なぜ国会で災害対策について議論しないのか

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台風被害を受けて国会ではどんな議論が行われるのか期待して昨日の参院予算委の議論を聞いた。

驚いたことに国民民主の森裕子議員が「イタリアの避難所ではワインが出る。だから日本も抜本的に変えましょう」と安倍首相に繰り返し迫っている。日本の避難所でも酒を出せということなのだろうか。この人何言ってるのだろう。

森さんは二階幹事長の「まずまず」発言と予算委開催についての批判、さらにホームレスの人が台東区の避難所に入れなかったことをなぜか安倍さんに文句を言い、台風に関してはそれでおしまいである。

国民が本当に恐れたこと

今回の台風で国民を恐怖に陥れたのは、こんなにも簡単に川が氾濫するのか、ということだと思う。ダムや堤防は悪であるという一時流行した風潮がもしかしたら間違っていたのではないか、という疑問である。そして温暖化の影響で台風が強大化するなら今後台風のたびに我々は怯えなければいけないのか。そのあたりを知りたいのだ。

今回の台風で、完成したばかりの八ッ場ダムが満水状態になった映像は衝撃だった。もし10年前の民主党政権のマニフェスト通りに工事を中止していたらあの水がすべて利根川に流れたのかと想像してゾッとした。

さらにもし荒川が決壊したら東京の東部は甚大な被害を受けただろうが、あの地域を洪水から守ることができるのは、民主党政権での事業仕分けで中止を決めたスーパー堤防だけである。

だからいい機会なので民主党は間違っていたのではないか、ということも含め、災害対策のインフラ整備というハード面や、情報提供、避難などのソフト面について議論があるのかと期待したのだ。しかし「仕分けの女王」と言われた蓮舫さんも登場したものの、彼女はクールジャパンの投資の失敗などに多くの時間を費やし、台風のことはほとんど聞かなかった。少なくとも昨日は、お金儲けの話より、災害対策について議論をすべきではなかったのか。

政治家の仕事とは

もちろん二階発言はけしからんし、ホームレスの人も避難所に入れてあげた方がいい。ただその前にまず川が氾濫しないようにするのが政治家の仕事ではないのか。

旧民主党の人たちは自分たちが間違ったことをしていたという認識がないのだろうか。いやあるからこそ自分たちの失敗を口にできないのだろう。だったら国会で野党の人たちばかりが質問をするというのは国民にとっては困る。聞きたい議論が聞けないからだ。

安倍首相もたとえ聞かれなくても「ダムも堤防も必要だ」と言えばいいのにと思うが、言ったら野党の思う壺ですぐに審議拒否され、政府として通したい法案が通らなくなるのでじっと我慢して野党の攻撃に耐えている。ただ一部の狂信的な「反アベ」の人を除けば、普通の人は昨日の審議を聞いてうんざりしたはずだ。

これでは共同会派を作ろうが、選挙協力しようが野党はいつまでも政権を取れない。それがわかっている安倍さん以下政府与党の人たちは頭を下げながら実は下を向いて笑っている。これは国民の「選ぶ権利」の剥奪ではないか。

避難所でワインを出してもビールを出してもいいが、国民の命と財産を守るのが政治家の仕事だということを忘れないでほしいのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】
【4コマ漫画:横川寛人】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ報道局上席解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て現職。