地震や豪雨などの自然災害は、いつ、どのタイミングで起こるか分からない。

しかし、普段から備えているか、持ち歩いているかどうかで、自分の命を救うことができるかもしれない。

では、どんなモノを持ち歩けばいいのか。持ち歩くことの意味とは。危機管理アドバイザーの国崎信江さんに、どんな防災グッズを持ち歩けばいいのかを聞いた。

いざという時に選ぶのは…?

まず、国崎さんが普段から持ち歩いているものを見せてもらうと、全部で12個の防災グッズを持っていた。数には驚くが、手に取って持ってみると、かさばらずに重みも感じない。

けがをする前提で止血パッド、携帯トイレ、両手があくヘッドライトの他に、国崎さんは「手の汚れが気になった場合の抗菌剤や物資をもらった時のためのエコバッグ、けがをした時に止血剤として使えるワセリン、マスク、携帯電話のバッテリー」を持っているといい、「普段使っているものを災害時にも有効活用できるのが一番」とアドバイスをくれた。

もちろん、それに加えて、常備薬やエレベーターに閉じ込められる可能性を踏まえて、飲み物、少しの食べ物を持ち歩く必要もあるという。ただ、それも誰もが日常で持ち歩いている範囲内だろう。

普段から持ち歩く防災グッズ(エコバッグ、携帯電話のバッテリー、抗菌剤、ワセリン、カイロ、ホイッスル、手ぬぐい、マスク、止血パッド、ガーゼ、両手があくヘッドライト、携帯トイレ)
普段から持ち歩く防災グッズ(エコバッグ、携帯電話のバッテリー、抗菌剤、ワセリン、カイロ、ホイッスル、手ぬぐい、マスク、止血パッド、ガーゼ、両手があくヘッドライト、携帯トイレ)
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ただ、日常で持ち歩いているカバンの中には、財布やスマホなどの貴重品の他に、仕事で使うパソコンや書類など、多くのモノを入れ、そこにプラスして防災グッズを入れることで荷物を増やしたくないと思っている人は多いかもしれない。

しかし、国崎さんはこう投げかける。

「仮に、自宅にいたとして、目の前には2万円をかけて用意した防災非常袋と普段持っているカバンがあります。いざという時には何も持って行けないかもしれないですが、仮に1つだけ持って行けるとしたら、どちらを選びますか?」

数々の講演を行う国崎さんは、講演でこの質問をすると8割の人が「普段持っているカバン」と答えるという。

その理由として、「普段使いのカバンの中には、携帯もお財布も身分を証明するものも入っていて災害時にもないと困るから。そうであれば、そのカバンの中に必要最小限の防災グッズを入れておけば、いつ災害に遭っても頼りになります。家に防災グッズがあるから安心、と思っている人があまりにも多い」と、家以外の場所で被災する可能性を考えている人が少ないという。

そして、普段から持ち歩くことでそれが安心感へとつながっていく。

日常の中に「防災」を

体験した“恐怖”の伝承を…
体験した“恐怖”の伝承を…

1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震と、近年大きな地震が起きているが、そうした中で人々の防災意識は高まっているのだろうか。

国崎さんは「例えば、24年前の阪神・淡路大震災が起きた兵庫県などで今、暮らしている方々の防災意識が高いかと言われれば、そうとは言い切れないです。被災して2年後にある家庭に伺いました。その家庭では、1歳の子どもがいて、子どもの上にたんすが覆い被さるのではないかと不安な思いをした、と当時のことを話していたのですが、その家庭を訪れると、何も固定していない家具がたくさんありました。たった2年です。その時に『地震が来たら、今のお宅はどうなりますか?』と聞くと、『もう、来ないから』と言っていました」と語り、当時の恐怖などが伝承されていないと指摘した。

だからこそ、国崎さんは「日常の生活に防災を根付かせる必要がある」と話す。

例えば、食材も“家庭内流通備蓄”と言って、一定量貯めて、食べたら買い足す。冷蔵庫にストッパーを付け、開けるときにストッパーを外し、閉めるときにストッパーを閉めるという習慣を身に付けることが大事だとした。

「大人は、こうした環境で育ってきていないと面倒くさく感じますが、子どもは違います。物心つく前からこうした習慣が身についていると、これが日常です。防災意識が根付いた環境で子どもを育てることは大事だと思っています」

子どもが持つべき防災グッズ

子どもたちも学校へ行ったり、外へ遊びに行ったりするだろう。子どもが持つべき防災グッズはあるのだろうか。

「厳選するならば、止血パッド。手当をするものを優先的に備えさせます。ランドセルに1枚入れておくとか。次に、異常を知らせる笛と、災害時の行動などをまとめた家族の防災マニュアルです」とし、持ち歩くためには使い方も学ぶ必要があり、自然と子どもたちの防災意識が高まり、子どもたちにとっては防災グッズを持ち歩くことが日常になっていくという。いざというときのために安否の確認方法や待ち合わせ場所、災害時の行動を家族で話し合っておき、それを忘れないようにとりまとめてコピーして家族それぞれが携帯するようにしましょう。


いつ起こるか分からないからこそ、まぁ大丈夫だろう…と日常の意識から抜け落ちてしまうが、いざという時のための備えが重要になる。そして、日頃から生活の中に「防災」を取り入れることが、自分や家族、子どもたちを救うことになるのかもしれない。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。