台風19号で被災した各地を支援するため、テレビ局をはじめSNSやポータルサイト、クラウドファンディングなどで様々な募金や寄附が行われている。

その一つに「ふるさと納税」を利用した寄附の仕組みがある。
「ふるさと納税」といえば、地方自治体に寄附をすると税金の一部が控除されて特産物などの返礼品がもらえるお得な制度として知られているが、どうやって寄附をするのだろうか。

「ふるさとチョイス災害支援」

全国1,788の自治体から20万点以上の名産品を集める「ふるさとチョイス」のサイトでは、その名も「ふるさとチョイス災害支援」という特集ページで様々な災害への寄附を募っている。
一般的な「ふるさと納税」と災害支援の違いは、原則として自治体からの返礼品がなく、支払った寄附がそのまま自治体に届くということ。
ふるさとチョイス側は、自治体から手数料を一切受け取らず、支援のプラットフォームを無償で提供しているという。

出典:ふるさとチョイス災害支援
出典:ふるさとチョイス災害支援
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現在では、他のふるさと納税サイトでも同じようなことをしているが、2014年9月に初めて寄附金を被災地に届けるプラットフォームを立ち上げたのは「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクだという。
その年の11月には長野県北部で最大震度6弱を観測した地震が発生。
震度5強の揺れを観測した長野県白馬村からの連絡を受け、地震発生2日後に寄附の受付を開始すると1カ月間で約6000万円の寄附が寄せられた。

今回の台風19号の場合、上陸した翌日の10月13日から寄附の受付をはじめ、すでに総額1億3000万円を突破。(10月18日現在)
寄附の申し込みホームを開設した県や市などの自治体は計80に及ぶという。

「ふるさとチョイス災害支援」に寄せられた災害ごとの合計寄附金額はサイト上で常に公開されてる。
ちなみに編集部が確かめた限りで高額だったのは2016年の熊本地震で、寄附金は約19億円
そして、2018年に起きた西日本豪雨は、自治体に寄せられた寄附が約16億円、「代理自治体」に寄せられた寄附が約8億円で、合計すると約24億円となる。

出典:ふるさとチョイス災害支援
出典:ふるさとチョイス災害支援

この「代理自治体」とは何なのか?
そして、ふるさと納税サイトが災害支援を始めたきっかけは?
「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクの担当者に聞いてみた。

ふるさと納税は災害支援に大きな役割を果たすと思っていた

――そもそも災害支援をはじめたきっかけは?

ふるさと納税の本来の趣旨は「自分のふるさとや応援したい地域に寄附をする制度」です。
そのため、「ふるさとチョイス」を始めた2012年当初から、ふるさと納税は災害支援に大きな役割を果たすと思い、プラットフォームを作りたいと考えていました。
その後、開発を進め、2014年9月に「災害時緊急寄附申込みフォーム」を立ち上げました。
ふるさと納税という制度は、2011年の東日本大震災当時はあまり知られていませんでしたが、被災した自治体に寄附金を直接届けられるということで注目を浴び、活用され始めました。

――手数料を徴収していない理由は?

災害支援の寄附金は、「少しでも早く被災地に復旧復興して欲しい」という寄附者の想いがのった“お金”です。
そのため、寄附金全額を被災地に届けることは自然なことだと考えています。
また、トラストバンクとの契約の有無にかかわらず、被災自治体が寄附金を募りやすいように、全国の自治体に無料でプラットフォームを提供しています。

――「代理自治体」ってなに?なぜ被災していない自治体が寄附を受け付けるの?

被災していない自治体、つまり「代理自治体」が寄附の受け付け業務を代行し、後日、被災地に寄附金を届ける仕組みです。
災害直後、被災自治体の職員は、住民の安否確認や避難所の設置などの災害対応に追われ、ふるさと納税の事務には手が回りません。
そこで、寄附金受領証明書の発行などを「代理自治体」が担うことで、被災自治体は業務負担を軽減でき、災害対応に専念することができます。
2016年の熊本地震で「代理寄附」の仕組みを構築しました。
メリットは、災害対応に追われる被災自治体に代わって、すばやく寄附の受付をスタートすることができることです。
また、「代理寄附」をきっかけに、自治体同士の支援の輪も広がっています。
昨年の北海道胆振東部地震では北海道厚真町の「代理寄附」を東京都世田谷区が行い、今回の台風19号では厚真町が世田谷区の「代理寄附」をするという“恩返し”の動きがありました。

自治体と連絡できなくても寄附受付を始める

――寄附受付開始のスピード感は大事?

寄附額は報道量に影響を受けやすく、発災1~2週間の関心が高い時期に集まる傾向があります。
トラストバンクの調査では、「災害発生直後」と「発生から3日後」に寄附受付を開始した場合を比較すると、「災害発生直後」から始めた方が寄附金額・件数共に多く、約7倍の差が開くことが判明しています。
そのため、トラストバンクでも災害時は一刻も早く被災地の情報発信をするように努めています。

――寄附受付は自治体から頼まれないとやらない?

基本は自治体からの要請で寄附の受付を開始します。
ただし、災害時は停電などで 被災自治体が連絡できなくなるケースや、災害対応に追われてふるさと納税業務は後回しになることもあります。
また、寄附の受付に関する庁内決裁に、平時よりも時間がかかる場合もあります。
これを回避するため、トラストバンクには、平時に災害支援の寄附受付を準備しておく「即時受付フォーム」という仕組みがあります。
自治体と普段から、災害支援の寄附を受け付けることや、決済手段などについて取り決めておき、庁内決裁もしていただきます。
特定基準以上の災害が発生した際、「即時受付フォーム」を利用する自治体と連絡がとれなくても、トラストバンクが事前に準備してある寄附の申し込みフォームを開設します。

寄附したお金は控除対象になる

――ふるさと納税の仕組みを使って寄附するメリットは?

「ふるさとチョイス災害支援」は、ふるさと納税の制度を活用して、被災地に直接寄附金を届けることができるプラットフォームです。
制度が適用されるので、寄附金は住民税・所得税の控除対象となります。
原則寄附に対する自治体からのお礼の品はありません。
「ふるさとチョイス災害支援」では、寄附者が寄附金と一緒に被災地に応援メッセージを送ることができたり、自治体が最新の被災状況や復旧状況などを報告できたりします。

――これまでに寄せられた災害寄附総額は?

2014年の開始から現在まで総額約60億円の寄附金が被災地に届けられました。

ふるさと納税と言えば、最近は総務省と地方自治体の場外乱闘や、おかしな返礼品騒動など、トラブルの話題が多かったように思うが、すでにあるプラットフォームを活用したこういった試みは久しぶりのいい話題と言えそうだ。
被災地への寄附の仕方も様々あるが、あなたができる形で支援の手を差し伸べてみてはいかがだろうか。

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プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。