コロナ禍で手放せなくなったマスクだが、悩ましいことの一つが着用したときの感触。

飛沫の吐き出しや吸い込みを大幅カットする不織布マスクの着用を呼びかける動きがあるが、不織布マスクだと、蒸れたり、こすれたりと不快感や肌のトラブルなどにつながることもあるという。そのため、肌との緩衝材の役割としてマスクの内側に「インナー」を使用している人もいると思うが、今度はズレるなどの悩みがあった。

こうした中、その悩みを解消する「インナー」が発売された。

マスクにくっつくインナーが登場

それが、衣料品の製造・販売事業などを展開する「小松マテーレ」(石川県能美市)が開発した「くっつくインナー」という、縦8センチ、横12センチ、厚さ1.6ミリの製品。

これが「くっつくインナー」
これが「くっつくインナー」
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名前の通り、マスクにくっつくのが特徴で、使用方法はマスクの内側に置いて軽く押さえるだけ。素材はポリエステルで、マジックテープのように何度も貼りなおすこともできる。

剥がして繰り返し使用できる
剥がして繰り返し使用できる

不織布マスクの素材の上に、一般的なマスク用フィルターと比べて置いた画像を見ると、その貼りつき具合は一目瞭然。

市販のマスク用フィルターと比べると…
市販のマスク用フィルターと比べると…

一般的なマスク用フィルターは、角度が直角(90度)を越えると落ちてしまったが、くっつくインナーはそれ以上に傾けても微動だにしなかった。

違いは一目瞭然
違いは一目瞭然

さらにこの製品、付着した特定のウイルスを低減させる効果もあり、新型コロナウイルスの感染予防としても有効だという。一見すると変哲のないガーゼのようにも見えてしまうが、どんな秘密が隠されているのだろう。

そしてマスクといえば、肌への負担や着用感なども知りたいところ。製品の詳しい仕組みや着け心地と合わせて、開発元の小松マテーレに聞いてみた。

秘密は繊維先端の「球体」にあり

ーーなぜ、くっつくインナーを開発した?

2018年、大型バスの座席シートやカーテン向けに、消臭や抗菌を目的とした素材を開発したのがきっかけです。その後、新型コロナでマスク不足が問題となったので、この技術を応用して、元のインナーを2020年3月に発売しました。当社は今でこそマスクも製造していますが、マスクメーカーではないのでインナーを選びました。

くっつくインナーに改良したのは、ユーザーの声がきっかけです。当社は医療関連とも関わりがあるのですが、元のインナーを利用した医療従事者から「マスク内部でずれるのが嫌だ。直すのが面倒で着け心地も良くない」という話を聞いたので、ずれないようにしました。


ーーマスクにインナーがくっつくのはなぜ?

インナーの繊維の表面に特殊処理をしているためです。具体的には特殊機械で、マスクと接する表面の繊維をひげ状に立たせて、先端を球体状に加工しています。ここがマスク本体と絡んでくっつきます。当社は合成繊維の企業でもあるので、その技術を生かした加工になります。

先端がマスクとひっかかるようになっている
先端がマスクとひっかかるようになっている

ーー開発でのこだわりは?

マスクは多くの種類が出ているので、そこへの対応ですね。市販品を集めてくっつくかどうかを確かめて、不織布マスクだとほぼすべての市販品、布やウレタンマスクでも表面が特殊加工されたものなど以外は、くっつくことを確認しています。

もう一つは、繰り返し使えることです。今回の製品は水での手洗いが10回であれば、くっつきが弱くなることもなく、ウイルスの低減効果も落ちないようになっています。

押すだけでくっつく抗ウイルス加工のインナー
押すだけでくっつく抗ウイルス加工のインナー

光触媒でウイルスも不活化できる

ーーウイルスを低減する仕組みはどうなっている?

これは元のインナーにもあるのですが、東芝マテリアル株式会社が持つ、光触媒の技術を活用したものです。この技術は室内の蛍光灯程度の光があれば、ウイルスのタンパク質を傷つけて、感染能力を減少させる効果があります。この光触媒をインナーの繊維に融合させています。

当初はA型インフルエンザウイルスの抑制を想定していましたが、その後に従来のヒトコロナウイルス、新型コロナウイルスの不活化にも効果が認められました。

ウイルスを不活化する光触媒の技術
ウイルスを不活化する光触媒の技術

ーーマスクの内部で光触媒は働くの?

この光触媒は微量の光でも効果があり、さらにマスク内側の照度も測定して、光触媒が働くことを確認しています。ウイルスを不活化させるスピードは、照度も関わってきますが、A型インフルエンザウイルスとヒトコロナウイルスは約2時間で99.9%、新型コロナウイルスは約6時間で99.9%以上を不活化できることを確認しています。

ヒトコロナウイルスでは、約2時間で99.9%を不活化
ヒトコロナウイルスでは、約2時間で99.9%を不活化

ーー飛沫については効果はある?

マスクの素材やフィット感で違うので、一概には言えません。ただ、実験だとインナーを入れることで、飛沫の吸い込みや吐き出しを従来の1.5倍程度は改善できるのではないか、という予測もあります。ここはいずれ、正式な発表をするかもしれません。

衝撃や蒸れを防ぐので着け心地は快適

ーーメイクの付着や肌荒れはしない?着け心地は?

ファンデーションや口紅などは、残念ですがある程度は付着すると思います。肌荒れなどについては問題ありません。インナーには衝撃を防ぎ、蒸れにくい素材を使っているので、むしろ着け心地は快適になります。実際の利用者からも、そうした声をいただいています。


ーー利用時の注意点などはある?

耐用回数は水洗いで10回程度です。それ以上でもウイルスの低減効果は残りますが、洗うごとに効果は弱まっていきます。そして洗うときは、洗濯機や洗剤、お湯を使わないでください。光触媒と繊維の癒着が弱くなったりして、低減効果が早めになくなる可能性があります。

使用方法とお手入れ時の注意点
使用方法とお手入れ時の注意点

ーーどんなときに利用してほしい?

マスクを着用していると、フィット感が悪くなったりすることもありますが、インナーを挟むことで衛生面を解決しつつ、マスクの着用感も良くなります。不織布マスクなどの着用感で悩んでいる人などは試してみてほしいですね。一定程度は繰り返し使えるので、エコでもあります。
 

ユニリンクで購入できる
ユニリンクで購入できる

くっつくインナーは、小松マテーレが運営する通販サイト「ユニリンク」で発売しており、価格は5枚入りで1100円(税込)。サイズはフリーサイズのみだが、大きい場合はハサミでカットすることもできる。

マスクの着用感に悩んでいるとき、感染予防により一層気を付けたいときには、このようなインナーに注目してもいいかもしれない。

(画像提供:小松マテーレ)

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プライムオンライン編集部
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