを受け、各地で反発の声が広がっている。

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イタリアのファッションブランド、グッチがローマで行ったショー。

背中に大きく“MY BODY MY CHOICE(私の体のことは私が決める)”というメッセージが入ったジャケットや、子宮をモチーフにした刺繍がほどこされたドレスなどが発表された。

ショーに込められた、女性の妊娠や出産に関する自由な選択を強く訴えるメッセージ。
その背景には、今アメリカで波紋を広げている「中絶は女性の権利」と主張する動きがあった。

アメリカでは今年、11の州で人工妊娠中絶を厳しく規制する法律が可決。

5月15日、人工妊娠中絶を禁止する法律がアラバマ州でも成立したが、その対象には女性が襲われるなどして妊娠したケースも含まれ、中絶手術を行った医師には最長で99年もの禁錮刑を科すという。

また、29日にはルイジアナ州でも「胎児の心拍が確認されて以降の中絶を禁じ、母体に危険がない限り、性暴力の被害者であっても例外は認めない」という州法が成立。

アラバマ州法成立を受け、21日にはニューヨークなど全米各地でデモ集会が行われた。

デモに参加した女性:
女性と、女性の自分の体の自由。いつ、どのように子どもが欲しいか選ぶ権利への暴力行為だと思う。

ディズニーやNetflixは“ロケ撮影取りやめ”も

こうした規制強化の動きには、企業や著名人も次々と反応。

レディー・ガガさんはTwitterで「中絶手術をした医師の方が、性犯罪者より刑が重いなんて馬鹿げている」とコメント。

さらに、エマ・ワトソンさんなど多くの著名人がSNSを通して反発の声を挙げたのだ。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』や『ブラックパンサー』などの人気映画をジョージア州で撮影しているウォルト・ディズニーは「ジョージア州でも人工妊娠中絶を禁止する法律が施行された場合、今後の撮影は困難になる」との考えを明らかにした。

ウォルト・ディズニー・カンパニー ボブ・アイガーCEO:
(実際に)法律になったら、ジョージアで製作を行うのは非常に難しくなると思う。続けることはないと思う。
私たちのために働いてくれているスタッフの多くは誰もそこで働きたくないと思うし、私たちはスタッフの願いに耳を傾け、尊重しなければならない。

さらにディズニーだけではなく、アメリカ動画配信最大手のネットフリックスも同様に反対を表明。施行された場合、撮影の取りやめなどを検討している。

こうした映画のロケ地から外されるとどんな影響があるのか?

アメリカ映画といえばカリフォルニア州のハリウッドが思い浮かぶが、最近では税制面での優遇策や、都会と自然が共存するロケーションの良さ、州都アトランタには世界有数のハブ空港があるなどの条件から、南東部・ジョージア州が新たな“映画の拠点”になっている。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2018年にジョージア州で撮影された映画の数は455本、州への経済効果は1兆円にもなるということで、莫大な経済効果を生み出している映画業界からの反発とロケ取りやめ宣言は、ジョージア州にとって大きな問題となっている。

世界的大企業にまで広がりを見せた、人工妊娠中絶問題。

アメリカ世論を二分するこの問題は、次の大統領選挙が来年に迫る中で、更なる波紋を呼びそうだ。

“中絶合憲”判決を覆したいという保守派の思惑

今回の中絶禁止の流れ、政治的に一体何が背景にあるのだろうか?

フジテレビの風間 晋解説委員は、アメリカの保守派の存在があると指摘する。

風間 晋解説委員
トランプ大統領は就任以来、最高裁に保守派の判事を2人送り込みました。その結果、今アメリカの最高裁では9人の判事のうち5人は中絶反対なんです。
実は、1973年の“中絶合憲”判決をひっくり返したいと考えている保守派の活動家の人たちというのがいっぱいいるんですね。
ですから、最終的にはこの最高裁の判決をひっくり返すことを想定して、今、各州で中絶を禁止する法律というのを作っているわけです。

加藤綾子キャスター
さまざまな立場の人がいることは理解できるんですが、女性の選択肢を奪うということはやめてほしいと思います

(「Live News it!」5月31日放送分より)