職種別データでも…
働き方改革が進められる今、日本の管理職について心配なデータが発表された。
それは、日本の男性管理職の死亡率が、ヨーロッパ各国と比べて高いというもの。
東京・新橋で若手社員に「管理職になりたいか」と聞いたところ、
コンサルタント系男性(26):
やってみたいですけどね。(自分の)チームを持ってやってみたいです。
金融系男性(22)
お金いいんで、管理職なりたいですよ。
と管理職に意欲のある声が聞かれた。
しかし、東京大学などの研究チームが発表した論文のデータを見ると、日本の管理職・専門職の死亡率は、35~64歳男性の10万人あたりで、イタリアやスイスといったヨーロッパの国々と比べて1.5倍ほど高いことがわかる。
また、職種ごとの死亡率を見ると、スイスの場合、肉体労働職や事務・サービス職に比べて、一般的に学歴や収入が高い管理職・専門職の死亡率が低くなっているが、日本ではこれが逆転し、管理職・専門職の死亡率が、肉体労働職や事務・サービス職よりも高いことが浮き彫りとなった。
「不況の影響で負担が集中」管理職経験者の本音
その背景について、今回の研究に参加した東京大学大学院医学系研究科の小林廉毅教授は、次のように分析する。
東京大学大学院・小林廉毅教授:
(死因は)がんと自殺が特に大きく上昇していますが、これは90年代後半の経済の影響、不況の影響が大きかったことが言えると思います。
おそらくかなり人員が削減されたので、管理職に負担が集中した可能性があります。
90年代のバブル崩壊後、管理職を取り巻く労働環境に変化があったというのだ。
さらに、管理職の勤務の具体的な状況について、労働問題に詳しいジャーナリストの小林美希氏に聞いた。
労働経済ジャーナリスト・小林美希氏:
増えているのが「プレイングマネージャー」と言われる管理職なのですが、これは部下が行うような現場の仕事と、組織の運営を一緒に兼ねるというものです。 (プレイングマネージャーには)相当負荷がかかっていて、長時間労働につながっています。
人件費を削減するため、正社員の雇用を減らし続けたツケが今、管理職に回ってきているという。
2016年には、産業廃棄物処理会社の管理職の男性が長時間労働の末に死亡した。
男性は管理職でありながら外回りの営業も担当しており、1ヵ月の残業時間は「過労死ライン」とされる80時間の倍となる160時間に上っていたという。
実際に管理職経験のある人に話を聞いた。
元管理職・金融関係(54):
周りが思っている以上にすごく孤独なんじゃないかと。それでどんどん自分を追い込んでいってしまう。ストレスをうまく発散できないというか…。
管理職・IT関係(38):
最近、「働き方改革」があるけれど、管理職は残業がつかないから、それ(働き方改革)が表にあらわれない。結果的に管理職側にしわ寄せが来ているということがあるのかもしれない。
「管理職になりたくない」が6割超 その理由は?
こうした中、役職についていない社員の心境にも変化がみられた。
厚生労働省が昨年発表した「平成30年版 労働経済の分析」によると、役職に就いていない社員等の昇進希望の割合は、「管理職以上に昇進したい人」が38.9%なのに対し、「管理職に昇進したいと思わない人」が61.1%と上回っているのだ。
管理職になりたくない理由としては、次のような意見がある。
・責任が重くなる
・業務量が増え、長時間労働になる
・現在の職務内容で働き続けたい
・部下を管理、指導できる自信がない
・職責に見合った賃金が払われない
では、日本の管理職の死亡率を下げ、不安なく働くにはどうすればよいのか。
東京大学大学院・小林廉毅教授:
まずは、勤務時間のきちんとした管理が重要。 管理職についても勤務時間を把握するという体制がとられつつあるので、それをさらにきちんと進めていくことが、まず一つだと思います。
管理職に対しても働き方改革を適応していくことが求められている。
(「めざましテレビ」6月13日放送分より)