7時間半を超える睡眠で「後悔する判断」をしなくなる!?

人間にとってなくてならない睡眠。睡眠は体の疲れを取ってくれるだけでなく、脳を休め、疲労を回復する役割も果たす。

睡眠時間は人それぞれ異なると思うが、誰もが睡眠を取らなければならなく、人間にとって重要な要素である。

そんな睡眠に関するあるTwitterの投稿が話題になっている。



Twitterの投稿者のPuANDA(ぱんだ)@shoichirosmさんによると、睡眠時間が7時間半を超えた日には「後悔する判断」をする確率が下がるというのだ。

確かに睡眠時間が短いと、翌日眠くて集中力がなかったり、体が疲れたままの状態であったりすることから、判断能力が鈍くなるということは考えられる。

PuANDAさんはApple Watchで脈拍を図り、それを利用した睡眠計測アプリ「Sleep Watch」を使い、1年間の自分の睡眠時間と行動のログを取り、長期を通じて見たときに7時間半休んだ場合はほとんど疲れを感じない状態だったという。

ちなみにPuANDAさんの「後悔する判断」とは、「飲んだあとのラーメン」「好きでもない子に思わせぶりなLINE」「衝動買い」「クソリプ」「雑なコミュニケーション」なんだそう。飲酒時の判断も含めて前日の睡眠が影響してるということで、しっかり休んでる場合は、酔っていても「飲んだ後のラーメン」や「好きでもない子に思わせぶりなLINE」といった行動は取らなかったというのだ。

この投稿には、「共感します」や「実践してみよ」、「私の場合、睡眠時間が6時間未満だとパフォーマンスが落ちる」などのコメントが寄せられ、3万5000超のいいねが付いている。(10月16日時点)

しかし、睡眠時間が7時間半を超えると「後悔する判断」をする確率が下がるというのは正しいのだろうか。
国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部長の栗山健一さんにお話を伺った。

睡眠不足は注意・判断能力の低下をもたらす

――睡眠時間が7時間半を超えると「後悔する判断」をする確率は減る?

2日間徹夜をさせると、モラル行動に関する判断力が低下するという報告があります。自分自身に関連するモラル事象(例:暴力を回避するために他者を犠牲にするetc)に関しては、徹夜すると判断を下すのに多くの時間がかかり、直接自分自身に被害の及ばないモラル事象に関しては、判断時間は長くなりませんが不適切な判断が著明に増えることが報告されています。これは、睡眠不足により軽率な行動が増えることを示唆しており、睡眠不足により「後悔する判断」が増える可能性を示していると考えられます。

――睡眠時間と判断能力はどのような関係がある?

睡眠不足は注意・判断能力の低下をもたらします。ボタンを押す判断を求められる課題を課された際に、睡眠不足があると、ボタンの押し忘れのミスが増え(注意力低下)、また誤ったボタンを押してしまうミスも増える(判断力低下)ことが示されています。徹夜によりこれらのエラーが増加するとともに、毎日1時間程度の積み重なった睡眠不足も、上記エラーの増加をもたらすことが指摘されています。

また、睡眠不足は記憶機能にも影響し、新しいことを覚えるのが困難になるとともに、覚えた事柄を思い出すのも難しくなります。総合的に考えると、睡眠不足は軽率な判断の増加をもたらしますが、判断に寄与する情報の見落としや、以前の成功・失敗体験を思い出すことが難しくなることにより、判断の誤りにつながる可能性も考えられます。

徹夜は良くない

わずか1日の徹夜でも酩酊状態と同等の認知機能低下に

――お酒を飲むと判断能力が鈍くなると思うが、お酒と睡眠はどのような関係にあるか?

飲酒と睡眠不足はいずれも認知機能に悪影響を及ぼします。わずか1日の徹夜でも酩酊状態と同等の認知機能低下をもたらすことが推計されており、連日の睡眠不足は、様々な判断ミスに基づく事故や生産性の低下の原因となります。

若年者を対象とした研究では、睡眠不足が様々な不適切な行動に関連することが報告されています。飲酒行動や違法薬物使用、暴力、違法行為などが不適切行動にあたります。成人にあっても、睡眠不足やこれをもたらす睡眠障害の存在が、アルコール依存症発症の原因の一つとなることが示されています。睡眠不足は報酬(食事・飲酒・金銭・快楽等)希求行動の抑制を障害することから、肥満(高カロリー摂取)、アルコール依存の危険因子となる可能性が示されています。

――投稿の「後悔する判断」にある「飲んだあとのラーメン」や「思わせぶりなLINE」はお酒を飲んでいたり、疲れているときにしてしまい、しっかりと睡眠を取っている場合はこれらの行動は取らないそうなのだが、これらの行動は睡眠時間と関係あると考えられる?

上記の説明から、睡眠不足になるとそれらの行動が促進される可能性があります。アルコールは前頭葉の活動を低下させます。前頭葉は感情、衝動性、報酬希求を抑制する機能も担っているため、飲酒すると気が大きくなり、普段しないような羽目を外した行動が出現します。睡眠不足と飲酒はどちらも単独で軽率な行動を引き出す要因となり、同時に両要因が存在すると、軽率な行動はより出現しやすくなるはずです。

お酒の飲み過ぎにも注意

専門家「寝だめをする必要がない睡眠時間を」

――睡眠時間は何時間取るのが最適か?

National Sleep Foundation(米国睡眠基金)は、成人は7〜9時間の睡眠をとることを推奨しており、若年者はそれより長い睡眠時間、高齢者は短い睡眠時間となります。しかし、当然これには個人差があるため、あくまで目安にすぎません。実際には、昼間に過度な眠気が生じず、休日も寝だめをする必要がない睡眠時間が、個人の適切な睡眠時間となります。

しっつかりと睡眠を

――睡眠時間が短いとどのような影響があるか?

上記の推奨睡眠時間には根拠があり、この範囲を超えて短くても、長くても、長期的な健康転帰が悪化します。7時間前後の睡眠時間を最低点として、それより長くても短くても全死亡率の増加及び、高血圧、高脂血症、糖尿病、うつ病等の疾患罹患率が増加することが示されています。もちろん上述した、認知機能(注意機能、判断機能、記憶機能等)の低下も睡眠不足とともに生じます。


――すっきりと目覚め、1日を快適に過ごすための睡眠方法などはある?

十分な睡眠時間を確保することはもちろんですが、それ以外にも睡眠を充実させるためのコツは様々あります。我々は2014年に厚生労働省の作業班で『健康づくりのための睡眠指針―睡眠12箇条―』をまとめました。


やはり睡眠不足であると注意・判断能力が低下するということで、毎日しっかりと睡眠を取ることが翌日の活動のためにも重要である。米国睡眠基金は成人は7〜9時間の睡眠をとることを推奨しているが、適切な睡眠時間は個人差があり、昼間に過度な眠気が生じず、休日も寝だめをする必要がない睡眠時間が個人の適切な睡眠時間だという。

忙しくしている社会人は翌日のパフォーマンスを高めるためにも、自分にとって適切な睡眠時間を把握し、しっかりと睡眠を取ることで、後悔する判断をせずに済むようだ。

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